尾瀬方面登山 登山口までの道程(日光杉並木→檜枝岐村→滝沢登山口)
梅雨直前の天候の安定しない時期で、行程中に停滞を二回も挟み大変だった記憶があります。二回くらい天候不良で途中撤退している谷川岳といい、なんかこの方面の登山は天気に恵まれない事が多い気がしますね。中央分水嶺上だから当たり前と言えば当たり前なんですが。
この日の行程。例によって鉄道&バスを駆使した登山口までの移動ですが、その途中で檜枝岐村の村内を多少歩きました。村を一望できる展望台に登ったり湧き水を汲んだりとする程度でしたが、大都市圏から遠い秘境の村落という雰囲気を短い時間ながらも満喫できました。本来であれば名物の裁ち蕎麦を頂くというグルメ要素も盛り込みたかったのですが、今回は機会に恵まれず……。
他の日程を見たい方は以下の記事よりリンクを辿って下さい。コース全体の軌跡もこちらに掲載しています。
【2020年10月】尾瀬方面の登山についての情報と記録 - 山とか酒とか
文挾駅~下小代駅を日光杉並木経由で
今回は宇都宮線(東北本線)で北上。こっちの方に来るのは男体山とか、岩手山とかの東北方面の山に登った時以来かな……いつものように中央線とかで西に進めば高尾過ぎた辺りで早くも山なんですけど、こちらは関東平野をひたすら北上していくので山に入るまでが遠い。
宇都宮からは日光線に乗り換え。朝の通勤通学時間帯なのでそこそこ混んでますが途中駅でガンガン降りていって鹿沼から先は空いてました。
途中の文挟駅にて下車。目的の駅は会津高原尾瀬口駅と東武鬼怒川線のほぼ延長のような野岩鉄道の駅なので、途中でJRから東武に移動しなくてはならない為。
栗橋でそのまま乗り換えるか、今市から市街地を散策して下今市に乗り換えるかで悩んだのですが、この日は登山口までの移動日。早く着いても仕方ないので、足慣らしがてら文挾駅から東武日光線の下小代駅までの遠くも近くもない距離を歩いてみました。
降りた文挟駅は無人駅っぽい雰囲気の駅でしたが集札の係員がいました。朝は利用者が多いのでどこかから派遣されてくるようです。
駅を降りて直進すると日光例幣使街道が横切っており、その沿道には背の高い杉の並木道……所謂日光杉並木が続いています。道なりに北上すると文挟の宿場町へ。昔の街道筋らしく地蔵やら古いお堂やらがちらほらある。
文挟宿。なんか由緒ありそうな漬物屋があったり産直マーケットっぽい店があったりしますが、道路が拡幅されているからか宿場町っぽい雰囲気はありませんでした。旅籠らしき建物も見当たらず。
宿場町を歩くと町外れのカーブの所から再び杉並木が始まります。かなり鬱蒼としていて森のように見える。
その付近には二荒山神社、日光三山を崇拝する神社があります。また隣接して江戸時代に飢饉に備えて作られた郷蔵が保存されていました。先程の文挟宿もそうですが観光地っぽい雰囲気は無い、素朴な感じの所。
杉並木を更に北上します。一見すると2車線ギリギリで歩道もなく徒歩では危険極まりない道ですが、少し進んだ所の脇から道路沿いに遊歩道が整備されています。杉並木感は薄れますがこちらを歩くのが安全。
田んぼと里山。急に田舎に放り込まれたような気がする。
杉並木脇の歩道を進む。日光杉並木は江戸時代初期、徳川家康に仕えた家臣によって整備された世界最長の並木道として知られます。植えられて400年が経過しているので今にも朽ちそうな老木も多い。
歩いていると日光連山の男体山が見えました。こんなに晴れているのですが、山の方は雲が多いようです。
途中で西に折れて下小代方面へ。田舎道といった風情。鮮やかな青空はどこか秋の雰囲気。
駅に隣接した東武日光線の踏切を渡ろうとすると、丁度栃木行きの電車が発車していました。
下小代駅に到着。やや新し目の駅舎が右にあります。
駅の向かいにはかつて使用されていた旧駅舎が保存されています。東武への連絡ルートで文挟~下小代を選んだのはこれが見たかったという所もあったり。
道から奥まった所にあってちょっと所在なさげに見えますが、すぐ隣に桜の大木があるので桜と映えそうでもある。
駅舎を正面から。かなり古めかしく見えますが、昭和初期の建築なのでそれ程でもなかったり。東武の小駅は十年くらい前までこんな感じの板張りの木造駅舎が多かったのですが、一時を境に殆どが建て替えられてしまいました。
内部と回廊を覗いてみる。窓枠もサッシではなく木枠という純然たる木造駅舎。こまめに手入れされているのか保存状態は良好です。
見物を終えホームに移動。駅員の居ない無人駅で幹線道路も遠いので、なんか時間が止まったかのように静かな駅でした。
静寂を打ち破るかのように、たまに高速で通過していく特急が。特急はおろか急行すら通過してしまう駅なので通過列車がやけに多いです。
東武&野岩鉄道で会津高原尾瀬口駅へ
下小代から新藤原行きに乗車して北上。途中の下今市で暫く止まっていたのでホームに降りてみる。
構内にディーゼル機関車と客車が留置されていました。そういえばこの辺りってSL走っているんだっけ……と今更ながらに思い出す。ディーゼル機関車は補機のようですね。
牽引される客車。以前は青森と札幌を結ぶ急行はまなすに使われていたようです。昔北海道行く時によく乗ったなーとしみじみ。
鬼怒川線内に入り大谷川を渡る。奥には男体山、女峰山、大真名子山といった具合に日光連山が見えますが……つい先程まで青空が広がっていたのに、一転して雲が重い。
大桑駅で交換待ち。特急が多く走る線区なのでちょくちょく止まって中々先に進めない。
新高徳で交換の浅草行き特急。
鬼怒川温泉駅でSLが一瞬だけ見えました……ホーム向かいには補機のディーゼル機関車。乗っていた車両の乗客の殆どがここで降りてしまった。鬼怒川温泉って寂れたイメージあったんですけど、SLといい色々テコ入れしてるのが功を奏しているのかな。
鬼怒川沿いの廃墟群を眺めながら新藤原。そこから野岩鉄道の会津田島行きに乗り換え。1分乗り換えですが向かいに停まっているので特に問題なし。
車窓から見える鬼怒川沿いの川治温泉。この頃になると雲が厚く辺りはどんより暗い。
上三依塩原温泉口で交換待ち。会津田島から浅草まで直通する特急と列車交換。
会津高原尾瀬口駅(滝ノ原)周辺の散策
会津高原尾瀬口駅に到着。汽車旅もとい電車旅はここで終了……簡素な島式ホームや味のある構内踏切といい、そこはかとなく国鉄のローカル線っぽい雰囲気。かつての国鉄会津線の終着駅だったので当然といえば当然ですが。
駅舎の中はなんか賑やか……レトロな改札口に似つかわしくない二つの立て看板の存在感が強い。右は会津鉄道の『鉄道むすめ』のキャラで、左は会津鉄道とコラボしている『ノラと皇女と野良猫ハート』というギャルゲーのキャラ。
この辺りまで来ると肌寒く、ストーブが焚かれています。
外に出て駅舎を眺めてみる。駅一帯は高台の上にあり、駅入口から延びる上屋沿いに直進すると地上にあるバス乗り場に繋がる跨道橋に延びています。尾瀬へのアクセス駅という事もあってバスに乗り換える旅行客が多いんでしょうね。
今でこそ会津高原尾瀬口という名前ですが、国鉄会津線だった時代は会津滝ノ原という駅名でした。駅舎は小綺麗にされていますが当時のものでしょうか。
駅から下った所にある鷲神社。神社とか寺とかあると、とりあえず覗いてしまう。
かつての会津滝ノ原の駅名の由来となった滝原の集落。踵を返して国道を南進すると先程のものとは別の神社が見えた。古くからの街のようです。
一周して会津高原尾瀬口の駅近くに戻ってきました。右の土産物屋の建物の後ろから先程の駅舎の入口まで通路が伸びてます……建物の前がバス乗り場となっていて、そこで檜枝岐方面に向かうバスを待つ。
バスの本数は片道6本。うち2本が檜枝岐止まりで残り4本は沼山峠まで行くという観光客輸送に特化した路線。
ベンチにザックを置いて散策……重さでベンチが歪んでるけど気にしない。
暇なので土産物屋に入って時間を潰そうとしたら、バスの乗車券がここで購入できるとの話を聞いたので予め入手しておく。バスの案内所も兼ねているのか、出発案内もモニターに表示されていました。
土産のラインナップは意外と凝っていて、特に日本酒は専用の冷蔵ケースに季節限定の生酒とかも置いてあったりと中々の力の入れよう。地酒専門店じゃない土産物屋って大抵いつ入荷したか分からないような常温酒しか並んでなくて普段は見向きもしないんですが……ここで調達できるならわざわざ持参してくる必要は無かったな。国権とか美味しいけど暫く飲んでないですし。
他の土産も地場産の面白そうなものが色々あったけど、山に入る前に荷物を増やしたくないので見送り。もし帰りに寄る機会があればいずれ。
新藤原方面へ向かう野岩鉄道の電車が走り去っていくのが見えました。雲はどんよりしてて雨も軽く降ってますが、時々日が差し込んで明るくなる。
紅葉と阿賀野川本流の荒海川。
沼山峠行きのバスが入ってきたので乗車券を提示して乗り込みます。運賃、1時間半と結構距離乗るからこれくらいするよね……。
乗客は他に誰も居らず貸切状態のまま出発。途中、重伝建地区に指定されている茅葺屋根の集落(前沢集落)の側を通ったりとかしてめっちゃ興味を惹かれますが……本数も少ないので寄り道せず檜枝岐に向かいます。
檜枝岐村、村内散策(中土合公園、安宮清水等)
[13:44]中土合公園出発
檜枝岐村の市街地の南の外れに位置する中土合公園にてバスを下車、いよいよ歩き始め。この日は登山口までの移動のみですが、寝入るにはまだ時間があるので村内を少し散策してみます。
降りたバスはそのまま御池や沼山峠の方に向かっていきましたが、冬季はこのバス停までの運行らしいです。
バス停の名前の通り、降りた所には公園が。紅葉が美しい……けど、地面が濡れている事からも分かるように雨が結構降っている。
橋の上から北部、檜枝岐村の中心市街地を望む。晴れと雨が交互に続いてるので、日が差すタイミングでは虹が見えました。
翌日は快晴の予報。天気は回復傾向で酷い降り方はしないだろうと判断し、村内散策を続行。
公園には村を一望できる展望台があるとの事で登ってみる事にしました。看板にはちょっとした登山と……ガチ登山の前の足慣らしにはもってこいですね。
但し、おもおもザックは麓で留守番。
色付きつつある紅葉。秋が深まってきた。
[13:56-14:02]中土合公園展望台
少し登って山の中腹にある展望台に到着。評判通り、紅葉の中に檜枝岐村の市街地を見下ろせる。
檜枝岐村の中心市街地。人口500人の村の居住エリアの9割以上が視界に入るとの事。犇めき合うトタンの赤屋根が統一感あっていい感じ。
麓に下り公園内を散策。園内にある社の側には立派な一物が。
園内はこんな感じで風光明媚ですが、雨が降っているという事もあって人の姿は無い……キャンプ用の設備が立ち並んでいますが、宿泊は禁止との事なので素通りします。
橋を渡ると日帰り入浴施設である燧の湯の裏側に出ました。
青空と虹と墓。墓地として整備されてるというより、家と家の隙間を埋めるように墓や石碑が並んでいるのが少し不思議でした。
檜枝岐村の石碑や石仏。江戸~明治くらいのものか、古い石仏がそこかしこに立ち並んでいる。
[14:29-14:40]安宮清水
山裾の所に水場があるとの事で、翌日以降の登山用の水の調達がてら寄ってみました。安宮清水と呼ばれ、平安末期の皇族である高倉宮以仁王がここで喉を潤したという伝説がある。
湧き水は滔々と絶え間なく流れています。味も中々。
橋を渡り対岸へ。橋の上にはオコジョの像が。
橋を渡った所は幾つか蕎麦屋があり、予定ではここで少し早い夕食をと企てていたのですが……この日は休み明けの月曜日でどこもやっておらず。無念。
登山口まで向かう途中、檜枝岐歌舞伎の舞台が近くにあるとの事で立ち寄ってみる事に。檜枝岐歌舞伎とは江戸期に江戸で歌舞伎を見た農民が見よう見まねで再現してみたのが始まりとされる地芝居の事で、現在でも年3回程公演が行われる。
参道には橋場のばんば(ばんばとはお婆さんの意味)という石像があり、縁結びや縁切りの祈願で知られるという。
社の左に綺麗に磨かれたハサミ、右にサビサビのハサミが置かれており、縁切りの場合は左、縁結びの場合は右にそれぞれハサミを奉納するとの事。
参道の先は広場になっており、そこに茅葺き屋根の舞台が建っています。舞台の前は階段状になっていて、観客はここで座って見るスタイルとの事。古代ヨーロッパの劇場みたい。
檜枝岐歌舞伎の舞台。年季が入っていますが現役で、歌舞伎公演の際は実際に使用されます。
一通り見物を終えたという事で本日の野宿場所である滝沢登山口へ向かいます。道端に立ち並ぶ地蔵がいい感じ。
町外れとなり民家も疎らとなったこの付近も墓や石碑が多い。
やけに立派な建物だなーと思ったら公民館との事でした。写真は無いですけどすぐ隣に村役場があります。
滝沢登山口へ
[15:14-15:21]駒ケ岳登山口バス停
家並みが切れた所で林道が分岐しており、その地点に駒ヶ岳登山口のバス停があります。分岐点は公衆トイレや案内板があったりと既に登山口然としてますが、車はそのまま林道の先に入れます
沢と紅葉。やっと山らしい雰囲気になってきた。
林道歩きの途中でショートカットの山道に入ります。滝沢登山口の駐車場が狭く国道沿いに車を停める方も多いのか、それなりに踏まれている印象の道でした。
紅葉の山道を歩く。傾斜はそこそこで歩きやすい道。
[15:44]滝沢登山口駐車場到着
分岐から10分程で登山口の駐車場に到着。こんな雨の日に登ってる人は居ないだろうと思いきや、駐車場は結構な賑わいでした。
本日の宿。駐車場の隅の邪魔にならなそうな所に設営。駐車場なので夜中、車の音やライトの灯りで何度か起こされますが、駐車場なのだから文句は言えません。
蕎麦が食べられなかったので結局いつものアルファ米定食に甘んじる。ベーコンはいつものように燻製所のものを持参。山では少しでも良いものを食べたいという最後の抵抗。
次回記事『会津駒ヶ岳から御池・尾瀬ヶ原』に続く。