谷川連峰その2(清水峠→蓬峠→茂倉岳→谷川岳→大障子避難小屋)
前回記事『谷川連峰その1』からの続きです。
この日は清水峠を出発し谷川岳方面へ。七ツ小屋山、蓬峠、武能岳と馬蹄型縦走の後半部を辿っていく。風も完全に凪いでいて前日以上の酷暑で、盛大にバテながらの茂倉岳の400m登り返し。一ノ倉岳、谷川岳と到達する頃にはいよいよ水も尽き始めて天神平からロープウェイでの撤退も視野に入れ始めるも悩んだ末に続行。切羽詰まった状況であったものの、無事に大障子避難小屋の水場に辿り着けて事無きを得ました。
他の日程を見たい方は以下の記事よりリンクを辿って下さい。コース全体の軌跡もこちらに掲載しています。
【2020年6月】谷川連峰登山についての情報と記録 - 山とか酒とか
目次
清水峠→七ツ小屋山→蓬峠
[4:13]清水峠出発
2時過ぎに起床、テントの外に出てみると月がよく見えました。この暗闇の中では前日鬱陶しかったブヨは湧いてないけど、ヘッドライトを点けてると蛾が集ってくる。
夜明けのテント。撤収の準備をしてると次第に東の空が赤みを帯び始めた。
鳥居越しの山々。正面に見えるのは朝日岳~巻機山の稜線上にある柄沢山。
三角屋根のJRの巡視小屋と、これから歩く山々。谷川岳、茂倉岳、武能岳など。
こちらは反対側、昨日歩いてきた朝日岳。まだ薄暗く写真にするとシルエット状態。
巻機山との稜線の間、雪を被った下津川山方面の山が覗いてる。
まずは谷川岳方面に向けて最初のピーク、七ツ小屋山に向けて進んでいく。特に急でもない、寝覚めには丁度いい緩やかな登り坂でした。
横から今日歩く谷川岳方面の稜線が見える。同じ日に歩くとは思えない程にまだ遠い。
上越のマッターホルンこと大源太山も近付いてきた。七ツ小屋山の手前に分岐があり、片道1時間程度で行けるらしいです。余裕があったら寄りたかったけど、思ったよりペースが上がらないので……。
谷川岳、一ノ倉岳、茂倉岳と等間隔に並ぶ山塊。一歩一歩着実に距離を詰めていく。
既に空はもう明るいですが、ここでようやく御来光となりました。
檜倉山の肩から昇ってくる御来光。空気が澄んでる秋冬と違って、この時期の朝日はなんだか朧げで輪郭線がはっきりしない。
徐々に朝日に照らされ始める稜線。正面右奥のピークが七ツ小屋山。
一箇所残雪を乗り越える箇所がある。ちょっと急でしたが区間は短いのでキックステップで対処。
朝日と、それに照らされる七ツ小屋山の山頂。奥には谷川岳。
稜線上にはシラネアオイが咲いてる。程なくして七ツ小屋山の山頂へ。
[5:08-5:19]七ツ小屋山
本日最初のピーク……ここで小休止。朝の5時ながら無風で既に暑いです。
ここも森林限界なので展望は良い。前日はあまりよく見えなかった万太郎山、仙ノ倉山方面の稜線が近付きつつある。
リゾートマンション立ち並ぶ越後湯沢の町並みを俯瞰。
万太郎山、エビス大黒ノ頭、仙ノ倉山、平標山と翌日歩く稜線が全て見える。右側には苗場山。
妙高山や火打山もこの日よく見えた。今年こそ行きたいなー、噴火警戒レベルが上がってしまう前になんとか機会を作りたい。
朝日と朝日岳。他色々の山。
七ツ小屋山以降は暫くの間なだらかな稜線。開放感のある笹原を歩いていく。
七ツ小屋山を見上げる。斜面には残雪がべったりへばり付いてる。
こういう起伏の緩やかな尾根歩きは好き。日を遮るものが無いから暑いけど。
蓬峠までの稜線上の様子。基本的に笹原です。
徐々に近付いてくる谷川岳。近付くと同時に、その標高差の大きさも実感する。
カール状に広がった地形……標高1,500mくらいの山の景色とは思えないな。気候が厳しくて高い木々が育たないんでしょうか。
上越のマッターホルンを反対側から……凄い斜度。鎖場でよじ登る感じらしいけど、一般コースだから普通に行けるらしい。奥には巻機山の大きな山塊。
ゆるゆる下っていくと鞍部の蓬峠に到着。
蓬峠→武能岳→茂倉岳
[5:58-6:01]蓬峠
蓬峠にある蓬ヒュッテからの展望。有人小屋ですがこの日は小屋番は不在でした。テントスペースもあって水場も近いらしい。清水峠よりロケーションは良い気がする。
歩いてきた稜線を振り返る。右奥が歩いてきた七ツ小屋山。
こちらはこれから向かう方面……まず武能岳に登り返します。茂倉岳は手前の武能岳で見えなくなってしまった。
ここも幾つかのピークを越えていく感じ。傾斜は緩めだけど道程は長そう。
歩いてきた稜線と、これから向かう武能岳、茂倉岳。武能岳と茂倉岳の間がだいぶ落ち込んでる……登り返しきつそう。
歩いてきた稜線と朝日岳、清水峠、巻機山方面。尖った大源太山が低いながらも中々の存在感。
[6:56-7:12]武能岳
武能岳に到着。際立ったピークという感じではなく、尾根の途中という雰囲気の山頂。
武能岳から東側の展望。逆光ですが上州武尊山や赤城山などもよく見えました。
七ツ小屋山と清水峠、その奥には下津川山方面。
西側の山々。
こちらはこれから向かう茂倉岳。距離的に近いように見えるものの登り返しが長く、コースタイムで2時間10分もかかる。
茂倉岳の山頂を望遠で。まだ遠い。
鞍部である笹平まで幾つかの起伏を越えながら進んでいく。
武能岳を振り返る。岩肌剥き出しで異様な感じ。蓬峠から見た時とはだいぶ雰囲気も違う。
ハクサンコザクラ、そしてハクサンイチゲ。高山植物の顔ぶれも次第に変わってきた。
笹平付近から武能岳、朝日岳方面の展望。
清水峠方面を望遠で。左に巻機山。中央奥に越後三山の中ノ岳が見える。その右には裏越後三山の荒沢岳……未踏だからいつか行きたいな。
残雪越しに朝日岳……ぐるっと周回してきた事になる。足元にはハクサンイチゲ。
長い長い2時間の登り。日も高くなり、熱暴走でカメラの電源が落ちる程の灼熱地獄。写真で見ると涼しそうなんですけどね。
茂倉岳の肩にある茂倉岳避難小屋が見えました。奥には万太郎山、仙ノ倉山、平標山。だいぶ近付いてきましたね。
茂倉岳直下の急な登り。標高も2000近くなり雪もそこそこ残ってる。
茂倉岳→一ノ倉岳→谷川岳→肩の小屋
[9:10-9:34]茂倉岳
結局ほぼコースタイム通りに茂倉岳に到着。主峰である谷川岳と標高が大して変わらないとあって山頂からの展望はかなり良い。
茂倉岳からの360度展望。ブヨが大量発生していて撮るのに苦労した。というか何箇所か噛まれた。耳の裏とかめんどくさい所を集中的に狙ってくるのが本当に厄介。
一ノ倉岳、谷川岳、オジカ沢ノ頭、万太郎山と並ぶ。右から伸びる道は土樽駅まで続く茂倉新道。
双耳峰の谷川岳を望遠で。左がオキの耳で右がトマの耳。その右側にぽつんと建つ肩の小屋が見える。奥のうっすらした山は赤城山。
一ノ倉岳方面、途中に広がる残雪……雪の上で涼む人の姿が見える。右の写真は巻機山。
清水峠、朝日岳方面。背後には巻機山、越後駒ヶ岳、中ノ岳、平ヶ岳、会津駒ヶ岳、燧ヶ岳と錚々たる面々が見える。
一ノ倉岳方面へ。ハクサンイチゲが至る所で咲いてる。
先程人が歩いていた雪田。思ったより傾斜が緩く普通に登れる。
[9:57-10:00]一ノ倉岳
ここも標高は高いですが、茂倉岳と違い笹に覆われていて展望はそこまででもない。奥に小さな一ノ倉岳避難小屋が見える。
一ノ倉岳避難小屋と朝日岳方面の展望。谷川連峰でよく見かけるかまぼこ型避難小屋の中でも特に小さい。宿泊には厳しい、純粋に緊急時の避難を目的とした小屋。
谷川岳方面へ。殆ど標高も変わらないから楽かなと思いきや、見た感じ難路っぽい。結構降るし岩場もありそう。
シラネアオイ、そして岩登り。
一ノ倉岳を振り返った所、右は谷川岳。暫くの間、痩せ尾根を歩いていく。
ノゾキという看板が立ってました。名前の通り、谷底まで覗き込める箇所がある。落ちたら1000%死ぬ。
ノゾキからの展望。麓まで標高差1,000m以上あるから高度感凄い。吸い込まれそう。
目前に迫った谷川岳。この付近から谷川岳方面から足を伸ばして散策しに来る人と何人かすれ違う。
谷川岳オキの耳と、その直下にある今にも崩れそうな雪庇。
一ノ倉岳、茂倉岳を振り返る。右の雪が先程の雪庇です。
巻機山を眺めながら進む……徐々に岩が増えてきた。
鎖場も偶にあるけど鎖を使わずとも登れる程度のもの。終始よく整備された道でした。
突如として現れた鳥居。ここから先は神域のようです。
なんの神社かなーと思いきや、なんと富士浅間神社……谷川岳は古くから山岳信仰(修験道)の対象であったという事もあり、江戸期に入って当時の沼田城主だった真田氏によって勧請されたらしい。かつてはもっと大規模な社が建っていたらしいですが、今は小さな社が残るのみです。
正面にオキの耳。双耳峰のもう一つピークであるトマの耳は右に見える。
[11:04-11:21]谷川岳(オキの耳)
ようやく谷川岳のオキの耳に到着。ここから一気に人の姿が増えました……と言っても時期を考えると全然少ない方ですけど。
オキの耳からの360度展望。久しぶりに来ましたが、前回来た時は雲が多かったのでだいぶ印象が異なる。
朝日岳、上州武尊山、トマの耳等の山々。上州武尊山の右には前日は見えなかった皇海山が見えている。
山頂を後にして先へ……この辺り虫の量がとんでもなかったです。数秒動かないでいると20匹くらい腕に止まってきます。トンボ早く湧いて来てくれ。
トマの耳への登り返し。両方のピークの往来は10分程ですが、暑くてしんどいので休み休み進む。
先程まで居たオキの耳を振り返る。
[11:35-11:44]谷川岳(トマの耳)
肩の小屋近くのトマの耳に到着。
トマの耳から肩の小屋、そしてこれから向かう予定のオジカ沢ノ頭、万太郎山方面の起伏ある稜線……この景色はなんとなく記憶にある。逆光で見えづらいですが浅間山なんかも辛うじて確認できます。
[11:49-12:53]肩の小屋
トマの耳の直下にある肩の小屋に到着。ここで飲料を補給しようと思っていたのですがコロナで営業自粛中……翌日から再開との事でした。タイミング悪すぎる。
小屋周辺の雰囲気。日が照っていますが風がそよいでいて居心地がいい。ここで1時間くらい先に進むべきかどうか悩みまくる。
進む予定の縦走路。猛暑で水は残り1リットルくらいしかなくなり厳しいけど……残雪もまだ多い時期だからなんとかなるだろうという事で続行。目下は大障子避難小屋の水場を目指す。
肩の小屋→オジカ沢ノ頭→大障子避難小屋
肩の小屋から下っていく。ロープウェイ方面に下っていく人が大半で、こちらに向かう人は殆ど……というか全く居ない。この時間帯だと泊まり前提になっちゃうし。
少し下った所にハクサンイチゲの群生地があります。肩の小屋から見に来てる人が何人かいました。
片道1時間だから大した事ないだろうと思ってたオジカ沢ノ頭……思ったよりきつそう。
斜面に生えるハクサンイチゲ。至る所で花が見られるのも6月登山の魅力。虫が多いのも多少は我慢できる。
道のすぐ脇に雪が残ってる。この雪を掴んで、半分くらい水が入った水筒に突っ込んで嵩増ししました……濾過してないのでほのかに土風味。
この付近で万太郎山方面から歩いてきた人と会ったので大障子避難小屋の水場の状況を聞くも、下って探してみたものの残雪が多くて分からなかったとの事。まあ雪があればいいか。
谷川岳、一ノ倉岳、茂倉岳を振り返る。暑さでペースが相当落ちてる。
オジカ沢ノ頭に近付くと痩せ尾根っぽくなってきた。依然として道は良いけど。
切り立った岩場は直登せずトラバースするので安心。
と思いきや、結局鎖を使って横から尾根上に登ります……登った先に残置されてたメガネが気になった。タオルとか帽子、サングラスの落とし物はたまに見かけますけど、メガネは割とレアアイテムかも。裸眼で下りたのかな。
岩場を登りきった所から谷川岳。あんまり進んでないな。
こちらはオジカ沢ノ頭から南に伸びる俎嵓山稜。道はないけど歩いてみたい雰囲気。
[14:17-14:28]オジカ沢ノ頭
少し遅れてオジカ沢ノ頭に到着。雪溶かしたりしながら歩いてたらやけに時間掛かってしまった。
谷川岳、一ノ倉岳、茂倉岳を振り返る。
これから向かう万太郎山方面。窪地に雪が沢山残ってます。
谷川岳とその望遠。肩の小屋がよく見えます。
山頂のすぐ下にオジカ沢ノ頭避難小屋があります。すぐ近くに残雪あるし、ここで泊まってもいいけど……。
これまでかまぼこ型のものが多かったですが、こちらはおにぎり型。内部は2~3人入れるくらい? 先に進みます。
地形的に四方を山に囲まれて日陰になるからか、この辺りの残雪は他と比べてやけに多い。
良い雰囲気の尾根道。水場があるという大障子避難小屋まで下っていく。
オジカ沢ノ頭を見上げた所。だいぶ下ってきた。
小障子ノ頭……本日ラストのピーク。万太郎山の手前に対となる大障子ノ頭が見える。
この付近もハクサンイチゲの群生地でした。避難小屋そのすぐ奥の鞍部にある。
大障子避難小屋にて(水場探索他)
[15:24]大障子避難小屋到着
まだ15時……時間的には2時間歩いた先の越路避難小屋くらいは行けたような気がしますが、水の補給にも時間かかりますし水満載させたザックで万太郎山越えるのはしんどそうなので、少々早いですが今日はここを宿にします。
内部はこんな感じで、今までの小屋よりはだいぶ広いですです……椅子なんかもあるし。7人くらいは寝られるとの事。
避難小屋からの展望。ロケーションは良い。
水がもう殆ど尽きているので水場探しへ。小屋の手前、南側に笹が刈られて通れるようになっているので、そこから谷側に下っていきます。
下っていくと雪渓に行き着いた。赤テープがあるのでここが道で間違いはないけど……水場なんて見当たらない。さっき会った人は恐らくこの辺りで断念したのでしょう。
耳を澄ませてみると微かに水が流れる音が聞こえてきました。もう少し下ると沢があるのかも……という訳で、アイゼン装備して雪渓から先を進んでみる事に。
少し下った所で雪渓の亀裂を発見しました。下には結構な量の水が流れています……GPSの位置的にも、ここが本来の水場で正しいのかな。
前日の清水峠以来の久々の水補給です。ようやく生きた心地がした。
水場への道のGPSログ……片道10分くらいです。水量は豊富なので枯れる事は無さそう。
水場から谷の方を見下ろした所。
水を補給した後は小屋に帰ります。先程下った雪渓を登っていく……陽光が反射して恐ろしく眩しい。
避難小屋に戻りテントを設営。ここの小屋は他よりも大きく宿泊を宛てにしてくる人も多いので、中で一緒にならないように予めテントを張った……結局誰も来ませんでしたが。
少し登った所からオジカ沢ノ頭方面。左には谷川岳、一ノ倉岳、茂倉岳。
テントからはそのまま茂倉岳、一ノ倉岳が見える。最高すぎるな。
料理するのに丁度いい岩場がすぐ側にあったので、この日はここで食材を広げて夕食。歩いてきた山を眺めながらの飯。
のんびり過ごしていたら日も傾いてきたのでテントに撤収。この日は早々に眠りに就き翌日に備えました。
次回記事『谷川連峰その3』に続く。