編笠山・権現岳(観音平→編笠山→青年小屋→権現岳→観音平)
2019年10月、八ヶ岳南部の編笠山と権現岳に家族でハイキングに行ってきましたので、その時の情報などを記します。実際に行く際の参考にして頂ければ幸いです。
目次
編笠山、権現岳についての案内
概要
編笠山は八ヶ岳の最南端。権現岳は中央道のインターも近くアクセスも至便という立地に位置していて手軽に登れる事から、八ヶ岳の中でも特に人気の山です。どちらも展望が良く、特に権現岳の山頂は突き出た岩峰にあるので360度の展望。
権現岳は編笠山から更に奥に続く稜線を進んだ先にあるピークですが、編笠山よりも道はやや険しく行程も長くなる事から日帰り登山においては健脚向けです。どちらも回る際は青年小屋で一泊して余裕を持ってという方も多いです。
登山口へのアクセス
登山口である観音平まで行くバスは全くありません、皆無です。タクシーに乗るか小淵沢駅から歩いていくかしか方法はないです。ちなみに小淵沢駅から観音平までは徒歩で3時間くらいです。下りだったらそれよりも多少短いですが、いずれにせよ結構な距離です。
車が使えない場合は潔くタクシー使いましょう。
コースの状況
観音平→押手川
石も少なく歩きやすい登山道です。入口から暫くは幾つもの道が錯綜していますが、余程道が薄いものを選ばなければ後々収束するので問題ないです。
押手川→編笠山
石混じりの急登となります。途中にハシゴ場が一箇所ありますが短いです。急登の区間自体もそこまで長くないので、ちょっと険しい山を登りたい時の練習にいいかもしれません。
編笠山→青年小屋
青年小屋方面に少し進むと大きな岩がゴロゴロ転がる岩稜帯に出くわします。岩と岩の間を飛んで進んでいくのですが、なるべくコース通りに進むと楽です。たまに動く岩があるので注意。
青年小屋→権現岳
ザレ場の急登と岩場のトラバースがあります。手を使う場合が多いので、自信が無い方は要所でストックを仕舞って両手を自由にした方が良いでしょう。
青年小屋→押手川(巻道)
意外とアップダウンのある道です。苔むした岩がゴロゴロしていて地味に歩き辛いので、帰り道だからと気を抜かずに注意しつつ進みましょう。
実際の登山記録
以下、今回歩いたルートです。
経緯
前回の御嶽山登山では天気も恵まれたという事もあり、暫く振りに自分の中の何処かで登山熱が再熱。当分はそれも冷めやらぬという状況かと思われていましたが、帰宅直後くらいにやば目の台風が来ておよそ呑気に登山とか言ってるような空気じゃなくなったり、中央本線や中央道が寸断され山方面へのアクセスが物理的に不可能になったりと…せっかくジワジワと高まっていた熱も、先の大雨に打たれたかのように強制冷却されてしまい、そんなこんなで気付けば半月程度経過していました。
本来であればその間に妙高火打雨飾辺りの藪縦走にでも出向きたかったのですけど、自然災害だし仕方ないですね。今回はご縁がなかったという事で…。
それはさておき、今回の登山は前々から予定していた家族登山。弟が新しく山道具を買い揃えたというので、それらを駆使しての実践の場として編笠山へ向かいました。
当初は大弛峠からの金峰山往復というEランク難易度くらいのイージーコースを予定していたのですが、どうにも全体的に雲があって天気はいまいちな感じ。そうした事もあって、行く直前までGPVで雲の動きを監視しながら一人頭の中の自分達と検討会を開いた結果、急遽天気的に少しはマシそうな八ヶ岳の、その中でも割と登りやすそうで台風被害も少なそうな編笠山に変更したという訳です。コースは観音平からの往復という極めてシンプルなもの。特に変わったアレンジもなく量販店で売ってそうなレベル。登りが少しきついからCランク-くらいの難易度ですね。
そんな編笠山には過去二度。特に観音平からの登りは一度、テント泊デビューの時以来なので、まだ青かった当時を懐かしみながらの登山ともなりました。
www.yamareco.comwww.yamareco.comどちらも徒歩で駅から(駅へ)歩いてますね。普段はマイカーを持たざる者、もとい公共交通に縛られし民なので、公共交通が死に絶えている観音平へのアクセスは特に難しいのです。
しかし今回は家族登山という名目上レンタカーを使用できたので、登山口まで優雅に乗り付ける事ができました。
レンタカーで観音平へ
先に説明した通り今回はレンタカーでのアクセスです。普段は専ら単独ですから、不経済なのでレンタカーやタクシーといった類は使わないのですが(例外はありますが)、今回は三人パーティというそこそこの人数で向かうので車を借りました。車種は日産マーチ。特に捻りもない、ありがちなものですね。
マーチは以前ちょっとした用事で借りた事があったので思考停止して今回も同じものをと選んでしまったのですが、所詮はコンパクトカー。三人+登山道具という物言わぬ乗客を積み込むとえらく狭いんですよね。もう数百円出してスペース重視のノートにしておくべきだったかもしれないと早々と後悔。
あと本来が街乗り目的の車種なんで、高速走ってると実にワイルドな乗り心地。地面の凹凸がお尻にゴリゴリ伝わってきて、家族からもろくに寝られなかったと怨嗟の籠もった意見を頂く。
という感じでボロクソのレビューを書きましたけど、安く済んだのでまあ良しです。今回借りるに当たって色々と調べましたが、楽天トラベル経由だと大抵のケースで割引(最大で半額)になる上、なんかよく分からない1000円引きのクーポンとかが知らない内についてきたりと、律儀にレンタカー会社の公式HPから予約するのがバカバカしくなるレベルのお得さ加減でした。
などという露骨な宣伝はさておき、実際の行程についてですが…前日日付が変わった頃に自宅を出発し、夜中運転して登山口へ行くという、車登山ではよくある寿命を縮めそうなスケジュールで行ってきました。
実際には自宅を出発してからきっかり2時間くらいで観音平に到着。あずさに乗るのと殆ど変わらないくらいの所要時間でした。久々の車登山ですが、車無し族でも人数多いならレンタカーは断然選択肢に入りますね…運転の疲れを抜きにすれば。交代要員の存在ってやっぱ大切だと思いますよ。
観音平→編笠山
[4:19]観音平出発
準備に勤しむ皆さん。登山口にはぽっかりと闇のゲートが口を開けています。時々鹿の鳴き声が聞こえてきておどろおどろしさ満点、鹿どころか熊とばったりご対面しそうな雰囲気。恐怖度的にはお化け屋敷以上廃病院未満くらいでしょうかね。
今回は人数も多く少し時間が読めないので、そんな暗闇の中をカモシカ山行気味に出発しました。なんで暗い内から登るんだよという後ろからの文句は正論。
闇の中をうごうご蠢いてると徐々に夜が明けてきました。しかし曇天の下ですので尚も薄暗い。カメラもちゃんと構えてないとブレます。
中腹くらいでは紅葉も始まっていました。押手川の手前辺りなので、だいたい標高2,000mくらいでしょうか。先々週、御嶽山で七合目の少し先(2,300mくらい)で紅葉が始まってたので、二週間の間に若干下りて来ましたね。
青年小屋への巻道との分岐点である押手川で小休止。傾斜も徐々に急になってきて、この辺から皆さん口数少なくなる。早発した事もあって他の登山者とも全く会わない、やや心細い旅路。
押手川から先はゴリゴリにごつい登りに入ります。以前テン泊デビューの際に挑んだ時に泣かされたのを思い出しました。しんどかったけど何もかもが目新しく見えて、純粋な気持ちで楽しめていた…そんなルーキーだった頃の自分はもう居ない。
雲も濃いし山頂はガスっててさぞかしつまらないだろうなー、なんて話しながら登ってましたが、そうした下馬評を覆し途中で展望が開けました。雲海の上にプカプカ浮かぶのは輪郭くっきり南アルプス。
文句なしの好天…ではないものの思わぬ好展望。きつい急坂が続きますが、振り返れば景色が癒やしてくれます。
こないだの御嶽山の時と同じで、登るにつれて視界が開けてくる。富士山も楽勝で見えました。
編笠山手前。山頂まで本当にホントにあとちょっと! 地面に打ち捨てられたかのように無造作に置いてある金属看板ですが、五年前にも見掛けました。五年の歳月でだいぶ草臥れたね…自分もか。
編笠山からの展望
[8:37-9:56]編笠山
山頂に到着。なんか金峰山も雲抜けてました…土壇場で行き先変更した意味あんまりなかったかな。
山頂をぐるっと展望で撮ります。360度、全ての方面が見渡せました。しかも相当に遠くの山までも見える。
とりあえず富士山。ちなみにこの日の翌日に初冠雪でした。雪のない富士山もシンプルでいいんじゃないの。
こちらは奥秩父。御嶽の時と比べて断然近いので、金峰山の五丈石も目を凝らさずとも見える。左に伸びるのは甲武信ヶ岳方面の山々か。
南アルプス。こちらも近いので山肌までよく見えます。鳳凰三山、北岳、甲斐駒ヶ岳、仙丈ヶ岳、鋸岳というおなじみの山々。
こちらは中央アルプスです。南駒ヶ岳、空木岳、宝剣岳、木曽駒ヶ岳、そしてこないだ登った御嶽山。御嶽山から見た時とは鏡合わせにしたかのように正反対。
仲良く並んでいる御嶽山と乗鞍岳。逆に御嶽山から八ヶ岳方面の写真を見た時のものはこちら。
何より圧巻なのは横に大きく伸びる北アルプス。槍穂は勿論、立山剱岳、右端の白馬三山までずっと見える。すばらですね。
そして編笠から北方面に伸びるのは八ヶ岳の稜線。南部は特に起伏が大きく荒っぽい。さながら益荒男共の宴って感じの印象。実際通して歩くとそのくらいキツい稜線。
赤岳と阿弥陀岳、間に横岳と硫黄岳。右は赤岳の望遠。
こちらは手前の権現岳と蓼科山。本日の予定では権現岳まで皆揃って向かう予定だったのですが…「これからあそこに行くんだよ」と言うと、一人で行ってこいバカと即座に却下される。
山頂でひと時のお休み…戦士の休息ってやつかもね。
正味一時間半の大休止、身支度を整えたら青年小屋に向けて出発します。
編笠山→青年小屋→権現岳ピストン
山頂を出発して数分、鞍部にある青年小屋が見えてきました。
権現岳と眼下に見える小屋。何度か通ってますがこの景色は特に好きです。
ここから先は巷で大人気のゴロゴロ岩飛びゾーン。岩場を八艘飛びの要領で進んでいく…八ヶ岳に来たって感じがしていいね。思わぬアスレチックに同行者のテンションも軒並み上がる。
[10:30-10:51]青年小屋
岩場を下り、遠い飲み屋(別名青年小屋)に到着しました。さあ食事にしようという所ですが、編笠の山頂で相当に飲んで食って飲んで食ってしてしまったので、到着時点ではいまいち空腹度が足りない。
そんな風に昼飯どうしよう的な話をしてる中で私は空気を読まずに「やっぱ一人で権現に行ってくるわ」と言い放つ。往復だと標準コースタイムで3時間弱、それまで食事を待って貰う事になるので当然の如く文句は噴出する。
だが結局「1時間半で戻ってくるから」とか訳の分からない事を言い置いて強引に出発しました。チームプレイ×。
権現に登る途中、振り返ればこんもり盛ったような編笠山。これぞまさに編笠って感じの形。
懐かしい感じの道です。ここらへんも最初に来た時は死にそうな顔で登った記憶がありますが、今回は空荷なので涼しい顔を維持したまま登れます。
ギボシ、小屋、そして権現岳。これ、日帰り圏内にしては中々の稜線だと思いますよ。
権現小屋に通じる稜線。道中には脆い岩場のトラバースも多いです。人が一緒に入ってると怖さが伝わってきていいね。実際はそこまで怖くない道ですけど。
いつも素通りしてしまう権現小屋です。アルコールランプの素朴な小屋ですが今回も例によって素通り。
最近テントばっかりで小屋とは縁がないですね。小屋に泊まりたいというよりは、小屋で飯を食べたい。小屋番のお兄さんが片手間に作ったような少し雑な感じのカレーとか食べたいですね。
[11:39-12:16]権現岳
超高速で駆け上ったら小屋から50分足らずで到着しました。山頂札の姿がありませんね。台風の影響かなんかで旅立ってしまったようです。
合成してパノラマ作りましたが、雲が多い+薄暗いという事もあって境目がガタガタしてます。雰囲気だけこんな感じという程度で。
権現から赤岳や阿弥陀岳。比較的行ったばかりなので当分は良いやって感じの方面ですが、こうして見ると先に進みたい欲求に駆られるから不思議。行かないけど。
硫黄岳の左奥に浅間山が見える。
こちらは奥秩父の山々。雲が降りてきたのか編笠に居た時よりもはっきりと見えました。
権現岳山頂の岩の上からは360度の展望ですが、調べないと分からないような謎の山が沢山雲の上に浮かんでました。左の写真は右から順に妙高山、火打山、焼山、高妻山乙妻山? 右の写真は左側の高いのが日光白根山で、右側は男体山とか太郎山ですたぶん。
そんな感じで頂上の岩に座ってぼんやりと景色を眺めてたら40分くらい時間が飛んでました。
呆けて下がったIQを戻しながらの帰り道、いつもスルーしてしまうギボシに登りました。ここもまた良い、権現岳を眺めるには良い展望台です。
ギボシから西側の山々の展望。全部見えます。乗鞍の左側は白山か。美ヶ原の電波塔群も雲間から覗かせています…わざわざ登った甲斐がありましたね。
そんな感じに展望を堪能したらマッハで下ります。まあ下りで飛ばせるような道ではないので…それなりに時間がかかる訳で。
青年小屋にて昼食→下山
[13:04-14:16]青年小屋
結局、往復のコースタイムは二時間オーバー、暖かいブーイングに迎えられての昼食となります…昼食と言ってもカップ麺にソーセージ焼きというおなじみの食事。あまりにも変わり映えしないので今後定食と呼ぶ事にします。
御嶽山の時もそうでしたが、最近はコーヒーに拘ってます。今回も前日夜に挽いたばかりのものを使用してのドリップコーヒーです。私個人としては中々の出来栄えだと一人満足げにしていたのですが、ぬるい温め直せなどという辛辣な意見が飛んでくる…抽出したコーヒーを沸かし直すと風味が飛ぶんですよ。
食事を終えたら下山です。押手川まで巻道を進んでいきますが、岩がゴロゴロしてて地味に歩きにくい道。おまけに無意味なアップダウンも多く体力もジワジワと削られる。
押手川を越えて観音平まで向かう。日は落ちて辺りは暗くなり、雨まで降り始める始末。権現なんて行ってるからだろうと文句が噴出。反論の余地は全くなし。
[17:15]観音平到着
日が沈んでからの到着となりました。戦士も堪らず休息中。
その後写真では撮ってませんが、帰りに前回の八ヶ岳行きの時にすぐ側を通った八峯苑鹿の湯に入りました。清潔感あってサウナ付きで至れり尽くせりな感じ…けど駅から遠いのが難点ですね。いつもの小淵沢駅発登山だと駅そばの延命の湯の方が選択肢に入ってしまう。
温泉に入ったらド雨の中を中央道で帰りました。途中、夕食目的でとんでもなく久々に談合坂に寄る。十年ぶりくらいかな。
フードコートで食べたのは味噌かつ丼、胃のキャパシティは人並み以下なのに調子に乗って大盛りを注文。最初の5口くらいは渾身の美味さでした。最後の5口は白目を剥いてました。おしまい。