山とか酒とか

登山やお酒を始めとした趣味全般を雑多に、また個人的に有用だと思った情報を紹介しています。

熊野古道中辺路&大峯奥駈道縦走 登山口までの道程(日本酒調達、高田本山専修寺、新宮観光など)

テントを担いでの登山は前月、御嶽山登山の時以来となります。既に季節は晩秋に差し掛かり、シーズン終わりを迎えるその間際でしたが……このままでは御嶽山が今年最後であり唯一のテント泊登山となってしまう。

御嶽山御嶽山で満足度は高かったです。展望も最高でしたし。しかし日帰りで登れる山で山じまいというのはどうにも締まりが悪いという事で、此の度少し……というか、かなり長めの登山に出掛ける事にしました。

inuyamashi.hateblo.jpいざ選択段階に入るものの、11月に入ってしまった事で本来行きたかった妙高火打雨飾や諸々アルプスは早々に雪を被り始め、選択肢は減っていく一方。では、どこなら行けるのか。地図を眺め西に南に……ふと一つの山域が目に留まりました。

大峰山脈。何年か前に奥駈道の縦走にチャレンジしてみようと思ったものの頓挫して、そのまま足を運んでいない山域でした。行こうとは思っていたから登山地図だけは用意していたし、一通りの下調べも済んでいた。確かに、この辺りなら雪は12月手前くらいにならないと降らないだろう……殆ど関西なのでまず移動が辛そうだけど、登れる山が少ない以上文句は言っていられない。ひと目できつそうだけど分かるけど行こう、という感じに見切り発車気味に決める。

と行き先は決定したものの、本宮~吉野を歩き通す大峯奥駈道。さてスタートは本宮か吉野かどっちからか選ぶのですが……正直言って、どちらも行った事がないのでピンとこない。

ただ地図を眺めてみると、熊野古道の中辺路が本宮から那智や田辺の方に伸びている。那智ならばこれまで旅行で何度か行った事があるので、なんとなくイメージがあった。観光地の綺羅びやかさ神社仏閣や瀑布特有の神聖さ昭和のダサさが混在した、どこか懐かしくほっとさせられるイメージ。

他の人の記録を見てみると、大峰奥駈道に加えて那智までの中辺路歩きをセットメニューにして行く人は多いみたいでした。じゃあ自分もそれをパクらせて貰おうと決定。行程はその分長くなりそうですが、賞味期限切れの山食が家に大量にあるので、それを一気に消費できる絶好の機会になるまたとない機会……とまあ、そんなこんなで少し長めと言うより、がっつりロングなコース選定となってしまいました。

さて、前置きが長くなりましたが、今回の記事は登山口までのアクセスとなっています。例によって観光寄り道しながらのんびり向かいました。

他の日程を見たい方は以下の記事よりリンクを辿って下さい。

【2019年11月】熊野古道中辺路&大峯奥駈道縦走についての記録 - 山とか酒とか

目次

電車に揺られて西へ

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いつものように中央線を乗り継いで行きます……関西に行くのになんで中央線で? と自分でも疑問でしたが、夜行バスだろうが新幹線だろうが登山口の那智まで行くには一日がかりの移動。同じ一日がかりの移動ならばちらほら途中下車しつつ、観光も交えて行くのが私の移動スタイル。

写真は今回のお供。一週間を軽く越える行程というだけあって、御嶽山の時とは比べ物にならないくらいに重重です。上から体重を掛けて圧縮しないと天蓋が閉まらない程でした。当然網棚になんか載りません(落ちてきて人に当たったら首の骨折れます)。

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前回登った御嶽山木曽福島付近からの車窓から見えました。既に閉山を迎えて登る事はできませんが……この時期でもまだ雪は積もっていないんですね。3000越えてるのに。

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中津川、名古屋と鈍行を乗り継いで関西本線へ。乗る度に思いますが、平行する近鉄に比べると単線で旧態依然って感じの路線。電化はされているものの設備は全体的に古く、鄙びた雰囲気が残っている。

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途中の桑名で降りて近鉄名古屋線に乗り換えます。那智に真っ直ぐ行くならば、そのままJRに乗りっぱで良いんですが……。

一身田観光(高田本山専修寺、寒紅梅酒造など)

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津の少し手前の高田本山にて下車しました。この街では三つ程目的があります。

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ちょっと観光気分で街を歩いてみます。ここは白塚寄りに歩いた所にある逆川神社。特定の酒樽がずらり…という事は。

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まず目的の一つ、山に持っていくお酒の調達です。適当な小売店で買っても良かったんですが、都合よく徒歩圏内に酒蔵があったので寄ってみました。先程の神社から目と鼻の先の所にあります。

酒蔵は寒紅梅酒造。首都圏向けの銘柄にも力を入れているようで、生酒のラインナップもバリエーション豊か。悩みに悩んだ挙げ句に色々と試飲させて頂いたのですが、新酒第一号ができたばかりとの事なのでそれを選びました。写真や味のレビューは後ほど掲載。

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寒紅梅酒造から今度は西側に進みます。先程乗った近鉄の踏切を越える……この辺りって結構な田舎な感じがしますけど、首都圏並に本数あるんですよね。特急やら急行やらが引っ切り無しに通り過ぎていきます。

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近鉄の踏切を過ぎた所で今度は伊勢鉄道の高架橋が見え、トコトコと単行のディーゼルが通り過ぎていきました。この一帯は津に向かって三つの鉄道路線が集約しており、駅も高田本山、東一身田、一身田と徒歩圏内に所狭しと三つの駅が並んでいます。全部無人駅なんですけどね。

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更に西に進むと一身田の町中に入りました。この街は中央にある高田本山専修寺を中心に江戸期より形成された寺内町です。

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「今昔マップ on the web」より作成

明治31年のこの辺りの古地図です。まだ近鉄伊勢鉄道はありませんが、紀勢本線関西鉄道紀勢線)は既に開通しています。江戸に入って計画的に作られた街であり、周囲の農村型集落と違い道が整然としているのが特徴。

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こちらがその高田本山専修寺の山門となります。ここの見物が二つ目の目的です。

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境内はとても広々。ここは真宗十派の一つの本山派の総本山となっています。真宗といえば正直、本願寺派大谷派くらいしか知らなかったのですが、ここも総本山というだけあって規模は大きく、京都にある東西本願寺にも匹敵するほどの伽藍となっています。

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入って正面、御影堂如来が仲良く並んでいます。開祖である親鸞が崇拝される真宗の寺院にありがちで、御影堂の方が幾らか大きいです。

どちらも江戸初期と新しめの建築物ですが、類まれな大規模木造建築という事で近年になって二つとも国宝に指定されたりしています。ですから割と観光客が来ている様子で、大型観光バスなんかも頻繁に入ってきていました。

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境内を歩いたり堂内を覗いたりして見物した後は御朱印を貰いに行きます。本願寺派大谷派を始め真宗の寺院では基本的に御朱印は貰えないのですが、こちら本山派は貰えるようです。御影堂の脇に御朱印こちらです的な案内がありました。

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こちらがその御朱印です。かなり冒険的なデザインで、後で回った寺院で差し出した時「この御朱印変わってるねー」と、まじまじと見られたりしました。真宗の朱印というのが珍しいという事でもあるのかな……ちなみに2ページ分なので値段は600円です。

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専修寺見物を終えて寺内町の町並みの方へ。三つ目の目的ですが……この日の晩ごはんの調達でした。町内にちょっと面白そうな弁当屋さんがあるとの事でそこで調達しようとしたのですが、既に店じまいしていて有りつけず。結局、達成できた目的は二つのみ。ご飯どうしよう。

紀勢本線で南下、ロングシートで電車飯

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ひとまずJRの一身田駅から新宮行き鈍行に乗って南下します。一身田駅は明治20年代に開設された古い駅で、無人駅ながらに広々とした作り。空も広い。

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津や松阪を過ぎて、列車はどんどん南下していく。松阪辺りで牛肉弁当でも買おうかと思うも、停車時間は僅かで買えそうにない。

なんとかして夕食をと調べていると、紀伊長島の駅前でさんま寿司のテイクアウトができる店がある事が判明。接続か交換待ちかで長く止まっている多気駅のホームに降りて電話予約し、その後紀伊長島へ。交換待ちの間に駅の外に出て受け取りに行きました。

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無事に寿司を入手しそのまま車内で夕食……1両に10人以下なのでまあ気にせず食べられますが、ロングシートなので旅情は無し。左が紀伊長島万両寿しで購入したさんま寿司(ノーマルの押し寿司と炙り)。

右が先程、寒紅梅酒造で購入した新酒、寒紅梅冬のうすにごり・白くまラベル。五百万石使用の純米生原酒で、味は中々骨太なものの、活性感強めでややドライ気味な印象。食事に合う感じのお酒でした。価格も割と安めでいい感じ。

 
 
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さんま寿司も頂きます。ハーフ&ハーフなんていう無難なものもありましたが、翌日以降は山ごもりで今のうちに力を付けたいので1パックずつ、計2パックを男食い。それでも合計千円程度と破格な上、味も上々なもの。

紀伊長島普通列車なら大抵長時間停車するので買いやすいのが良いね。この辺りは新宮まで多分駅弁とか無いと思うので、いい感じの発見でした。

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食後、野宿できそうな所がありそうな駅を見繕い、適当に降りました。どうせこれから山の中で一週間野宿生活なんだから、一泊増えるくらい別に……って感じで抵抗は無し。

新宮観光(熊野速玉大社、新宮城(丹鶴城)、尾崎酒造など)

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翌朝、始発列車に乗って新宮駅にやってきました。登山だけならば朝一で那智から登り始めるべきですが、今回は行程上熊野那智大社熊野本宮大社を通る。だったらここ新宮の熊野速玉大社も加えて熊野三山を全部回ってしまおうと思い、途中下車して寄り道する事に。

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駅から速玉大社方面へ。やや朝寝坊気味の商店街を抜けていきます。

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歩いている途中、新宮発大和八木行きのバスを見かけました。一般道のみを走る路線バスでは距離も所要時間も日本一長いもので、片道6~7時間くらい掛かるんだとか。すごくしんどそうだけど一度乗ってみたいですね。無くなる前に。

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市街地を抜けた所、熊野川のすぐ側に熊野三山の一つ熊野速玉大社があります。新宮には何度も来てますが、ここまで足を伸ばしたのは初めてかも。

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御朱印も頂きました。熊野速玉大社といえば千点以上にも及ぶ国宝指定の古神宝類が有名なのですが、それを収蔵、観覧できる熊野神宝館はまだ早すぎて閉まっていました。残念だけど今回は旅のテーマが違うから仕方ない。あくまでメインは登山だ。

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今回の行程ではお酒一本じゃとても足りないので、熊野川の畔にある尾崎酒造に寄って二本目を調達しました。山廃純米酒・熊野紀行。こちらはだいぶクラシックな感じの辛口酒。けど決して淡麗というわけではなく、独特の野趣のようなものを感じる。たまにはこういう地酒らしい味わいの地酒も良い。

 
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まだ少し時間があったので新宮城(丹鶴城)を追加で観光。なんとか映えとかしそうなイベントやってました。傘の中に照明が仕込まれていて、夜になるとライトアップされるらしいです。

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新宮城の城跡。立派な石垣が残っている。復元事業を進めているらしく、いずれ天守などが整備されるという話。

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新宮城から熊野川を臨む。何日もかけてこの上流へ向かうと思うと……。

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新宮駅に戻り、長い長い登山の始まりである那智駅へ移動……これから先、頼れるものは自分の足だけになる。

次回記事『熊野古道中辺路その1』に続く

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