山とか酒とか

登山やお酒を始めとした趣味全般を雑多に、また個人的に有用だと思った情報を紹介しています。

頸城山塊から戸隠連峰その5(黒沢橋→笹ヶ峰→夢見平遊歩道→峰ノ大池→黒姫山)

頸城山塊の縦走を終え、日程的にも折返しとなるこの日は黒姫山への登頂がメインの一日でした。早朝に笹ヶ峰に下山した後、戸隠高原方面に向かうべく再び山間に分け入って行くものの、西登山道から黒姫山を目指すコースは意外にも険しく……。

頸城山塊から戸隠連峰その4」の続きの記事となります。

inuyamashi.hateblo.jp

他の日程を見たい方は以下の記事よりリンクを辿って下さい。コース全体の軌跡もこちらに掲載しています。

【2022年8月】頸城山塊から戸隠連峰 - 山とか酒とか

目次

今回歩いたルートのGPSログです。

黒沢橋→笹ヶ峰→乙見湖→夢見平遊歩道

[4:20]黒沢橋出発

この日は地味に行程がハードなので未明のうちに出発。まずは麓の笹ヶ峰を目指して下っていきます……しかし前日の内に概ね下りきってしまったようで、木道が敷かれた平坦な道が暫く続く。

笹ヶ峰周辺の遊歩道という扱いなのか幾らか道が交錯しています。

[5:06-5:39]笹ヶ峰

出発から僅か46分で下山となりました。出発時点では暗闇でしたが、降りる頃には5時を回り空も明るくなり始めていた。

登山口はこれからまさに火打山に登り始めるという方で活気付いている時間帯のようで、入口では2020年から制定されたという入域料(入山料)の徴収が行われていました。

さて、一旦は下山したもののここから黒姫山方面に再び登り返す形となりますが、地図を見てみると何だか道が入り組んでいます。笹ヶ峰キャンプ場の場内を通されている遊歩道を乙見湖まで歩いていけば良さそうですが、別の道に入り込んでしまっても面倒だなと思案。

ここは現地の人に聞くのが手っ取り早いだろうと、徴収員の方に乙見湖の湖畔までの道程を尋ねてみました。しかし登山基地である笹ヶ峰をそのまま歩いて横断していく人は相当珍しいのか、最初車で行くルートを案内されてしまう。その後、改めて黒姫山を登る事まで含めて尋ねてみると「え?マジっすか?」みたいな感じのリアクションで驚かれてしまいました。

笹ヶ峰キャンプ場の広い駐車場。これから向かう黒姫山は左側の雲が乗っているピークです……そのまま登り始められる火打山と比べると距離を感じますね。

ちなみに笹ヶ峰とはキャンプ場や牧場、ダム等があるこの一帯(笹ヶ峰高原)の通称ですが、笹ヶ峰という名前通りのピークも西に進んだ所に存在しています。1時間くらいで登る事ができるハイキングとしては手頃な山のようです。

乙見湖の湖畔へ続く遊歩道はキャンプ場内を貫くように伸びているのですが、その管理施設の側に自販機を見つけたのでひと時の贅沢……宿泊地の黒沢橋付近やその前日の高谷池ヒュッテでは電場が通じませんでしたが、ここでは入ったので数日ぶりに天気予報をチェック。

天候悪化となれば朝8時半の始発のバスに乗って帰るつもりでしたが、まだ暫く持ちそうな感じだったので続行としました。

笹ヶ峰キャンプ場の中を通り抜けていく。広々として雰囲気の良いキャンプ場でした。

キャンプ場の場内から乙見湖方面へ続く道。一応は散策路のようですが、あまり歩かれていないのか全体的に茂っていました。蜘蛛の巣に顔面をダイブさせる事も何度か。

暫く樹林帯が続きますが、湖畔が近くなった所で視界が開ける。

付近に信越五岳トレイルランニングコースなる看板が立っていました。野尻湖を挟んで反対側の斑尾山を起点に妙高高原黒姫山戸隠高原飯縄山と巡る総距離163kmにも及ぶコースらしいです……自分のこれからの行程とコースが幾らか重なっているので、この看板は後々ちらほら目にする事になる。

[6:09-6:19]乙見湖

乙見湖の湖畔、笹ヶ峰ダムの天端のたもとの小さな公園のような所に到着しました。この頃になってようやく日が差し込み始めてきた。

広場から乙見湖の様子。水面は波一つなく、鏡面のように青空を映し出している。

少し広い範囲から撮ったもの。左に見えるダムの天端を渡った先に黒姫山の登山口へと続く夢見平遊歩道の入口があります。

ダムの天端は車道と歩道が分かれているので、まず歩道の方に進んでみますが……。

その歩道は恐ろしいまでの幅の狭さ。試しに通ろうとしてみたものの、一歩目から登山ザックが閊えてしまい通れませんでした。

諦めて車道を通行します。まだ朝早い時間帯なので車の通行は皆無でした。

橋の上からの乙見湖。条件が良ければ火打山とか新潟焼山といった頸城山塊の山々も見えるのでしょうが、この日は朝から雲に覆われていた。

フェンスに描かれているのは新潟県の県鳥、トキを元にしたゆるキャラらしいです……そういえばここ新潟県だったなと改めて認識。

天端を渡りきった所。パイロンで封鎖されているトンネルの脇から階段が伸びており、そちらを登っていきます。

遊歩道に続く道にしては傾斜が急峻の上に長い……その右の看板の辺りには古びた階段が草むらに埋もれているのが見えます。昔からある道なんでしょうか。

階段の途中に置かれていた謎のモニュメント。鼻筋通った顔立ちが特徴的。

謎モニュメント付近から乙見湖方面の展望。湖畔を歩いている時には広大な湖に見えていましたが、こうして高い所から見下ろしてみると山間にすっぽりとコンパクトに収まっているかのようにも見える。

夢見平遊歩道→地蔵桂→氷沢橋→黒姫山西登山口

階段を登りきった所から森の中となります。ここから夢見平遊歩道沿いに進んでいきますが、遊歩道だけに道中の案内は充実している。

最初の方で僅かに急登がありますが区間そのものは短いです。

急登の後は傾斜のないフラットな道が続き、池や名木、橋といったチェックポイントらしき所を幾つか越えていく。

夢見平遊歩道は元来この地に存在した御巣鷹森林鉄道という名称の木材輸送用の鉄道路線、所謂森林鉄道の線路の路盤を廃線後に遊歩道として整備したもので、道が平坦なのもそうですが、急なカーブが無かったり、道幅が一定だったりと、昔列車が走っていたような事をなんとなく感じさせるような道でした。

少し離れた所には製材所や住居の跡地など、林業が盛んであった時代の遺構が残っているらしいのですが、まだまだ先が長いので今回は立ち寄らず。

途中の稲荷神社に隣接するミズナラの木。神彦と名付けられており、対となるようにその奥には道姫という木が立っています。

稲荷神社を越えて橋を渡り先へ進む……この道を原木を積んだ列車が往来していた時代もあったのでしょう。

途中の夫婦泉という水場……塩ビのパイプからそれなりの流量の水が流れ出しています。水場らしい水場は雨飾山のキャンプ場以来で、以降は沢の水だったり雪解け水だったり茶色く濁った池の水を濾過したものだったりとアレな感じだったので、久々に飲む湧き水の美味しさに感動。

元々軌道だったというだけあって歩きやすい道ですが、起点から終点までコースタイム1時間半程と距離はそれなりにある。

雰囲気の良い遊歩道ですが、朝方のこの時間帯は鬱蒼とした森の中という事で物凄い量の蚊が飛び交っていました。半袖故に知らぬ間に腕に止まっている事が多いので、10秒に1回腕に視線を落としてチェックしながら進んでいましたが、それでも何度かは餌食に。

[7:54]夢見平遊歩道避難小屋

夢見平遊歩道の終端には避難小屋があります。立派な二階建ての小屋で、比較的最近建てられたばかりのようで綺麗でした……前日、頑張ってここまで歩くのもありだったかなと思ったり。

遊歩道の終端で林道と合流しており、その林道沿いに更に奥へと進んでいきます。その途中、地蔵桂と呼ばれる桂の大樹に向かう分岐が……往復15分程度との事だったので立ち寄ってみました。

[8:11-8:17]地蔵桂

こちらがその地蔵桂です。広々とした所に幹の太い一本の桂の木が根付いており、この付近だけなんだか異質的な空気が流れているような気がします……まるで何者かに見守られているかのようで。

地蔵桂を至近から観察。深く刻まれた皺に無数のコブと、並々ならぬ年月を感じさせる風貌。

根本近くは苔で覆われ、幾つかの植物が蔦を這わせていた。

こちらは地蔵桂のすぐ側にあるヤチダモの木。幹の中央にぽっかりと空いたかのような空洞がある。

古樹見物を終えて先に進みます。湧水が豊富なエリアなのか、林道沿いを歩いている道中、小さな沢を幾度となく目にする。

[8:28-8:46]氷沢橋

林道を下りきった所にあるのが氷沢橋高妻山を源流とする氷沢川を跨いでおり、笹ヶ峰から黒姫山を目指す際においてはここが最低地点。これといって特徴のない小さな橋ですが、新潟県と長野県の県境だったりします。

氷沢橋にて長野県入りしますが、橋を渡って以降は黒姫山の山頂まで延々と登り坂となります。

林道を進んでいくと次第に視界が開けてきました。日が注ぐようになり、これまで格闘しっぱなしだった蚊の姿がめっきり減ったのは僥倖。

林道歩きの様子と、その沿道で咲く花。

黒姫山西登山口→峰ノ大池

[9:56-10:12]黒姫山西登山口

氷沢橋から更に林道を1時間歩いて黒姫山西登山口に到着しました……笹ヶ峰からここまで4時間くらい掛かりましたが、ようやく登山道に入ります。

西登山口から伸びる西登山道は数ある黒姫山のコースの中でもマイナーな方なので多少荒れているものと思っていましたが、入口には立派な案内板が立っており、道もそれなりに踏まれてそうです……先程看板で見掛けたトレランのコースでもあるらしいので、大会に先立って整備されたのでしょうか。

登山道を進んでいく。幾らか笹薮の深い所はあるものの、基本的には明瞭で歩きやすい道が続いています……しかし日が差し込まない所なので問題はやはり蚊とブヨの多さ。

木に飲み込まれつつある火の用心のプレート。

真っ黒なカエルとジャコウソウの花。

初心者マークみたいな落ち葉。展望のない道なので興味が足元の方に向いてしまいがち。

沢を高巻きするような箇所もありますが、よく整備されているので歩きやすいです。

ツヤツヤした赤いキノコ(タマゴタケ)とイボがある茶色いキノコ。季節的なものなのか、タマゴタケは今回の登山では頻繁に見掛けた。

終始鬱蒼とした中での登り。山上の峰ノ大池まで展望はなく、ひたすら森の中を猛進していく。

[11:36-11:50]笹ヶ峰分岐

戸隠方面に続く道の分岐に到着。こちらの道は黒姫山には向かわず、隣の佐渡山との鞍部にああたる大ダルミという湿地を越えて戸隠高原に下るようです。トレランのコースもそちらの方に矢印が向いている。

戸隠の山を登るという目的なので黒姫山の登頂はカットしても良かったのですが、せっかくの機会という事で山頂まで寄り道していく事に……ここからコースタイムで3時間弱なので寄り道という距離ではないですが。

西登山道を進んでいく。分岐から少し歩いた所で見るからに恐ろしい一本橋に遭遇。当然渡れないので、橋の下まで一旦降りてそこから這い上がりました。

色とりどりのカラフルなキノコが足元に多く見られる。

暫くトラバース気味に急登を進んでいきますが、途中から大きな岩が行く手を塞ぐかのようにゴロゴロ……コースは大岩の隙間を縫うように通されているのですが、大荷物であるが故に背中が閊えてコース通りに進む事ができない事がしばしばあり、地味に難儀した区間でした。

場合によっては苔生した岩の上り下りを余儀なくされたりと中々の恐怖。下る際はお尻からずるずると滑って降りた。

岩場の所には天狗岩の看板があります。思わぬ難所に遭遇して手間取りましたが無事通過。ちなみに日帰り用ザックであれば特に苦労せず歩けると思います。

黒姫山の山頂には水場はないだろうと夢見平遊歩道の水場から大量に汲んできたのですが、西登山道のコース上のかなり上の方まで沢を見掛けます……苦労して担いで歩いた意味は無かったかも。

峰ノ大池が近付いてくると幾分か傾斜が緩くなってきました。しかし岩ゴロゴロは後半に差し掛かった頃でも偶に。

サルトリイバラと思われる実。一瞬ぶどうの房に見えた。

道筋は明瞭なので迷う事は無さそうですが、全体的にワイルドなコースでした。

峰ノ大池→七ツ池→黒姫乗越→黒姫山

[14:36-14:47]峰ノ大池

鬱蒼とした森の中を抜けて視界が開けた所が峰ノ大池。外輪山(黒姫山)と火口丘(御巣鷹山)の間に広がる火口原には幾つか池塘がありますが、その中でも規模は最大です。

人気もなく静寂の中の峰ノ大池。水は十分に担いでいますが、料理用に少し足していくのもいいかなと池の水を少々汲んでいきました……土混じりで茶色く濁っているのでそのままでは飲めたものではなさそうですが、濾過した上で煮沸するので問題ないでしょう多分。

峰ノ大池から山頂まで直登する道が伸びています。こちらを進めば山頂まで1時間足らずという所ですが……今回は七ツ池を経由して黒姫乗越から外輪山を端から歩くコースとしました。

分岐から火口原を更に先に進むと再び視界が開ける。一帯は湿原となっており、その中央部には七ツ池と呼ばれる池塘群があります。

[14:51-15:05]七ツ池

七ツ池に到着。7つあるかどうかはありませんが周辺に幾つかの池塘が散在しています……虫も少なく風も凪いでおり景色も良い、長閑でつい長居してしまいそうなる。

池塘越しに火口丘の御巣鷹山(小黒姫山)を見据える。外輪山である黒姫山よりもこちらの方が主峰のように見えなくもなかったり。

こちらは外輪山上、これから向かう黒姫山のピークとその望遠。山頂というだけあって標高はこちらの方が高いです……僅か7mの差ですが。

黒姫乗越方面に少し進んだ所から七ツ池周辺の湿原を見下ろす。四方が山で隔絶されており独特の空気感の場所でした。

七ツ池から先は再び樹林帯に入りますが、山頂を迂回するような形のコースだからかそこまで歩かれている雰囲気ではありません。倒木も多く通過に難儀するような所も。

ほぼ平坦な道ですが黒姫乗越の分岐にて外輪山の終端に乗る為、最後に若干の登りがあります。

[15:43-16:03]黒姫乗越

麓の黒姫高原へと続く小泉山道との分岐である黒姫乗越に到着。辺りは鬱蒼とした原生林という雰囲気です。以降は外輪山に沿って山頂を目指していく形に。

外輪山の上は全体的に木の根が蔓延っていて歩きにくい。大して距離も標高差も無いのに山頂までコースタイム1時間近いのは何故だろうと思っていたのですが、歩いてみて納得でした。

木々が多い中歩いていきますが、偶にそれが途切れてくれて青空が。この日は午後でもガスが上がってきていないようでした。

黒姫駅方面に続く表登山道の分岐に到着しました。表というくらいなので昔からメインで登られているルートなのでしょう……やや距離はありますが、駅から直接歩き始める事ができるという事で、以前こちらの方から登ろうと計画を立てた事もありました。

木々の合間から笹ヶ峰を挟んだ反対側、前日まで歩いていた頸城山塊の山々が見えました。右手前に見えるのが金山、天狗原山で、左側の一際目立つ鋭鋒は今回最初に登った雨飾山です……南側からだとこんな風に尖って見えるんですね。

山頂手前の最後の登り。頸城山塊の縦走を終えてきつい区間は粗方終えたと考えていたのですが……思ったよりもキツい山でした。

黒姫山からの展望

[17:15]黒姫山到着

黒姫山の山頂に到着。中央には山頂看板の鉄板と祠のようなものが置かれていました。山頂広場はそれなりの広さですが、無論こんな時間帯では他に人の姿などある訳もなく……。

さて、時間に余裕があればそのまま麓の戸隠キャンプ場まで下るつもりでしたが、峰ノ大池七ツ池でのんびり景色を眺めながら呆けてしまったという事もあって時間切れ。本日はこの辺で行動終了としました。

山頂からの展望です。雲の量は多いものの、低い所に沈み込んでいるおかげで遠くの山の稜線は見通す事ができます。正面に見えるのが最終日に登る飯縄山、右側に見えるギザギザした山並みはその一日前、翌々日に登る戸隠連峰です。

少し広い範囲から撮ったもの。なんだか岩がゴロゴロした山頂です。外輪山の上という事なので、どれも火山噴出物でしょうか。

一つ前の写真、左側に薄く稜線が見えたので望遠して繋げてみました。草津白根山、御飯岳、破風岳、四阿山と続く信国の山々のようにも見えます。四阿山の右背後には浅間山方面の山が見えますが、肝心の浅間山は雲に埋もれているかで見えませんでした。

南側に移動してみると戸隠連峰の右側、翌々日に登る高妻山乙妻山が見えてきました。高妻山はやはりこの台形状のような形が馴染みがあります。

戸隠連峰戸隠山方面の山々と高妻山を単体で。左のギザギザの最も高い所は戸隠西岳で、主峰とされている戸隠山は一段低く、その左側に見える西岳第一峰(P1)の手前に重なるように見えます。

若干望遠してみたもの。高妻山の前衛、五地蔵山の奥の辺りには薄いながらも北アルプスの稜線が見えていました。方角的に唐松岳と白馬三山の間、不帰嶮辺りでしょうか。

山頂からは北側は鬱蒼としているのでそちらの方面の展望は臨めませんが、なんとかして藪の合間から覗き込むと前日登った妙高山が辛うじて見えました。外輪山、火口丘と2つのピークが並んで見えています。

少し角度に変化を付けると新潟焼山も見える。2日前に登った三角形、キツかったなーという印象しかない。

夕食です。この日のメインはソーセージ焼き……お肉物があるというだけで数段食卓が華やかになる気がします。

今回、長期保存のソーセージというものがあったので試してみました。味はアルトバイエルンとかシャウエッセンみたいな奴と比べると流石に劣りますが、スパイスが効いていて十分美味しい。

こういう時はやっぱりビールが飲みたいなと、そんな事を思いながら日本酒を湛えた猪口を呷り、酔いも宵も深まっていくのでした。

次回記事『頸城山塊から戸隠連峰その6』に続く

inuyamashi.hateblo.jp