飯能アルプスから伊豆ヶ岳(飯能駅→天覧山→天覚山→子ノ権現→伊豆ヶ岳→正丸駅)
2023年3月、飯能アルプスから伊豆ヶ岳方面の日帰り縦走登山に行ってきましたので、その時の情報などを記します。実際に登る際の参考にして頂ければ幸いです。
目次
経緯
シーズン開始直前のトレーニング登山です。あまり日帰りだとかトレーニングだとかの登山の記事は作らないのですが、それまであまり歩いた事がないエリアで存外楽しめたので今回作ってみました。
今回歩いたコース
最高地点の標高が1,000mに満たない低山歩きでしたが、道程は30km近く累計標高差は登り下りそれぞれ2,000mというロングコースでした。
飯能駅→天覧山
西武線を乗り継いで飯能駅に到着。普段であればそのまま電車で秩父方面に向かって少しでも山の方に近付きますが……今回はあくまでトレーニングなので、まだまだ街中とも言えるこの駅から歩き始めとなります。
[5:51]飯能駅出発
駅ビルの飯能駅を出発します。駅前にはこれから向かう飯能アルプス方面も包括した案内図がありますが、序盤の多峯主山までしか記載がない。
飯能の市街地を進んでいく。繁華街のような雰囲気ですが、まだ6時前という事で人通りも疎ら。飯能の街を歩く機会は中々無かったので少し新鮮な気分でした。
途中で西側に折れて飯能銀座商店街に入ると、古びた雰囲気の看板建築の家並みが続いていました。飯能は近隣の青梅等と同様に山際の集散地として発展した町で、特に秩父方面で産出された木材や生糸の取引が盛んであったとされています。
古くから賑わっていた町という事で鉄道の開通も比較的早く、明治時代には馬車鉄道が開通。現在の西武池袋線の前身となる武蔵野鉄道が開通するまで入間川駅(現在の狭山市駅)を結んでいました……そういった解説看板も街中に。
朝方の商店街。意匠を凝らした看板建築の家並みが続く。
ヤマノススメで有名な洋菓子屋、夢彩菓すずき。改装工事中でした。
車通りの多い道に入り、更に西側へと歩いていきます。かつての商家でしょうか、川越辺りで見られそうな土蔵造りの建物も残る。
まだまだ山歩きという雰囲気は微塵も感じられませんが、天覧山や多峯主山といった記載のある登山者向けの案内も。
途中、観音寺の広大な墓地の脇を抜けていく。
[6:13]飯能中央公園
鉄腕アトムの銅像のある飯能中央公園から最初のピークである天覧山に取り付きます。
天覧山の山裾にある能仁寺の入口からあ登山道が伸びています。その入口にはニコニコ池なる池があり、ベンチが置かれていたりとちょっとした公園のようになっていました。
登山……というよりは公園のような雰囲気の天覧山の登山道。入口には妙に立派な杖が置かれていた。
少し登った所で天覧山中段とされる広がりに到着。先程歩いてきた飯能の市街地を見下ろせます。
当時は3月下旬という事でちらほら桜が咲き始めていました。
天覧山中腹の桜の望遠。麓では満開に近い時期ですが、こちらの桜は山に近い所という事もあって見頃は少し先の様子。
山頂手前にある十六羅漢石仏。江戸時代、当時の将軍であった徳川綱吉が大病を患った際、生母の桂昌院の勧めで麓の能仁寺にて病気平癒の祈願が行われ快気と相成った。この石仏はその礼として寄進されたものだという。
岩肌に点在する十六羅漢石仏。徳川綱吉の時代のものですから、作られてからもう300年以上は経過しているという事になる。
少し進んだ先からは白く雪化粧を纏った富士山が見えました。
天覧山山頂手前から飯能の町並みを見下ろす。まだまだ登山というよりはハイキングといった風情。
天覧山→多峯主山→永田台
[6:31-6:40]天覧山
登り始めて20分で最初のピークである天覧山に到着しました……近いですね。ちょっと散歩程度に登れる山が近くにあるというのは羨ましい。
天覧山と言えば個人的にはこの飯能の町にある五十嵐酒造の銘柄のイメージが強いです。割と飲む機会の多いお酒なので、その銘柄の由来となったこの山にも前々から訪れてみたいと思っていました。
天覧山山頂の様子。コンクリートの展望デッキが設けられています。
展望デッキ上からの眺め。富士山から都心方面のビル群と広い範囲の展望が楽しめる。
都心方面の望遠。この日は気温が高くなった所為か若干霞み気味で、そこまで遠くの建物は見えませんでした。
同方面を更に望遠してみたもの。手前にある大きなビルは東飯能駅に隣接する丸広百貨店。
飯能アルプスと呼ばれる山域は天覧山を起点として伸びており、ようやくスタート地点に立ったようなもの。山頂での満喫もそこそこに、次なるピークである多峯主山方面へと向かいます。
多峯主山方面の道。この辺りもまだ登山というよりは公園の散策路のような雰囲気です。
歩きやすい道が続く。朝の散歩で訪れている人の姿が多くありました。
[7:08-7:35]多峯主山
天覧山から30分足らずで多峯主山の山頂に到着。こちらは天覧山よりは山頂という感じがある。
多峯主山から北側の展望。関八州見晴台や武甲山、大持山といった奥武蔵や秩父方面の山々が見えています。
1枚くらいは山名入りを……と思い作ってみました。奥秩父方面は川苔山や蕎麦粒山までかなと思いきや、有間山稜の奥に七跳山、酉谷山といった長沢背稜のピークと思しきものが確認できました。
同方面の望遠。天覚山、大高山、子ノ権現といったこれから歩く稜線もよく見えていますが、最終目的地である伊豆ヶ岳は奥の武甲山と重なってしまっていまいち判別できない。
山頂越しにこれから向かう方面の山々を臨む。山の際という所までニュータウンが造成されている。
こちらは南東側。関東平野や富士山、丹沢といった方面の展望が広がります。先程の天覧山からの展望を更にパノラマにしたような展望でした。
この後の行程の長さを考えるとまだまだ序盤の序盤、引き続き飯能アルプスを進みます。
多峯主山から下りてきた所。GPSの軌跡にも現れていますが、指導標の行き先が永田台や武蔵台といった麓のニュータウンを示しているものが殆どで、どれが飯能アルプスの縦走に繋がるのか一見して分かりづらく、一度違った道に迷い込んでしまいました。
永田台と案内されている道が正解のようで、そちらに進んでいきます。程無くして山脈を跨ぐ舗装路が見えてきました。
永田台通りと名付けられた道に一旦下山。通勤通学時間帯の為か、それなりに車通りが多い。
永田台→久須美坂→東峠→天覚山
[8:07]飯能アルプス永田登山口
多峯主山の登山口から舗装路に沿って僅かに進んだ所、永田台のニュータウンの手前の貯水池近くに飯能アルプス方面の登山口があり、そこから山道に復帰します。
飯能アルプス方面に続く登山道と、奥武蔵ロングトレイルという案内。トレランの大会のコースとなっているようです。
永田台の外周を巻くように伸びる尾根筋を進んでいきます。道端にはドウダンツツジが咲いていました。
住宅地の裏山といった風情の尾根道。地図上では丘の上公園という名が付けられていて、近隣住民の憩いの場となっているようです。
永田台方面に下る道の分岐。先程の天覧山もそうですが、散歩気分で山に入れるというのは羨ましいですね。
道端ではモクレンが満開でした。
上り詰めていくと徐々に樹林帯に入っていく。所々で麓の方が臨めます。
[8:32-8:35]久須美ケルン
坂を登りきった所が久須美ケルンというピーク。その名の通りピーク上にケルンの石積みがあります。
ケルンから少し進んだ所にある東光寺方面への分岐。飯能アルプスはこんな感じの視界のない地味な景色が9割方といった所。
[8:45]久須美山
社が建つ久須美山のピークに到着。
[8:49]久須美坂
久須美山から僅かに下った所で久須美坂の分岐があります。デザイン性ある指導標が目を引く。
ひたすら地味な道を歩いていく。地図には載っていないような細かい登り下りが多く、トレーニングには丁度よいコースでした。
[9:09]釜戸山分岐
釜戸山方面に続くコースの分岐に到着しました。こちらから降りると武蔵横手駅に辿り着くようです。
標高306mらしいです。飯能駅を出発して既に3時間が経過していますが、登り下りが非常に多いので殆ど標高稼げていません。
木々の合間から見えるのは関八州見晴台。こちらは3年前の同じくらいの時期、トレーニングに歩きましたね。
ひたすら地味な登り下りを繰り返す飯能アルプス。修行のような道程。
東峠手前の道の様子。
[9:50]東峠
林道に下った所が東峠。林道を跨いだすぐ反対側には天覚山の案内があり、そちらから取り付きます。
送電鉄塔の巡視路となっているのか、刈り払われて開けた箇所も。
尾根上に乗った地点で90度折れ、以降は再び樹林帯の中の道となります。
送電鉄塔付近からの展望。関八州見晴台等の高麗川を一本挟んだ先の山々が見える。
これまで登ったら下って……という道でしたが、天覚山までは暫くは纏まった登りとなります。
天覚山近くの両峯神社の跡地。石積みの基礎や鬼瓦が残されていました。
天覚山→大高山→前坂→スルギ→子ノ権現
[10:18-10:36]天覚山
両峯神社から少し登った所が天覚山の山頂です。こちらも開けていますが、天覧山や多峯主山と比べると山頂は狭い。
天覚山からの展望。これまでは飯能の裏山のような印象でしたが、ようやく山の中に入ってきたような感じを覚える。
同方面の望遠。都心方面のビル群はすっかり霞んでしまって見えなくなってしまっていました。
右端の目を引くピークは先程、多峯主山からも見えた川苔山です。
近くの木に括り付けられていた謎のフィギュア。赤ら顔に長い鼻に高下駄と天狗のようですが、それ以上の事は分からない。
天覚山で小休止をした後は引き続き飯能アルプスを歩いていきます。もう随分と歩いた気がしますが、ようやくこの日の行程の3分の1を若干越えたかという所なのでまだまだです。
ちょっとだけ岩がちで険しい道になってきました。地味過ぎてややマンネリ気味だったので、こうした道の変化は少し有り難い。
[11:13]吾野ノ頭
吾野ノ頭というピークをそのまま通過。無数にある起伏の一つといった印象でした。
ちなみにこの日はWBCの14年ぶりの日本の優勝が掛かった決勝戦で、スマホで試合経過を眺めながら歩いていました。
この付近では椿がちらほら咲いている。
[11:43-11:49]大高山
大高山に到着。こちらでは樹間からといった程度ですが、少しだけ展望があるので小休止しました。ここで大谷翔平が三振を取った事で勝利し日本のWBC優勝が決定、丁度通りがかった方とその話で盛り上がりました。
小窓のような大高山の山頂からの展望。桜の花が咲いていますが、こちらのものは既に葉桜となりつつある。
痩せ尾根っぽい所を歩いていく箇所も。
再び林道を跨ぐ箇所がありました。そのまま尾根筋を進んでいく。
[12:19]前坂
4方面のコースの交差点となる前坂の分岐に到着。ここから下るコースは吾野駅まで通じているようです。
飯能アルプスの中でも前坂から子ノ権現までは破線コースの扱いですが、下調べした限りでは比較的よく整備された道……という事で引き続き歩いていきます。
前坂から僅かに進んだ所で一旦林道に下ります。飛村という集落の上部に出たようで、周囲はやや開けていて人家もありました。
中央部の看板のある辺りで林道に下ってきました。暫くは林道に沿って歩いていきます。
林道歩きの様子。尾根上を通されたような道ですが、片側が崖となっている箇所も。
その崖からの展望。高麗川の対岸に続く山並みが屏風のように見渡せます。
林道から再び山道に入って暫く歩いた所には社や地蔵が。
登山道の直下には吾野駅に隣接した所にある石灰採掘場があるようで、武甲山にもあるようなダイナマイト発破の注意看板が置かれていました。
更に先に進むと墓地がありました。徒歩でしか来れないような山道ですが、すぐ下の所には栃屋谷という集落があるので、その住人のものでしょうか。定期的に掃除されているのか、雑草はなく綺麗に保たれていました。
[12:58-13:11]板屋ノ頭
更に先に進んだ所にあるピークが栃屋ノ頭。周囲は木々に囲まれていますが、所々で視界があります。
樹間からの展望。先程から見えている高麗川を挟んだ向かい側の稜線で、右の方には先程敷地の際を通過した石灰採掘場が見える。
樹間からはこれから歩いていく尾根筋が見えています。途中、やけに立派なコブが……名前まである。
[13:54]スルギ
スルギの分岐に到着。地図上ではスルギ坂とあり、ここから子ノ権現の参道上にある滝不動までのコースが分岐しているようです。
この付近も破線ですが道は分かりやすく、適当に歩いていても外れる事はありませんでした。
やや開けた所から振り返ると、これまで歩いてきた飯能アルプスの稜線が見えていた。
飯能アルプス方面を望遠で。左奥が大高山、その右奥の突起のようなピークが天覚山といった所。
子ノ権現の駐車場に登り切った所から同方面を振り返る。ここから先は~的な看板を見るに、飯能アルプスという山域はここまでのようです。
子ノ権現→天目指峠→高畑山→伊豆ヶ岳
[14:20-14:41]子ノ権現
駐車場から車道を進んだ所で子ノ権現の境内に入ります。正式な名前は子ノ権現天龍寺で、足腰が強くなるご利益がある……登山趣味の人向けですね。
平安時代の911年創建とされ、江戸中期頃までは出羽三山の一つである羽黒山の末寺という扱いで修験道の色が濃い寺院でしたが、以降は上野の寛永寺の末寺となった。
山岳の寺社でよく見られますが、参道には鳥居が建っていたりと神仏習合の痕跡も残る。
茅葺屋根の建物は子ノ権現の本坊。授与所としてお守り等もこちらで売られている。
こちらは本堂と名物の大わらじ。足腰の神様(仏様)とされる子ノ権現ならではのもので、現在でも履物を奉納して祈願する習慣があるという。
本堂と大わらじ。その背後には巨大な鉄下駄がある……飯能駅から歩き始めて8時間、流石に疲れも溜まってきたのでこの境内で小休止としました。
飯能アルプスの縦走というテーマを終え、以降は伊豆ヶ岳の登山となります。ひとまずは天目指峠を目指して歩いていく。
子ノ権現から少し先に進んだ所にある休憩ポイント。左側の谷筋には豆口山や竹寺方面に続く稜線。そちらの方も結構な人気の登山コースのようです。
更に進んだ所から愛宕山への登り返しとなります。
[14:54]愛宕山
子ノ権現から10分程度で愛宕山の山頂に到着。遠目から子ノ権現と合わせて双耳峰のように見えていた内のもう一つのピークだったりします。
愛宕山から天目指峠まではそこそこ纏まった下りとなります。
道沿いに咲くツツジ。すっかり春とも言える季節感。
[15:20]天目指峠
坂を下りきった所が天目指峠です。既に日没近い時間帯ですが、標高487mのこの場所から850mの伊豆ヶ岳までこの日一番の登り返しとなる。
子ノ権現と伊豆ヶ岳を絡めたコースはハイキングとして定番のようで、難所も殆ど無く歩きやすい道が続く。
天目指峠を出発して暫くした頃の道の様子。再び尾根道のようになってきた。
送電鉄塔の周辺の様子。この付近も広く刈り払われており展望も楽しめる。
送電鉄塔を振り返る。一般的な鉄塔のイメージとはだいぶ変わった形状のものでした。
[16:01-16:16]高畑山
ベンチの置かれた高畑山に到着。木々の合間からは次に向かう古御岳が見えています。
古御岳までの道の様子。この付近から一つ一つのアップダウンが大きくなりつつある。
古御岳手前のちょっとした急登。落ち葉が堆積していて若干登りづらいですが区間は短い。
[16:44-16:50]古御岳
急坂を登りきった所が古御岳の山頂です。本日の最後のピークである伊豆ヶ岳がようやく見えてきました。
古御岳から伊豆ヶ岳までの区間の様子。僅かに下って僅かに登り返す。
伊豆ヶ岳→亀岩→正丸駅
[17:10-17:23]伊豆ヶ岳
日も暮れかかった頃に伊豆ヶ岳の山頂に到着しました……それなりに知られたピークですが初めての登頂。無論、時間帯も時間帯なので他に人の姿はありません。
伊豆ヶ岳の山頂の様子。人気の山なので展望が楽しめる……と実際に登るまで思っていたのですが、意外にも山頂は木々で覆われていて見通しが利きませんでした。
関東ふれあいの道の案内。吾野駅から10kmらしいです……ちなみに今回スタートした飯能駅からは25km弱といった所です。長かった。
日没を迎え、段々と暗くなってきたので足早に下山します。伊豆ヶ岳の山頂直下はそこそこ急峻な下り坂が続く。
坂を下りきった所で下山道の分岐がありましたが……少し先の小高山では展望が楽しめるというので、そこまで歩いてみる事に。
[17:49-17:54]小高山
長岩峠から少し先に進んだ所にある小高山に到着。本日最後のピークとなりました。
こちらも全体的に木が茂っていて展望という程でもないですが、木の枝の隙間からは武川山の北側に位置する二子山が。
長岩峠に戻って正丸駅方面に下山します。途中、亀岩と呼ばれる奇岩の側を通っていく。
[18:25]正丸峠分岐
途中から完全に暗くなりヘッドライト頼りとなりましたが、尾根上から下り始めて30分程度で林道に合流しました。
駅を目指して歩いていく。正丸駅までの舗装路歩きは大した距離ではなく、コースタイムは20分程。
[18:46]正丸駅到着
今回の登山のゴールである正丸駅に到着。西武線の駅と言えばどこも駅員が居るイメージでしたが、つい最近周囲の駅と纏めて無人駅となってしまったようです。
西武線で帰宅します。スタートの飯能駅までこの電車に揺られて40分弱、久々の日帰りトレーニング登山は電車に乗っても結構な距離に感じられました。