
突然ですが、これは私のテント泊用の登山靴です。マインドル製YARI JAPANでオールレザー。内部の立体性が優れており、重装備で4泊5泊くらい縦走しても全く足が痛くならない逸品中の逸品です。素材は何度もワックスがけして今や見る影もありませんが、いちおうヌバックレザー(起毛)です。
この靴、 2015年の夏、雲ノ平の登山の直前に買った靴なので既に4年選手です。
※2025年現在でもソールを張り替えながらも現役で、この記事通りめでたく10年選手となりました!
記念すべき使用10年目を迎えた登山はこちら→【2025年6月】飯豊連峰
という訳で、当時としてはちょっと奮発して買った靴なので、少しでも長く使いたいと購入時に山屋(登山道具店)の人にお手入れの方法を尋ねたのですが、
山屋「使った後にこのコロニルのナノ・コンプリートを塗るだけでいいよー」
との事でしたので、一年くらいそれに従ってお手入れしていたのです。
確かにナノ・コンプリートはスプレーするだけで楽ですし、撥水性も完全に復活します。ですから私を始めとした面倒臭がり族には丁度良いですし、実際ちょっとしたお手入れには良いのかも知れません。
しかし、使っている内にだんだん靴の表面がボロボロ毛羽立ってきました…ナノ・コンプリートだけでは撥水性は復活しても耐久性がまるで回復しておらず、表面の革部分が劣化(紙質化)していたのです。
そこで私はふと、当たり前の事実に気付きました。山屋の方って、一つの製品をあんまり長く使われると買い替えのスパンが伸びてしまう、要するに儲けに繋がらないので、メンテナンスについてのアドバイスとかって割と適当なんですよね。だから防水を維持する程度の最低限の事しか教えてくれなかったのでしょう。
とは言え消費者としては登山靴なんてそうそう買い替えたくはない。単純に高いという事もありますし、仮に買い替えたとしても今以上のものに中々巡り会えないというリスクもある。だから今現在しっくり来ているものはソール交換してでも可能な限り長持ちさせたいというのが本音。
とにかく、長く使うつもりで買ったのにこのままでは何年も持たないなと、それまでのお手入れ方法を一から改め、ワックスがけを中心とした全く別の方法を取ることにしました。
この記事では表題通り、そのお手入れ方法を実際に手順を踏みながら紹介します。
目次
お手入れの手順
準備&必要な道具の紹介

今回は先程のマインドルの登山靴を使用します。直近では御嶽山に行ったくらいなので大してダメージはありませんが、それまで暫く日帰り登山ばかりで出番がなく一年くらい倉庫に放ったらかしだったので、お手入れ自体も割と久しぶりです。ワックスもだいぶ剥がれかけてかわいそうな状態に。

必要な道具はこちら。メーカーはなんでもいいというか基本コロニル一択になってしまいますが、レザージェル(防水ジェル)、レザーワックス、ヌバックローション…以上の3点です。ヌバックローションは色の復元の為のもので、見栄えを重視しなければ不要ですが、他の2つは必須です。
表面の洗浄+防水加工をする

手始めに、じゃぶじゃぶと水で洗って泥や汚れを落とします。革は水に濡れても平気なので盛大に水飛沫を上げて洗いましょう。風呂場に持ち込んでシャワーなどを使っても構いません。多少中に水が入っても後で乾かせば全く問題無いです。
洗う際はとにかく泥を落としましょう。革にとっては泥は大敵なので徹底的に。残ってしまうと後でかけるワックスの乗りが悪くなるので、ほんの僅かでも残してはなりません。
ついでにソールの方も土や小石などが詰まってたらグリップが利かなくなるので、こちらについても金たわしを使って綺麗にしましょう。小石が取れない場合は竹串とかで弾き出す感じで。(跳んだ石が目に入らないように注意)


洗い終わったら、濡れた状態の間に防水ジェルを塗り込んでいきます。このコロニルの防水ジェルは濡れた状態で使用する製品なので、洗った直後にそのまま作業を続ければスムーズです。スプレータイプよりも乗りがよく、ボトル1本買えば意外と長持ちするので非常におすすめ。


写真のように内部に手を突っ込んで、轆轤のようにグルグル回しながら塗っていくと楽です。皺や境目など指では塗り込みにくい所は綿棒を使いましょう。まんべんなく、そして塗り残しの無いように…そうしていくと、やがて表面が水を弾くようになります。


今回はもう一つ、家族の登山靴のお手入れも平行して行います。全革ではなく部分革の靴ですが、やる事は変わりないです。
こっちは随分とお手入れをサボっていたようで革部分が完全に痛んでおり、特につま先の部分が毛羽立っています。色もまるで乾ききった砂漠のような色に。
こちらも水浴びさせた後に防水ジェルを塗りたくります。暫く手入れしていないものは水を弾くようになるまで少し掛かるので、何度か繰り返して塗り込んでいきましょう。
使用した道具はこちらの『コロニル 防水ジェル』になります。ジェルと言うだけあって少しの量でも広く伸びるので、先程書いた通り結構長持ちします。1ボトルで2年位は持ってるかな。
ヌバックローションを使って色合いの復元(省略可)


次に色の復元用にヌバックローションを塗り込みますが、正直この工程はスキップしてもいいと思います。防水目的でもありますが、防水については先程のジェルで十分ですし、色合いの復元に関しても次の工程であるワックスがけをして艶を出せば然程気にならないからです。
しかしワックスがけを行う事で元がどんな色でも黒っぽくなってしまうので、それが嫌な人はこの段階で明るい色のものを使用すれば多少はマシになるようです。加えて最近は全革や部分革でもカラフルな登山靴が多いので、そうした元の靴の色を保ちたい、オシャレ志向の登山者の方には必需品かもしれません。
レザーワックスを使ってワックスがけ&艶出し


仕上げにワックスがけをして全体的な防御力を底上げします。某ゲーム的に言えばエンチャントとかでしょうか。これを施す事で防水性も更に向上する、最重要とも言える工程。本腰入れて行いましょう。
やり方としては、ワックスを指先分くらい出して、それを引き伸ばして刷り込んでいきます。指の腹を使ってもいいですが、長くやってると皮膚を痛める上に爪の間に入ったりして気分が悪いので、私は普段適当なボロ布を使っています。




全体に満遍なく塗り込んでいきますが、つま先など特に痛みやすい部位+既に痛んでいる部分は特に入念に行います。ベロ(薄い皮の部分)や足首の部分の内側も忘れずに塗り塗り。
ワックスの量も後でブラッシングしたら余分なワックスは落とせるので、塗りすぎるくらいで大丈夫です。

片足出来上がりました。右がワックス加工済、左はまだすっぴん(と言っても防水ジェルは塗り込み済)です。艶もそうですがまるで同じ素材とは思えない程に質感が重厚になりました。この状態であれば傷も付きづらく、八ヶ岳辺りで岩に引っ掛けた程度では何の事はありません。防水性も抜群。


もう一方の靴のbefore-after。ワックスがけ前は爪先がボロボロに毛羽立っていましたが、ワックスを塗り込めば見た目通り表面が硬質化し耐久性は一気に回復します。見た目も新車同然のピカピカ具合。
こちらが今回使用したワックス『コロニル アクティブ レザーワックス』です。伸びやすく使いやすい。そして艶も出やすい。全革だとそれなりに量を消費(だいたい1年に1本くらい)するのでAmazonとか楽天とかの何かしらのキャンペーンの時に買い溜めしておくのがおすすめです。
また、ワックスがけした後は馬毛ブラシ等での艶出しも欠かさず行いましょう。ボロ布を使えば余分なワックスは落ちるので多少は省略できますが、艶が出れば出るほど汚れを弾きやすくなり耐久力が上がるので、こちらも登山靴を長持ちさせたいなら必須の行程です。
磨き方のコツですが、歯磨きとかと同じ要領です。押し付けたりはせず、軽くあてがった状態で素早く擦るように磨く。あまり磨きすぎるとワックスが落ちてしまうので程々の所で、余分なワックスが落ちたなという程度で止めましょう。
ちなみに、目が眩む程にピッカピカに輝かせたい人は『ワックスがけ→ブラシで磨き』の行程を何度か繰り返しましょう。3回くらい繰り返すと、他の登山者の方から「よく手入れされた登山靴だね~」と感心されるレベルでピカピカになります。(経験談)
靴内部の臭い消し


靴のお手入れとは厳密には違うのですが、内部の臭いが気になる場合は臭い消しにはグランズレメディを使用するのがおすすめです。使い方は単純、中に軽く振りまいて伸ばせば良いだけ。
最近この製品を知ったのですが……中々凄いです。臭いが本当に皆無に近い状態になります。当然の事ながら普段使いの靴にも使えますので、靴の臭いに少しでも悩んでたり、我が家の玄関なんか臭いなーって人は迷わず買った方がいいです。
こちらの商品は正規品と並行輸入品があります。どちらも使った事ありますけど、ぶっちゃけ大差ないので既に効果を知っている人は安い並行輸入品を選んでも良いかも。ただし効果を実感するためにも最初の一回目は正規品を選んだ方が良いかも知れません。
おつかれさまと労う


以上の行程が一通り終われば、傷が殆ど付かない上、沢に盛大にドボンさせても全く浸水しない、そして臭くもない完全無欠の靴になります。手入れの頻度ですが、靴を買った直後、シーズン始めと終わり、そして何泊もするような長期登山の後にメンテナンスで軽くやる程度で十分です。
一通りお手入れが終わったら風通しの良い所で一日くらい置いておきましょう。そのままシーズン終わりを迎えるようでしたらその後、カビが生えないように中に丸めた新聞紙を詰め込んで一年お疲れ様と労いの言葉。来年、再来年と一緒に山に行く為にも必要な作業であり、必要な儀式となります。
革製の靴は使い方次第では十年くらいは余裕で使えるのが強みです。しかし適切なお手入れをしなければすぐにボロボロになり数年と使えません。こうした作業を地道に続ける事で、ようやく何年にも渡って使えるような代物となるのです。
という訳で、是非とも適切なお手入れをして百戦錬磨の十年選手へ、いえ一生モノの相棒へと育て上げましょう。あなたの登山靴も革製であればそう成り得るポテンシャルを持っているのですから。






