2022年8月、頸城山塊から戸隠連峰方面の縦走登山に出掛けてきました。この記事ではその時の情報や記録等を掲載しますので、実際に登る際の参考にして頂ければ幸いです。
目次
- 山域の案内
- 縦走される方向けの案内
- 実際の登山記録
- 頸城山塊から戸隠連峰その1(根知駅→フォッサマグナパーク→雨飾温泉)
- 頸城山塊から戸隠連峰その2(雨飾温泉→雨飾山→笹平→大曲り→茂倉峰)
- 頸城山塊から戸隠連峰その3(茂倉峰→金山→泊岩→新潟焼山→火打山→高谷池ヒュッテ)
- 頸城山塊から戸隠連峰その4(高谷池ヒュッテ→黒沢池ヒュッテ→妙高山往復→黒沢橋)
- 頸城山塊から戸隠連峰その5(黒沢橋→笹ヶ峰→夢見平遊歩道→峰ノ大池→黒姫山)
- 頸城山塊から戸隠連峰その6(黒姫山→古池→戸隠キャンプ場、戸隠観光)
- 頸城山塊から戸隠連峰その7(戸隠キャンプ場→高妻山→乙妻山往復→戸隠山→戸隠神社奥社→戸隠キャンプ場)
- 頸城山塊から戸隠連峰その8(戸隠キャンプ場→瑪瑙山→飯縄山→霊仙寺山→霊仙寺湖)
山域の案内
登山に関する詳細な情報などを記す前に各ピークについての簡単に紹介を行いたいと思います。
表題では『頸城山塊から戸隠連峰』とあたかも山脈が連続しているかのようですが、実際は別個の山域で(厳密には少し離れた所で繋がっていますが)、上越地方を流れる関川の上流部にあたる笹ヶ峰(乙見湖)を境にエリアが分かれており、前半部(雨飾山・金山・新潟焼山・火打山・妙高山)が頸城山塊、後半部(高妻山・戸隠山)が戸隠連峰に属しています。
雨飾山
雨飾山は位置としては頸城山塊の西端にあるピークで、標高は1,963.2m。頸城山塊の主峰としては近辺にある金山や天狗原山といったピークより低いですが、山頂部は俗に猫の耳と呼ばれる双耳峰となっており、その特徴的な山容は遠く離れた山からも視認が可能で標高以上に存在感があります。
登山口から山頂までの登りのコースタイムは4時間程度と日帰りでの登頂も容易。深田久弥著の『日本百名山』に掲載された山の中では比較的登りやすい部類のピークで、雪に閉ざされた冬季以外は百名山踏破目的の方を中心に賑わいます。コース上には沢の渡渉に急峻な岩場、稜線上に上がると一転してなだらかな笹原と、短いながらもバリエーションに富んだ景色が楽しめる事が特徴で、特に秋は紅葉の名所としても知られています。
登山口までの公共交通を使ったアクセス
雨飾山登山において最もポピュラーな登山口は南側の雨飾高原キャンプ場ですが、そこから更に3km(徒歩1時間)麓寄りに位置する雨飾高原バス停と南小谷駅、中土駅を小谷村営バスが結んでいます。平日土日祝日問わず運行されていて本数もそれなりに豊富なので、公共交通を使って雨飾山を登る場合は最も利用しやすいルートです。
北側の登山口となる雨飾温泉(雨飾山荘)の方ですが、こちらは路線バスは存在しないものの雨飾山登山タクシーという登山シーズン時の土日祝日のみ運行される乗合タクシーが存在しており、雨飾温泉と糸魚川駅、根知駅を結んでいます。北陸新幹線利用の場合は便利なルートですが、こちらの乗合タクシーは前日正午まで予約が必要なので利用の際はご注意下さい。
【時刻表】雨飾山・戸倉山登山タクシー(糸魚川駅・根知駅~雨飾温泉)
他には路線バスである頸城自動車糸魚川バスが糸魚川駅、根知駅と雨飾温泉から7km(徒歩2時間半)麓寄りに位置する山口バス停を結んでおり、上記の乗合タクシーが運行されない平日の場合はこちらが最寄りのバス停となります。
【時刻表】頸城自動車糸魚川バス根知線(糸魚川駅・根知駅~山口バス停)
雨飾山から西側に伸びるコースとして大網登山道が存在しますが、こちらは登山口までアクセスする路線バスは存在しないので付近の鉄道駅やバス停から歩く必要があります。その場合、雨飾高原バス停からは10km(徒歩3時間)、平岩駅からは12.5km(3時間半)の行程となります。
金山・新潟焼山
金山と新潟焼山は頸城山塊において雨飾山と火打山を結ぶ稜線上に位置するピークです。経由する縦走路が難路扱いの上に麓から遠く離れた奥深い山域という事もあり、前後の山域と比べると訪れる人は少ないですが、その分静かな山歩きが楽しめるエリアです。
頸城山塊の主峰の中で最も麓から遠いとされる金山は標高2,245m、なだらかで高山植物が豊富な山容が特徴。一方の新潟焼山は標高2,400.3m、国内有数の活火山で荒涼とした風景であり、隣接していながらもその姿形は対照的。登山コースは手強いですが、どちらもそれぞれ魅力のある山岳です。
健脚向きの行程となりますが、金山と新潟焼山どちらも麓からの日帰りピークハントが可能です。特に新潟焼山に関しては300名山にも選定されているので、難路ながらも登頂を目指す人は意外に多いです。
また、この山域を歩く際の最大の注意点として新潟焼山の火山活動があり、活動が活発化した場合は度々周囲の登山道が通行止めとなり、その場合は当然登頂も不可能になります。人の手があまり入っていないコースという事で道の整備状態も年によって異なるので、こちらの山域を歩く際は最新の情報を得るように心掛けましょう。
登山口までの公共交通を使ったアクセス
山深いエリアなので利用可能な公共交通機関は限られるものの幾つか存在します。
金山を南側、天狗原山経由で登る場合、雨飾山へのアクセスでもある雨飾高原バス停が最寄りとなります。その場合、南小谷駅・中土駅から小谷村営バスの利用となります。バス停から金山の登山口まで4km(徒歩1時間半)の距離がありますが十分徒歩圏内でしょう。
金山の登山口まで東側の笹ヶ峰から乙見山峠を越えてアクセスする事も可能です。林道を延々15km(徒歩4時間半)と距離はそれなりにありますが、金山、新潟焼山、火打山の三山を周回する際に歩いたり、デポした自転車で通過したりと意外に利用されているようです。他、新潟焼山を杉ノ沢橋から登る場合もこちらが最寄りのバス停となります。
笹ヶ峰から歩き始める場合、妙高高原駅から頸南バスを笹ヶ峰バス停まで利用する事になります。
【時刻表】頸城自動車頸南バス笹ヶ峰直行バス(妙高高原駅~笹ヶ峰バス停)
新潟焼山を北側から登る場合は糸魚川駅から頸城自動車糸魚川バスを利用、笹倉温泉バス停で下車する事になります。平日土日祝日問わず運行されている上に本数は豊富ですが、バス停から実際の登山口まで8km(徒歩2時間半)と若干距離があります。
【時刻表】頸城自動車糸魚川バス早川線(糸魚川駅~笹倉温泉バス停)
火打山・妙高山
火打山と妙高山は共に深田久弥著の『日本百名山』に名が記されているピークです。頸城山塊の最高峰とされる火打山は標高2,461.7m、山頂部が平坦で付近には池塘や湿原が広がっており穏やかな雰囲気。もう一方の妙高山は標高2,454mで、切り立った火山由来の鋭鋒とそれぞれ対照的な山容です。
後者の妙高山に関しては頸城山塊の東端に位置しているという事もあり、山麓ではスキー場や温泉地といったリゾート開発が盛んに行われており、専らそちらのイメージの方が強い方も多いでしょう。
また、そのシンボリックとも言える山容から古くから山岳信仰の対象とされ、平安時代末期には木曽義仲が阿弥陀三尊像を山頂の阿弥陀堂に奉納したという伝承が存在(阿弥陀三尊像は現在、麓の関山神社に隣接する妙高堂に安置されている)。江戸時代に入ると善光寺を守護する霊山という形で認識されるようになり、なお一層登拝されるようになったとの事。
火打山と妙高山、どちらのピークも麓からは距離や標高差があるものの、稜線上には高谷池ヒュッテ、黒沢池ヒュッテと有人の山小屋が存在しており、登山道に関しても他の百名山並には整備されているので登頂は容易。特に妙高山側は麓の赤倉温泉からロープウェイが営業しているので、利用すれば楽に登る事が可能です。
登山口までの公共交通を使ったアクセス
火打山を単体で登る場合は選択肢が少なく、笹ヶ峰を起点としたものでほぼ一択となります。その際は稜線上にある山小屋にて一泊挟むと更に妙高山まで足を伸ばす事が可能となり、そこからピストンもしくはロープウェイを利用して下山するのがセオリーです。
笹ヶ峰から登る場合は妙高高原駅から頸南バスを利用して笹ヶ峰バス停にて下車する事になります。
【時刻表】頸城自動車頸南バス笹ヶ峰直行バス(妙高高原駅~笹ヶ峰バス停)
頸城山塊の東端に位置する妙高山は麓が近いという事で、幾つかの登山口にアクセスする公共交通機関が存在します。
赤倉温泉からロープウェイの妙高高原スカイケーブルを利用する場合は妙高高原駅から妙高市営バス赤倉線を利用。新赤倉三叉路バス停で下車となります。
燕温泉から北地獄谷経由、関温泉から神奈山経由で登る場合は関山駅から妙高市営バス関・燕温泉線を利用、燕温泉バス停、関温泉バス停がそれぞれ登山口の最寄りとなります。
【時刻表】妙高市営バス関・燕温泉線(関山駅~関温泉・燕温泉)
黒姫山
黒姫山は頸城山塊の妙高山や戸隠連峰の高妻山、同じ北信五岳の飯縄山に挟まれるような形に位置する独立峰で、標高は2,053.4m。その均衡の取れた山容から信濃富士とも呼称されています。百名山の妙高山や高妻山程ではありませんが、こちらは200名山に選定されており、日帰りでの登頂も容易である事から一定の人気がある山岳です。妙高山と同様に山麓にスキーや温泉が存在するので、そうしたイメージが強い人も多いでしょう。
お椀のような形が特徴的の山容ですが、山頂部の外輪山に取り囲まれた火口原は湿地帯が広がっているのが特徴です。湿地帯には峰の大池や七ツ池といった幾つかの池塘が存在しており、季節によっては高山植物の鑑賞も楽しめます。
登山口までの公共交通を使ったアクセス
最も人気のある小泉山道経由で登る場合は牟礼駅もしくは黒姫駅から長野電鉄バスを利用し黒姫高原バス停で下車となります。しかし始発の到着時刻が遅いので登りの際に利用するには向きません。
戸隠高原側から新道、西登山道経由で登り始める場合は長野駅からアルピコ交通戸隠線を利用、戸隠キャンプ場バス停で下車となります。こちらは長野駅と観光地である戸隠高原を結ぶ主要路線なので本数が豊富にあります。
西登山道を笹ヶ峰から夢見平遊歩道経由で登る場合は妙高高原駅から頸南バスを笹ヶ峰バス停まで利用する事になります。
【時刻表】頸城自動車頸南バス笹ヶ峰直行バス(妙高高原駅~笹ヶ峰バス停)
他、表登山道から登る場合は黒姫駅からそのまま登り始める形となります。
高妻山・戸隠山
高妻山と戸隠山は戸隠高原の西部を南北に伸びる戸隠連峰上に位置するピークです。同連峰では最高峰の高妻山は標高2,353mと頸城山塊の主峰に匹敵する高さ。一方で戸隠山は1,904mと2000mには及ばず、周囲の戸隠西岳の方が標高は上です。
高妻山は深田久弥著の『日本百名山』にも記載があり、戸隠高原を取り巻く山々の中では特に人気が高く、百名山踏破目的の方々で季節を問わず賑わいます。しかし登りのコースタイムが5時間近く(笹ヶ峰から火打山を登るものと同等)、標高差もそれなりにあるので日帰り登山としては健脚向けの部類の山です。
また古くから信仰の山とされており、古くからの登山道である沢コースと主稜線の交差点から一不動と始まり、二釈迦、三文殊と高妻山の山頂方面に続いていき、山頂付近の十阿弥陀、乙妻山の山頂に十三虚空蔵と、仏教思想の一つである十三佛に因んで名付けられているのが特徴。
岩屏風とも称される険しい山容が特徴的な戸隠山は200名山に選定。こちらも高妻山と同様かそれ以上に信仰が深い山で、山全体が麓の戸隠神社の神体として崇拝されています。中世以降は特に修験道における道場として賑わったとされています。
現在の登山道はその当時の行場であったという事で道は険しく、岩場や鎖場等といった難所が多く存在。その中でも断崖絶壁の痩せ尾根である『蟻の塔渡り』は滑落事故の頻発する難所として特に知られています。
登山口までの公共交通を使ったアクセス
高妻山に登る場合は弥勒新道、沢コースどちらの経由でも場合も戸隠キャンプ場バス停が最寄りとなります。その場合、長野駅からアルピコ交通戸隠線を利用、戸隠キャンプ場バス停で下車となります。
戸隠山に登る場合も同じ路線で、こちらの場合は途中の戸隠奥社入口バス停で下車となります。
【時刻表】アルピコ交通戸隠線(長野駅~戸隠奥社入口・戸隠キャンプ場)
飯縄山
北信五岳の一つである飯縄山はその中でも最も長野の市街地に近い場所に位置しており、長野市民の山として愛されているピークです。標高は1,917.3mで、一見すると黒姫山と同様に独立峰のようにも見えますが、山頂からは霊仙寺山、瑪瑙山と幾つかのピークに向けて尾根が伸びており、小さいながらも連峰のような形状となっています。
この山も黒姫山や戸隠山と同様に200名山の一つに選定されていますが、北信五岳の他のピークと比較すると市街地からも近く麓からの標高差も小さい、山頂までの所要時間も短いので標高2,000mに迫りながらもハイキングの山として気軽に登られる事が多いようです。また、こちらも古くからの信仰の山のようで、特に南登山道では高妻山と同様に一不動明王から十三虚空蔵菩薩と十三佛に因んだポイントがあり、山頂手前の9合目には神仏習合の神である飯縄大明神が鎮座しています。
登山口までの公共交通を使ったアクセス
山頂までの最短コースである南登山道を利用する場合、長野駅からアルピコ交通戸隠線を利用、飯綱登山口バス停で下車となります。
他、西登山道、瑪瑙山経由で登る場合は同路線の戸隠中社バス停にて下車。瑪瑙山経由の場合は戸隠キャンプ場バス停から登るコースも存在します。
【時刻表】アルピコ交通戸隠線(長野駅~飯綱登山口・戸隠中社・戸隠キャンプ場)
縦走される方向けの案内
実際に頸城山塊や戸隠連峰の縦走登山を行う際に有用そうな情報を纏めておきますので、挑戦したい人は参考にして下さい。
コース状況
薬師尾根(雨飾温泉~雨飾山)
薬師尾根は雨飾山を北側、雨飾温泉から登るコース(一般コース)です。アクセスしやすい雨飾高原から登るルートと比べるとあまり利用されていませんが、一般コース程度には整備されており、全体的に傾斜がやや急峻であるものの特に問題なく歩けました。道中には山頂まで何分……的な指導標も豊富なので安心です。
シゲクラ尾根(雨飾山~大曲り~金山)
シゲクラ尾根は頸城山塊の主稜線上を雨飾山と金山を結んでいる区間(破線コース)です。殆ど稜線上を歩く上によく刈り払われているので道筋は読みやすいものの、足場は均されておらず平坦ではない所が多いです。難路扱いの道にしては歩きやすい方ですが、距離が長いので疲弊しやすい。他、途中の大曲りにはコース上を横切るように水場があります。
金山~富士見峠~泊岩分岐
金山から富士見峠を経由して新潟焼山への取り付きとなる泊岩分岐までの尾根道(破線コース)は道幅が広く取られている上に起伏も少ないので、一般コースと同等くらいには歩きやすい道でした。全体的に視界が開けているので展望も楽しめます。
泊岩分岐~新潟焼山
泊岩分岐から泊岩を経由して新潟焼山に登頂するまでの区間(破線コース)は最初は樹林帯ですが程なくして森林限界を越えて草地の登り坂となりますが、至って普通の登山道。
新潟焼山の火口壁に乗った後は岩場やザレ場を越え、火口壁の上を逆時計周りに進みます。少し分かりづらい箇所はありますがマーキングは豊富なのでそれを追っていけば問題ないです。一箇所だけロープが吊るされた岩場の急登がありますが、区間自体は短い。
新潟焼山~胴抜ヶ切戸~火打山
新潟焼山から鞍部である胴抜ヶ切戸に下り、影火打を経由して火打山まで登り返す区間(破線コース)は2016年3月以降、新潟焼山の火山活動の活発化や登山道の荒廃を理由に通行禁止でしたが、自分が訪れたつい1ヶ月前である2022年7月に解禁されました。
表向きでは通行禁止の区間で大々的な整備は行われていなかったので、全体的に道を覆うように藪が繁茂しています。その上、傾斜が急峻なので全体的に歩きにくいですが、基本尾根筋なので道筋そのものは読みやすく、唯一分かりづらそうな新潟焼山の直下のザレ場にはペンキのマーキングも多い。難路には違いないですが、迷うようなタイプの道ではありません。
火打山~高谷池ヒュッテ~黒沢池ヒュッテ
一般コースです。所々で階段や木道が整備されています。
黒沢池ヒュッテ~大倉乗越~妙高山
こちらも一般コースですが、大倉乗越から長助池分岐までの妙高山の外輪をトラバースする区間は若干荒れ気味です。この区間は特に雪解けが遅く、7月に入っても残雪により通行が困難な場合があるとの事。長助池分岐から妙高山の山頂までは急登ですが至って普通の登山道。
黒沢池ヒュッテ~笹ヶ峰
何の変哲もない登山道(一般コース)です。距離も麓からの標高差はそれなりにあるので余力を持って行きましょう。
笹ヶ峰~夢見平遊歩道~黒姫山西登山口
一般コースです。夢見平遊歩道の南側の休憩施設以降、黒姫山の西登山口までは林道上をひたすら歩きます。
黒姫山西登山道
一般コースですが少し歩きにくく感じた区間。難路という程ではありませんが、大荷物だと岩に閊えてしまう箇所もあるので、その場合は苔生した岩を乗り越えていく必要があります。
黒姫山新道
こちらも一般コース。戸隠高原から黒姫山に登る際のメインルートのようです。西登山道と比べると圧倒的に歩きやすい。
戸隠キャンプ場~高妻山(弥勒新道)
一般コースです。五地蔵山以降は急峻な岩場が連続します。信州山のグレーディングでは星4でそこそこ難路らしいですが、慣れている人であれば特に問題なく歩ける程度です。
高妻山~乙妻山
高妻山と乙妻山を結ぶ区間(破線コース)は一般コースだった高妻山までの区間と比べると若干茂っていて道筋も細いですが、特に問題なく歩けると思われる区間。難路という感じではないです。
五地蔵山~戸隠山
戸隠連峰の尾根上を進む区間(一般コース)。九頭龍山の北側に一箇所だけ長い鎖場がありますが、他は特に問題なく歩けるであろう道。総じて南側に切れ落ちているので、余所見をして歩かないように注意しましょう。
戸隠山~蟻の塔渡り~戸隠神社奥社
頻繁に滑落事故が発生している区間。一般コースですが難所で有名な蟻の塔渡りに加えて垂直に近い鎖場の連続と、内容は若干難路寄りです(難易度は両神山の八丁尾根や八海山の八ツ峰と同程度)。鎖場はこの手の道に慣れている人であれば問題なく歩けますが、蟻の塔渡りは取っ掛かりが無いのでバランスが取りづらい。雨の日の通過は危険なので避けましょう。
戸隠キャンプ場~瑪瑙山~飯綱山
一般コースで終始歩きやすいです。戸隠キャンプ場から瑪瑙山方面に向かう際の登山口は戸隠イースタンキャンプ場の場内の最奥にあります。
飯縄山~霊仙寺山~霊仙寺湖
飯縄山から霊仙寺山までの区間(破線コース)は難路扱いですが、急峻な箇所が僅かに存在する程度なので特に問題無く歩けます。霊仙寺山から麓の霊仙寺湖までは一般コースで歩きやすい。
宿泊について
雨飾温泉(雨飾山荘)
雨飾山、薬師尾根コースの登山口に立地しています。小屋泊の際は混雑時以外は基本個室である等、山小屋というより旅館のような趣きの施設で、登山目的だけではなく秘湯巡り等といった旅行で訪れる人も多いです。キャンプ可(入浴料込み1泊1,500円)。
泊岩
新潟焼山の西側、頸城山塊の稜線上に存在する唯一の避難小屋です。テントが張れそうなスペースは小屋前に数張り、富士見峠に数張りと幾つかあります。8月の盛夏より前の季節であれば、富士見峠~泊岩分岐の区間に残雪があるので水の確保も可能。
高谷池ヒュッテ
高谷池に面した所に立地する有人の山小屋です。頸城山塊の稜線上において、この小屋より西に有人小屋は存在しません。キャンプ可(1泊1,000円)。
黒沢池ヒュッテ
こちらも有人の山小屋。高谷池ヒュッテと比べると規模は小さめですが、水は高谷池よりも澄んでいて美味しい。キャンプ可(1泊1,000円)。
環境省_国立公園へ出かけよう!_妙高戸隠連山_施設紹介_黒沢池ヒュッテ
笹ヶ峰キャンプ場
火打山や妙高山の登山基地となる笹ヶ峰にあるキャンプ場です。広大なスペースがありますが、どちらかというとオートキャンプ主体なので山小屋等と比べると料金設定は少し高め(管理費込み1泊2,100円)。
戸隠キャンプ場
戸隠高原にあるキャンプ場はオートキャンプが主体の所が多いですが、登山者向けに安価な料金を設定している所も幾つかあります(例、戸隠イースタンキャンプ場で1泊800円)。戸隠連峰や黒姫山、飯縄山へのベースとしておすすめ。
水場について
頸城山塊と戸隠連峰のいずれも水場の少ない山域なので幾つか紹介致します。以下はいずれも8月時点での状況で、それ以降の季節となると枯れている恐れがあるのでご注意下さい。
雨飾温泉(雨飾山荘)
雨飾山荘の小屋内でも補給可能な他、テント場にも給水設備があります。
大曲り
コース上を横切るように小さな沢が流れています。水量は意外と豊富なので秋以降も枯れないかも……澄んでいたので濾過しなくても飲めそう(飲んだ)。
富士見平、焼山分岐
コース横に雪渓があります。雪を溶かす手間が必要ですが、この付近では数少ない水を得られる場所。泊岩に宿泊する際は特に重宝するでしょう。しかし8月中旬以降は溶け切ってしまっている事が多いらしいです。
高谷池ヒュッテ
テント場で汲めます。水量は豊富ですが雨が降らない日が続くと枯れてしまうとの事。池の水なので茶色く濁っており水温もなんだかぬるい。そのまま飲むにはキツいので、煮沸はせずとも最低限濾過はした方が良いでしょう。
他、小屋泊の場合は消毒済みの飲料水の提供もあるらしいです。
黒沢池ヒュッテ
小屋前の水道から汲めます。高谷池よりは澄んでおり水温も低い。そのまま飲めそうな感じですが、こちらも池の水なので一応は要煮沸との事。
長助池分岐付近の沢
分岐から若干、大倉乗越側に進んだ所にあります。雪解け水の沢ですが冷えていて美味しい。水量は豊富そうですが、9月以降は枯れてしまうとの事。
黒沢橋
九十九折の十二曲りを下った所にあります。沢水ですが水量が非常に潤沢。上の小屋で汲む水よりは水質は良いでしょう。
笹ヶ峰
近くの公衆トイレやキャンプ場の炊事場に水道設備があります。キャンプ場には自販機もあり。
夢見平遊歩道(夫婦泉)
夢見平遊歩道内の水場。塩ビのパイプに通された湧き水らしい湧き水です。よく冷えていて美味しい。
黒姫山西登山道上
黒姫山の中腹辺りまで沢を何度か横切ります。登りきってしまった後でも峰ノ大池や七ツ池と池塘があるので、切羽詰まった時は濾過なり煮沸なりして使用できます。(実際に使用しました)
戸隠キャンプ場
周囲の山(黒姫山・高妻山・戸隠山・飯縄山)を登る際、沢沿いのコースを通らない限りは水場が存在しないので、登山の際はキャンプ場の炊事場で十分に汲んでから出発しましょう。
実際の登山記録
今回は上記のコースで歩きました。
頸城山塊から戸隠連峰その1(根知駅→フォッサマグナパーク→雨飾温泉)
行程初日は登山ではなく、大糸線の根知駅から雨飾山の登山口となる雨飾温泉までの舗装路歩きが主たる内容。ただ歩くだけではなく、根知駅近辺の糸魚川静岡構造線の断層の露頭が展示されているフォッサマグナパークを見物したり、根知男山の銘柄で有名な渡辺酒造店を巡ったりと半分くらい観光気分で山間に足を進めていく。正午過ぎに歩き始めて日没近くになってようやく到着した雨飾温泉ではアブの大群と格闘しながら露天風呂を堪能。翌日から始まる長い登山に備えて身体を休ませたのでした。
頸城山塊から戸隠連峰その2(雨飾温泉→雨飾山→笹平→大曲り→茂倉峰)
登山の実質的な初日となるこの日は頸城山塊の最西端、猫の耳と呼ばれる双耳峰で有名な雨飾山への登頂がメイン。長丁場を想定して未明から出発したものの、稜線上まで続く薬師尾根の急登はおよそ4ヶ月のブランク明けには厳しく、全くもってペースは上がらない。稜線に乗って笹原を歩く頃にはどこからともなくガスが湧き始めてきて視界ゼロも覚悟しましたが、雨飾山の山頂に到着すると展望を楽しめる程度には雲が流れてくれました。その後は稜線上を笹平の分岐まで引き返し、難路扱いのシゲクラ尾根へ踏み込みます。時間的に金山の山頂までは行けそうな感じでしたが、難路相応にタフな道で酷暑も相まってバテてしまい、途中の茂倉峰付近でこの日は行動終了としました。
頸城山塊から戸隠連峰その3(茂倉峰→金山→泊岩→新潟焼山→火打山→高谷池ヒュッテ)
3日目は引き続き頸城山塊の主稜線上を進んでいきます。前日はなるべく金山まで到達しておきたかったのですが、バテて辿り着けなかったので未明からの早立ち。金山の到着は日の出には間に合いませんでしたが、ガスが上り始める前で展望を楽しむには良い時間帯でした。金山以降はアップダウンが激しかったシゲクラ尾根とは打って変わって平坦で非常に歩きやすい道。しかしそれも束の間、新潟焼山の登り返しは短いながらも急峻で岩場やザレの急登の連続。苦戦しながら登頂したものの途中から濃いガスが上がってきて視界ゼロになり気も滅入る。そこから火打山方面、胴抜ヶ切戸付近は起伏の激しさに加えて水不足も重なり牛歩気味に。ガスで何も見えなかった火打山を乗り越え、宿泊地の高谷池ヒュッテに到着する頃には既にどっぷり日も暮れた時分でした。
頸城山塊から戸隠連峰その4(高谷池ヒュッテ→黒沢池ヒュッテ→妙高山往復→黒沢橋)
この日は妙高山の登頂がメイン。途中の経由地である黒沢池ヒュッテにて荷物の大部分を置いて身軽な状態での往復登山となる為、大荷物に苦しめられた前日までとは一転して気楽な一日でした。高谷池ヒュッテからの出発の時点ではガスが立ち込めていたものの次第に流れていき、黒沢池ヒュッテに着く頃にはすっかり快晴。そのまま身軽になって妙高山を往復。予てから歩きにくいと聞いていた大倉乗越から先のトラバース路も、大荷物でないので特に苦労せず進めました。山頂に到着する頃にはややガスが上がってしまい遠くの山は見えませんでしたが、一応は晴れの中での登頂という事で満足。その後は同じ道を黒沢池ヒュッテに戻って荷物を回収、笹ヶ峰方面に降り、その途中の沢沿いで行動終了としました。
頸城山塊から戸隠連峰その5(黒沢橋→笹ヶ峰→夢見平遊歩道→峰ノ大池→黒姫山)
笹ヶ峰への到着をもって頸城山塊の縦走登山も終えて後半戦へ。天気が悪ければ帰宅する予定でしたが、好天は続きそうな感じだったので予定通り黒姫山を乗り越えて戸隠高原方面に向かう事に。まず笹ヶ峰から南下して乙見湖の湖畔へ進み森林鉄道の軌道跡を利用した夢見平遊歩道、そこから更に林道を延々歩き登山口へ。頸城山塊の縦走も終え以降は難路は無いだろうと考えてましたが、アプローチに利用した黒姫山西登山道は苔むした大岩がゴロゴロしていて予想外に難儀しコースタイムを盛大にオーバー。予定ではこの日のうちに戸隠高原へ下るつもりでしたが、黒姫山の山頂に辿り着く事で精一杯でした。
頸城山塊から戸隠連峰その6(黒姫山→古池→戸隠キャンプ場、戸隠観光)
この日の登山らしい行程と言えば黒姫山から戸隠高原に下るだけで、その後は余った時間で戸隠エリアの観光をするというインターバル的な一日。出発地の黒姫山では日の出も期待しましたがガスが濃くて殆ど見えず、その後麓に下ってもなお山頂は雲の中でした。一方で麓は晴れており、キャンプ場でテントを設営した後は観光一転して観光モード。戸隠と言えば戸隠神社の門前町として栄えた街……という事で先ずは神社巡り、その道中で名物の戸隠蕎麦を食べたり土産にそば饅頭を購入したりと戸隠観光を満喫しました。
頸城山塊から戸隠連峰その7(戸隠キャンプ場→高妻山→乙妻山往復→戸隠山→戸隠神社奥社→戸隠キャンプ場)
ほぼ休養日であった前日の翌日は高妻山の登山をメインとした一日。日帰り登山としてはロングコースですが、この日はキャンプ場に荷物を置いたままで終始軽荷だったのでボーナスステージ的な位置付けの一日でもありました。しかし天気はいまいちで、高妻山の中腹あたりからガスの中、時折雨にも降られる始末。当然、高妻山の山頂やそこから更に足を伸ばした先の乙妻山も視界ゼロ。五地蔵山に戻った後は意地で戸隠山方面に縦走を敢行しましたが、こちらの方は標高が低いという事もあってか展望はそこそこ。戸隠山を乗り越えた後は八方睨から下り利用の蟻の塔渡り。噂通り両側が切れ落ちていて恐怖でしたが、中々スリルがあって楽しくもある。その後も険しい岩場のアスレチックを楽しみながら戸隠神社奥社に下山しました。
頸城山塊から戸隠連峰その8(戸隠キャンプ場→瑪瑙山→飯縄山→霊仙寺山→霊仙寺湖)
最終日は飯縄山を乗り越えて最終目的地である牟礼駅を目指して歩きます。出発時点ではどんよりした空模様でしたが、瑪瑙山に到着する頃には時折青空が見えるように……なったものの、飯縄山の山頂では一転してガスが濃くなり視界ゼロ。しかし、そこから尾根伝いに進んだ先の霊仙寺山では再びガスが流れてくて、前半に歩いた頸城山塊や日本海が見えたりと、最後の最後で展望を楽しむ事が叶いました。霊仙寺山以降は下り一辺倒で、下山した後は霊仙寺湖の日帰り入浴施設に立ち寄る。予定ではそこから更に牟礼駅まで歩き通すつもりでしたが、最近新設されたという路線バスの存在を施設の方に教えて貰い、最後の最後で思わぬ楽ができました。