
登山用の日本酒として春日酒造の【龍游 ひとごこち59 無濾過生原酒】を調達しましたので、甘口辛口などの味の解説やレビューをざっくばらんに書き殴ります。皆さんの日本酒選びに1ミクロンでもお役に立てますと幸いです。
前回の記事です→『007|信濃錦 艶三郎 純米生原酒』
お酒のレビュー
概要と経緯

前回紹介致しました『007|信濃錦 艶三郎 純米生原酒』に引き続き、2025年8月の中央アルプス縦走の登山用のお酒として調達したものとなります。
登山メインにした記事はこちらからご覧ください。伊那市での日本酒調達についても触れています。→『中央アルプスその1(上片桐駅→およりての森登山口→鳩打峠→小八郎岳)』


宮島酒店にて信濃錦の艶三郎を調達した後は、今回の登山酒調達における2軒目の酒蔵である春日酒造へと向かう。宮島酒店は飯田線の伊那北駅と伊那市駅のほぼ中間、伊那の市街地の中心近くという所に立地していたものの、春日酒造は伊那市駅のすぐ裏手にあるとか……もし試飲ができるようであれば、電車の時間ギリギリまで粘れそうだなと期待が膨らむ。
という訳で再び酷暑の中、宮島酒店の前の小沢川から伊那市駅前のアーケード街方面へ進む。途中、南アルプスの白根三山辺りの山々が見えていました。


程なくして伊那市駅に到着。その名の通り伊那市の中心駅という位置付けの駅で、無人駅や委託駅の多い飯田線においてもこの駅はJRの駅係員が置かれている……ちなみに、駅舎のすぐ近く(入口正面の上屋の下)には水道の蛇口があり、ここで登山用の水の調達予定(約11リットル)だったものの、春日酒造で仕込み水を汲ませてもらえる可能性も考えて先にそちらへ向かう事に。
その春日酒造は駅からわずかに西側に進んだ所、ほぼ駅構内とも言える所に隣接した踏切を渡ったすぐという所にある。恐らくは駅の改札口から徒歩1分もかからない、極めて駅近な酒造とも言える。

春日酒造の店内へ入ると、人感センサーでピロピロ音が鳴って奥から店員の方が出てきてくれる。酒蔵ではこのタイプも結構多かったり。
店員「いらっしゃいませ。あら山登り?」
犬山「そうなんですよー。それで山の上で飲むお酒を四合瓶で探してて……」
店員「わあ優雅。でしたらよく選ばないとですねー」
実際は麓の標高が低い所からマイナールートに沿って歩き進める泥臭い行程なので、優雅なイメージからはかけ離れていますが。
冷蔵ケースをざっと見回してみると、右下に試飲用のタグが付けられた四合瓶が幾つか。(ちなみに試飲がしたい場合はこちらから申し出るのがセオリー。車で来ている場合も考慮し、基本向こうからは勧められない)
犬山「色々種類があって悩んでしまうんですけど、試飲とかって可能ですか?」と、試飲コーナーのお酒にちらちら視線を遣りつつ、わざとらしく尋ねてみる。
店員「できますよ~、ではお出ししますね」
そう言って店員の方はそこに収まっていた殆どの四合瓶(4種類)を取り出した。その前段階で、どういったお酒が好みですか? と尋ねられて種類を絞られる場合が多いのだけど、ここは全種飲ませる気満々の所だ。肝臓を引き締めて挑む。

並べられた4本の試飲用の四合瓶(一番左は最初は無し)。井乃頭というのがここ春日酒造の昔からのブランドで、それとは別に龍游(RYUYU)というサブブランドがあるという二本柱のラインナップとなっている。
店員「ではまず、一番普通のこれから」
と、【井乃頭 純米 ひとごこち】を注いでもらう……いきなりプラカップ(60ml)の2/3まで注がれるという気前の良さに恐れ慄く。(この後すぐ山登りという事は一時忘れておく事に)
骨太という程ではないものの、酒質はしっかりめ。最初に穏やかな甘味が広がり、ラストでキレが決まるバランスの良いお酒だった。
その次は……と進む前に、店員の方はカウンター奥の蛇口の方へ行き、同じプラカップに水を注いでくれる。もしやこれは。
店員「実際にここで酒造りに使ってる仕込み水です。これを合間に飲んで口をリフレッシュしてもらえれば」
犬山「おお……ありがとうございます。助かります」
この感じだと、仕込み水を水筒に入れてもらう事はできそうだ。登山用の水の調達という問題はとりあえずクリアという事で一安心。(まだこの時点では頼んでないけど、後ほど汲ませて頂いた)
そして次に飲んだのは【井乃頭 純米吟醸 美山錦】。酒質は純米の方とはだいぶ違っており、こちらはかなり線が細く風味も異なる。最初の甘味は控えめなので軽快とも言えるものの、全体的によく洗練された印象を受ける。
店員「それから次はこの龍游ですね。こっちは井乃頭とは少し違いますが、違いは飲んでみれば分かるかなーと」
そう言って【龍游 純米】を注いでもらい一口。先の井乃頭の二種と違って、仄かな酸味が印象的だった。
犬山「井乃頭の方も美味しかったですけど、こちらはこちらで洋食なんかにも合わせやすそうですね。酸味があるのかも?」
店員「でしょう。そう言って頂けると嬉しいです」
的を射た答えだったのかは分からないものの、そういった返事を頂く。
次に注いでもらうのが、この記事の表題にある【龍游 ひとごこち59 無濾過生原酒】。
犬山「これだけラベルが可愛らしいですね」
店員「季節によって変えているんです。春だとチューリップ、秋はトンボみたいに」
夏バージョンのひまわりラベルの瓶をまじまじと注視する。中身が季節によって変わっているかは聞きそびれたけど、後々調べてみるとそれぞれ違っているらしい。
飲んでみると、これも龍游の純米と同様に酸味が印象的……ただ、これはちょっと風味が変わっているような、あまり飲んだ事がないような甘い芳香のようなものがあって個性的に思える。
……という訳で、一通り飲んだ所で4本の中からどれにしようかと悩み始めるのですが、店員の方は「これも飲んでみます? 在庫は無いので試飲だけになるんですか」
と、出してくれたのが5本目である【井乃頭 純米吟醸 袋取り無濾過生しずく】。
犬山「袋吊り……ゴージャスですね」
店員「あんまり本数が無いのですぐ無くなっちゃったんですけど人気なんです。せっかくなのでお試し下さい」
希少かつ高そうなお酒だけど、これも例外なくプラカップの上の方まで注いでくれる。スペックとしては先程飲んだ美山錦の純米吟醸という部分は同じで、それの袋吊りの生酒バージョンという事になりそうだ。
実際味わってみると、その割には先程のさっぱりタイプな純米吟醸とはだいぶ印象が異なり、味に全体的に厚みを感じられる。オリが少なからず入っているからかもしれないが、まるで別種のお酒ような印象を受けた。
さて、番外編を含めて5本を飲んだわけだけど……やはり印象に残ったのは最後に飲んだ袋取りの純米吟醸。ただ、在庫が無い(その上、値段も高そう)なので、4本のうちから選ぶ事に。
ぶっちゃけ、どれもタイプが違っていてどれも美味しかった。井乃頭の二種の甘辛のバランス感も良かったし、龍游の際立った酸も良かった。その中で強いて言えばと言えば龍游の純米だが……味が個性的と言えばひまわりラベルのひとごこち59だろう。全体的にはさっぱり傾向なので、濃くて甘いという説明を受けた信濃錦の艶三郎との差別化もできる。何より、ラベルが夏らしくて良い感じ。(結局ジャケ買いに近い形に)
犬山「じゃあこのひまわりのラベルの龍游を」
そうこうして、春日酒造での短くも充実した試飲会を終えた……しかし、注いでもらう一杯一杯が写真のプラカップの半分を余裕で越える量というサービス振りだったので、試飲と言いつつもトータルだと一合は優に越えてたかも知れない。(60mlカップの3~40mlは入っていた感じだったので)
伊那の2軒目の酒造は伊那市駅の駅裏にある春日酒造。メインの銘柄は井の頭。 pic.twitter.com/nzgw4uCCFL
— 犬山 (@Urayama_City) August 18, 2025
味覚の傾向

前回に引き続き、今回もソロ登山ゆえに自分ひとりでレビューとなります。
先程試飲したので味に関しては既に書いていますが、登山で疲労が溜まっていたりすると試飲の時と比べると甘く感じられるのが変化点。(疲労時に梅干しが甘く感じられるのと同じかも)
ただ、その上でやはり前面に出てくるのが柑橘を思わせるような清涼感のある酸味で、これが終わり際でぎゅっと引き締めてキレを演出してくれるので、食中酒として中々いい感じ。前回の艶三郎は単体でぼーっと景色を眺めながら飲む酒。こちらは食事に合わせて、みたいな棲み分けができていました。
ちなみにですが、銘柄名に特定名称(純米や吟醸といったワード)が付いていませんが、スペック的には純米吟醸無濾過生原酒となる可能性が高そうです。等外米使用という事は無さそうですし。

※数値が高ければ味が優れているという訳ではないのでご注意下さい
料理との組み合わせ

小八郎岳での食事風景。試飲時、洋食に合いそうだと形容したように、お肉との相性は抜群です。左上のチキンジャーキーとは特によく合い、80点の組み合わせ(登山補正あり)。

コンビーフと龍游、信濃錦の2本の飲み比べ。片方を飲み続けるという訳ではなく、大抵の場合では交互に飲んでいた。コンビーフはやはり酸味のある龍游の方がよく合い、80点の組み合わせ(登山補正あり)。

常温でも酸味由来のキレが鋭いですが、帰ってから冷やしてみるとキレが更に鋭利に。これは刺身と合うだろうと思いヒラマサの刺身と合わせてみる……85点の組み合わせ。酸味系で肉類とも良く合うので鶏の唐揚げなんかともよく合い、こちらは80点の組み合わせ。
スペック一覧表
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 蔵元 | 春日酒造(長野県伊那市)→(HPリンク) |
| 使用米 | ひとごこち |
| 精米歩合 | 59% |
| 日本酒度 | 不明 |
| 酸度 | 不明 |
| アルコール度数 | 15度 |
| 種別 | 純米吟醸(生原酒)※特定名称の表記無し |
| 購入価格(税込) | 2,200円(720ml) |
買えるお店の紹介(あれば)
楽天で全く同じスペックのものを扱っているお店がありましたが、正規特約店では無さそう(十四代をプレ値で売っているような所)なので今回は紹介致しません。
ただ、レギュラー銘柄である井乃頭(試飲でも飲んだ美山錦の純米吟醸酒)を扱うショップは楽天にありましたので、そちらを代わりに紹介致します。洗練されていてこちらも中々のお酒でした。
また、春日酒造の公式サイトにオンラインショップ(HPリンク)があり、今回の龍游を含む日本酒が購入可能です。色々な種類の中から選びたい方はそちらの方でどうぞ。
※流通量の少ない地酒なので、品切れ&リンク切れの際はご容赦下さい。
次回のお酒はこちら→『009|辻善兵衛 プレミアムS』
