【2022年4月】氷ノ山方面登山についての情報と記録
2022年4月、氷ノ山方面の登山に出掛けてきました。旅行全体の行程を扱った記事は別に設けていますので、当該記事では登った山に関しての簡単な紹介や実際に行かれる方向けの案内、各日程の概略、個別記事へのリンクを設ける程度に留めます。
目次
山域の案内
以下の紹介は主に無雪期についてのものです。自分が今回挑戦した残雪期の登山に関しては氷ノ山、山頂にスキー場のリフト降り場がある鉢伏山を除くと一般的ではなく、コース上にトレースは殆どありません。
名草神社・妙見山
厳密に言えば氷ノ山とは山域が異なりますが、今回登ったので併せて紹介致します。
名草神社や妙見山は但馬中央山脈という山域に属しており、南から妙見山、蘇武岳、三川山とピークが存在しています。一つ一つの距離があるので縦走される事は殆どありませんが、妙見山付近を除いた殆ど全域で稜線上を林道が通過している為、通行そのものは可能です。実際、近辺で毎年行われる村岡ダブルフルウルトラランニングというマラソン大会のコースで使用される事もあるようです。
今回訪問した名草神社の方に話を移しますが、こちらは主に中世以降に全国各地で流行した妙見信仰の北近畿や山陰地方における中心として栄えた場所で、名草神社も明治の神仏分離までは現在近隣の石原集落にある日光院の所属で、日光院境内の妙見社や妙見宮等と称していました(要するに神社ではなくお寺でした)。神社が立地しているのは但馬中央山脈の南側のピークである妙見山の中腹、標高約800mという山深い所に位置しており、境内には出雲大社(当時は杵築大社)から移された三重塔が現存。本殿、拝殿と共に国の重要文化財の指定を受けています。
妙見山の登山に関しては名草神社、もしくは林道沿いの大ナル登山口を拠点に妙見山と妙見峠を周回するコースが一般的で、全行程でも3時間も掛からないという事もあって、観光ついでの手軽なハイキングが楽しめる事で一定の人気があります。他にも日畑集落から妙見集落跡を経て名草神社に至る登山コース、香美町(旧村岡町)側の作山集落から登るコース等が存在し、これらはかつての妙見信仰における参詣道(旧妙見参道と称される)として多くの人が行き交った道でしたが、自動車で直接名草神社まで乗り付けられるようになってしまった現在はどちらも殆ど利用されていません。
登山口までの公共交通を使ったアクセス
複数の文化財を抱える名草神社ですが、細い林道を延々遡った先のマイカーですら到達困難な立地として知られており、当然ながらバスの便は存在しません。故に公共交通縛りの場合は麓から歩く事になりますが、麓の日光院近くにある石原バス停、かつての参詣道が伸びている日畑集落へのアクセスとなる椿色中バス停までは八鹿駅から全但バス石原線の路線が伸びているので利用可能です。どちらもバス停から名草神社までは2時間程度の歩行時間となります。
養父市側から登るコースと比較するとあまり利用されていませんが、香美町(旧村岡町)側の作山集落は西側の登山口を担っています。路線バスでのアクセスについては香美町民バス兎塚線が村岡の市街地から作山集落まで運行されています。月水のみの指定曜日運行で活用は難しいですが、朝一番のデマンド便は8時台の到着となるので往路に使えなくもないです。村岡までは八鹿駅から全但バス秋岡線・湯村温泉線の利用となります。
【時刻表】香美町民バス兎塚線(村岡病院~作山区)※町民バスのページ→時刻表(詳細)を参照
作山集落から猿尾滝より更に下った所の国道9号線上には全但バス秋岡線・湯村温泉線の日影バス停が置かれており、こちらの路線に関しては八鹿駅と村岡、湯村温泉を結ぶ基幹路線という事もあって本数は豊富に設定されています。
鉢伏山・瀞川山
鉢伏山はハチ高原スキー場、ハチ北スキー場を擁する関西におけるウィンタースポーツのメッカですが、夏期には登山を楽しめる山岳として知られています。林間学校等の遠足登山で登られるという事もあって主要コースは概ね整備されており、また登山口の近くにはビジターセンターやレストハウス、宿泊施設等も豊富です。そうした施設の充実ぶりから専ら観光気分の手軽なハイキングとして登られる事の多い山ですが、氷ノ山方面の縦走(通称ブン回しコース。ブン回しとは文房具のコンパスの呼び名で、基点となる麓の福定、大久保、ハチ高原から扇状に周回する事が名の由来)を絡める事で、一転して距離の長い重厚な登山も楽しめます。
瀞川山は主に兎和野高原からハイキングで登られる山ですが、稜線上を林道が通過しており、山頂まで歩いて数分という所まで車で乗り付けられてしまうので、登山というよりは展望台に足を伸ばすような感覚で登られる事が多いようです。
登山口までの公共交通を使ったアクセス
関西でも屈指のレジャースポットというだけあり、登山口のアクセスを担う路線バスも豊富に設定されています。
最も一般的なものはハチ高原を基点に周回するコース取りで、小代越から高丸山を経て登るものと、鉢伏山と高坪山を跨ぐ林道を登り詰めていくものがあり、どちらも公営バスである関宮ふれあいバスのハチ高原バス停が登山口の最寄りとなります。他、別宮(東鉢伏高原)から高坪山を経由して登るコースは同路線の別宮バス停から登り始める事になります。関宮ふれあいバスは全但バス鉢伏線の出合ターミナルバス停にて乗り継ぐ形となりますが、往路の場合は時刻的に登山としては使用しづらいので、後に紹介する全但バス鉢伏線内のバス停の利用も併用すると良いでしょう。
【時刻表】関宮ふれあいバス(出合ターミナル~別宮・ハチ高原)
ハチ高原から一段低い八木沢沿い、全但バス鉢伏線の鉢伏バス停、氷ノ山鉢伏口バス停、奈良尾バス停といったバス停の利用も可能で、これらのバス停は氷ノ山の方に近く、鉢伏山と氷ノ山方面の縦走を行う場合には便利です。こちらも本数は豊富とは言い難いですが、終点鉢伏バス停に8時台に到着するバスが設定されているので往路においても問題なく活用できるでしょう(ただし平日のみの運行)。
【時刻表】全但バス鉢伏線(八鹿駅~奈良尾・氷ノ山鉢伏口・鉢伏)
鉢伏山は北側の美方高原から尾根上、高丸山東側の分岐に登るコースも存在します。こちらの方面から登る場合は全但バス秋岡線の秋岡バス停を利用となります。
瀞川山に登る場合は兎和野高原から十石山経由で登る形となりますが、こちらは登山口の付近にはバス停は存在せず、麓にある全但バス秋岡線・湯村温泉線の福岡ハチ北口バス停で下車し、そこから1時間程度歩く必要があります。
【時刻表】全但バス秋岡線・湯村温泉線(八鹿駅~福岡ハチ北口)
氷ノ山・三ノ丸
氷ノ山は兵庫県と鳥取県の境界に位置している山で、中国地方に属する山岳においては伯耆大山に次ぐ第二の高峰として知られています。日本二百名山の一つとして指定されていたりと比較的ネームバリューの富んだ山で、山頂へ至るコースも豊富。日帰りも容易である事から登山シーズンの時期は勿論、積雪期に関しても登山者の姿は一定数あります。
一般的には兵庫県側の福定や鳥取県側の舂米から日帰りで登られるケースが殆どですが、山頂からは幾つかの方向に尾根続きとなっているので、独立峰である大山と異なり縦走が楽しめる事が特徴。特に鉢伏山方面の縦走路は道の整備状況も良く人気のコースとされています。
ただし日本海側に位置しているという事もあり冬季は降雪量が多く、氷ノ山という名前のイメージ通り非常に雪深いものとなります。雪解けの時期も4月の時点では稜線上の殆どが雪に覆われており、完全な雪解けとなるのは5月に入ってからと標高1,000m半ばの山としては遅いので注意が必要です。
山としての成り立ちは大山と同様に元々は火山で、何度かの噴火と溶岩の堆積が繰り返されて現在のなだらかな山容が作られました。平坦な山頂部には古生沼を始めとした高層湿原が広がっており、シーズン時には様々な種類の高山植物が楽しめます。
登山口までの公共交通を使ったアクセス
兵庫県と鳥取県の県境上に位置する氷ノ山ですが、その両方面からの登山が可能です。
兵庫県側から比較的多く登られているコースは福定親水公園から氷ノ山越、もしくは氷ノ山スキー場から東尾根を経由して登るコースで、全但バス鉢伏線の氷ノ山鉢伏口バス停、奈良尾バス停がそれぞれ起点となります。
鉢伏山方面からの縦走の場合はハチ高原から小代越、大平頭避難小屋と辿るのが一般的ですが、ハチ高原最寄りのバス停である関宮ふれあいバスのハチ高原バス停は本数が少ないので、40分下った所にある全但バス鉢伏線の鉢伏バス停の利用も視野に入れると良いでしょう。ちなみに関宮ふれあいバスは全但バス鉢伏線の出合ターミナルバス停にて乗り継ぐ形となります。
宍粟市内から三ノ丸を経由して登るコースも設けられており、その場合は登山口まで若干距離がありますが宍粟市営のしーたんバス戸倉線の戸倉バス停の利用となります。こちらのバスの本数が少ないので前夜泊が無難です。
こちらの路線バスは一部を除き、神姫バス(ウエスト神姫)の拠点である山崎バスターミナルから途中の皆木バス停にて乗り継ぎとなります。山崎~播磨新宮駅・姫路駅の路線バスは多くの系統があるので、利用の際はバス事業者が提供する時刻検索等を利用すると良いでしょう。
【時刻表】神姫バス(姫路駅・播磨新宮駅~山崎バスターミナル)
【時刻表】しーたんバス皆木線・エーガイヤ線・戸倉線(山崎~皆木~戸倉)※ページ内の大型バスと小型バスのリンク先を併せて参照
兵庫県側の最後の一つは南東側、横行渓谷を経由して大段ヶ平から登るコースで、全但バス若杉線の栗の下バス停が登山口の最寄りとなります。実際の登山口となる大段ヶ平登山口まで登り4時間掛かるので一般的ではありませんが、バリエーションの一つとして掲載しておきます。
鳥取県側はわかさ氷ノ山スキー場から三ノ丸経由で山頂を目指すコース、仙谷の沢沿いに甑岩手前の分岐まで上り詰めるコース、氷ノ山自然ふれあいの里から氷ノ山越に登るコースの3種類が存在しますが、バス利用の場合はどれも若桜町営バス舂米線(つく米線)の路線上、駐車場バス停、スキー場バス停、ふれあいの里バス停がそれぞれ登山口の最寄りとなります。
【時刻表】若桜町営バスつく米線(若桜駅~駐車場・スキー場・ふれあいの里)
実際の登山記録
今回は上記のコースで歩きました。
氷ノ山方面登山その1(八鹿駅→日畑→名草神社→妙見峠→作山→日影→兎和野高原)
八鹿駅を起点として、氷ノ山方面に向かう登山の初日とも言える一日。スタートの八鹿駅近くのキャンプ場で一泊した後、かつての妙見詣における旧参道の登山口となる日畑集落から名草神社を目指します。途中までは順調であったものの名草神社手前から雪が増え始め、神社の参拝すらツボ足で悪戦苦闘。とは言えオフシーズンで全く人気のない森の中、重文指定の三重塔や社殿が立ち並ぶ様は中々に見ごたえがありました。名草神社以降はますます雪が増えて遅延気味となり、妙見峠到着後に予定していた妙見山の往復登山は泣く泣くカット。雪に埋もれた作山集落への下山道を下った後は日本の滝百選の猿尾滝を見物、旧山陰道沿いの日影集落からは再び登り返しとなり、兎和野高原に到着した所で一日を終えました。
氷ノ山方面登山その2(兎和野高原→十石山→野間峠→鉢伏山→高丸山→大平頭避難小屋)
二日目は前泊した兎和野高原から十石山、瀞川山と辿っていきます。しかし出発時点で空模様が怪しく、十石山に到着した頃は完全に雲の中。その後は但馬アルペンロード沿いに進んでいきますが終始雪が深く歩行に難儀。好天であれば展望が臨めるであろう瀞川山の山頂もこの状態では真っ白だろうとスルー。しかし野間峠にてハチ北スキー場のゲレンデの敷地内に入った頃に雲が流れ、目の前に突如として鉢伏山の山体が姿を現す。春スキーを楽しむ人々の中に紛れてゲレンデを登り返して鉢伏山の山頂に到着する頃にはすっかり快晴となり360度の展望を堪能、最終的な目的地である氷ノ山の立派な山体も十分に臨めました。その後は展望を楽しみながら稜線沿いに高丸山、大平頭と辿っていき、途中の大平頭避難小屋のロケーションに惹かれ、この日の宿としました。
氷ノ山方面登山その3(大平頭避難小屋→赤倉山→氷ノ山越→氷ノ山→三ノ丸→舂米→若桜駅)
登山最終日でもあり、今回のメインとなる氷ノ山への登頂を控えた一日。前泊した大平頭避難小屋を未明の内に出発した後、布滝頭付近で御来光を見物。雪と藪がミックスした稜線上を赤倉山、氷ノ山越と辿ると、ここでようやくトレースが出現して久々に感じられた人の気配に安堵。その後は甑岩のトラバースといった難所を越え、ようやく氷ノ山の登頂と相成りました。中国地方においては第二の高峰という事もあって眺望は抜群で、遠く伯耆大山の白い稜線も微かに窺えました。展望を堪能した後は稜線上を南下、三ノ丸のピークにて再び展望を楽しみ、そのままわかさ氷ノ山スキー場のゲレンデに無事下山。予定では路線バスに乗るつもりですが丁度良い便がなく、入浴を予定していた日帰り温泉である若桜ゆはら温泉ふれあいの湯まで自力で歩く。入浴後は更に若桜の市街地まで歩き、重伝建にも指定されている街並みを見物したり、酒蔵に寄ったり、お土産を物色したりと一転して観光モード。若桜駅からは若桜鉄道、途中でJRに乗り継いでこの日は豊岡を目指しました。