2020年12月、秩父山地の大持山から小持山、武甲山方面の登山に行ってきましたので、その時の情報などを記します。実際に登る際の参考にして頂ければ幸いです。
目次
今回登った山についての案内
大持山、小持山、武甲山は山域としては秩父山地(奥秩父山塊)に属するピークで、長沢背稜上の日向沢ノ峰付近から北側に延びている尾根上にそれぞれ位置しています……ですが、どちらかと言うと秩父盆地周辺の山をそのまま指し示す奥武蔵という名称で呼ばれる事の方が多いです。
大持山・小持山は飯能市名栗地区(旧名栗村)と秩父市浦山地区(旧浦山村)の境界上の尾根伝いに位地している山です。西武秩父線の駅からそのまま歩く始める事が可能な伊豆ヶ岳等と比較するとバス利用前提となり若干不便なので、登山者の姿はそこまで多くはなく静かな山歩きを楽しめます。
展望に関しては基本は木々の多い稜線で見通しが利かない所が殆どですが、ポイント的に開けた場所があります。広尾根にぽっかり開いたウノタワ等も含め見所もそれなりに多いですが、尾根上には道筋のはっきりしない急登や露岩を乗り越えるような箇所があったりとそれなりに険しく、ハイキングというよりは登山寄りの山でしょう。
武甲山は言わずと知れた秩父盆地のシンボル的な山で、日本三大夜祭の一つである秩父夜祭で有名な秩父神社において神体として崇められています。標高も1,300mを越えたりと周辺の山よりは高いですが、北側斜面が広大な石灰採掘場と化しており盆地から見上げるかつてのシンボルに旧来の面影はありません。しかし秩父盆地に突き出ている展望台のような立地から眺望は抜群に良く、ややコースは長いながらも登山道も割と整備されている方なので、ハイキングの山として未だ一定の人気があります。
公共交通を利用した登山口までのアクセス
大持山・小持山
ピークの南東にある飯能市名栗地区の名郷バス停を起点として鳥首峠経由、もしくは妻坂峠・ウノタワ経由で登り始めるのが主流です。登山口までのアクセスは西武池袋線飯能駅から国際興業バスで約1時間と若干乗車時間は長いですが、一部時間帯を除いてほぼ毎時一本以上運行されているので使い勝手は良く、路線バスの沿線にはさわらびの湯という日帰り入浴施設もあり登山後の汗を流す事も可能。
西側、浦山地区から登るコースも幾つかありますが、どのコースもあまり整備はされておらずルートファインディング前提となります。小持山までのコースでれば茶平入口もしくは大神楽沢橋バス停。鳥首峠であれば浦山大日堂バス停が登山口の最寄りバス停となります。ただしバスの時刻的に往路での利用は厳しいです。
【時刻表】秩父市営バスぬくもり号(秩父駅・西武秩父駅~浦山大日堂)
ほか横瀬町の一の鳥居から妻坂峠経由で登るコースも人気。こちらは駅から直接登り始めるのでバスの利用はありませんが、駅から登山口まで1時間半~2時間程の舗装路歩きを控えています。
武甲山
西武秩父線の横瀬駅から林立するセメント工場の横を通り一の鳥居経由で登るものと、秩父鉄道の浦山口駅から橋立経由で登るものの二つのコースが主流です。ただしどちらも登山口まで直接アクセスするバスは無く、前者の横瀬駅スタートのコースであれば2時間、後者の浦山口駅スタートであれば1時間程度の舗装路歩きが必要となります。
コースの状況(実際に歩いた区間のみ)
名郷バス停→白岩鉱山跡→鳥首峠
暫くは沢に沿っての舗装路歩き。白岩の石灰鉱山跡の開けた場所に登山口の案内があるのでそこから登山道に取り付きます。白岩の廃村まではかつての生活道路があったり鉱山関係の作業道が横切っていたりと道が交錯していますが、全体的に案内がしっかりしているので気を付けていれば問題なく歩けます。その後鳥首峠まではつづら折りの急登もありますが終始道筋は明瞭。
鳥首峠→大持山→小持山
稜線に上がって以降は基本尾根伝いの道となります。基本的には歩きやすい道ですが所々で傾斜の急な所があったり露岩を乗り越えるような箇所もあります。落ち葉が堆積している季節は道筋が見づらくなるので注意。
小持山→シラジクボ→武甲山
小持山の直下は急坂ですが、その後は緩やかな稜線歩き。鞍部であるシラジクボから武甲山方面の登りは急登で傾斜は急ですが、道自体はよく整備されていて歩きやすい道。
武甲山→橋立鍾乳洞→浦山口駅
特に問題のない道ですが、尾根上からつづら折りを延々と下って降りる道は下山時足に来ます。このコース、昨年林道の路肩が崩落したためつい最近まで通行止めでしたが、今回行った時点では既に解消し問題なく通れるようになっていました。
実際の登山記録
以下、今回のルートです。
経緯
前回の西丹沢登山で今シーズンのテント泊登山を締めくくり、個人的には日帰り登山のシーズン開幕の季節。行ければ隔週くらいで行きたいなという事で手近な山を探す……当初は単独の予定でしたが、母親が秩父方面の山をあまり登った事がないという事で今回パーティを組んでの登山に行ってきました。
行き先は大持山から武甲山までの縦走路。以前にも登った事があり、その時は鳩ノ巣駅から川苔山に登りそのまま尾根伝いに武甲山へ抜けました。ただ人を連れて行くのにそんな独り善がりなロングコースは選べないので、今回は名郷から鳥首峠に登り大持山・小持山・武甲山のみの縦走となりました。
名郷→白岩集落跡→鳥首峠
西武線をあれこれ乗り継いで飯能駅まで向かいます……往路の電車旅はここまでで以降はバス。駅前から湯の沢行きの路線に乗車し旧名栗村方面へ。
[8:00]名郷バス停出発
1時間程のバス旅の末、今回のスタート地点である名郷に到着……平日でしたが自分以外にも登山者が一組いらっしゃいました。
しかし登山においては早立ち至上主義者の自分としては8時のスタートは少し遅く感じる……バスの時刻の都合があるので仕方がないといえばそうなんですが。
バス停周辺の雰囲気。大持山には登った事がありますが名郷を起点とするのは初めてなので少し新鮮味がある……尚、バス停は道路に面してバスポールがあるだけですが何やら工事中。登山の拠点という事もあってか大掛かりに停車場を作っているようです。
バス停付近の公衆トイレに貸出用の杖がぶら下がっていました。名栗の『なぐり』の焼印の押された木のストラップが付いていたりと凝っていますが無料で貸して貰えるとの事……あと決して『殴り杖』ではないので武器に使わないように。
自分は前回へし折ってしまったものとは別のストックを持参で来たのでお世話にはなりませんでした。
山に向かって歩き始めます。雲が多く挙句に雨まで降られた前回とは違い、本日は雲一つ無い好天。自然に足取りも軽くなる。
暫く舗装路上を歩いていきます。途中妻坂峠方面に向かう分岐がある
少し歩くと開けた場所に出ました。白岩の石灰鉱山跡です。
鉱山跡の目前までやってきました。鳥首峠方面の登山道は右側の日陰の辺りから延びています……つい数年前までは巨大な石灰プラントが立ち並んでおり壮観だったらしいのですが、閉山に伴い建物は軒並み撤去されてしまい今ではただの跡地に過ぎません。
[8:45-8:59]鳥首峠登山口
登山口から取り付きます。この上部には廃村マニアに有名な白岩集落があり、入口にはその由緒が書かれていました。
登山道を進み、かつて石灰岩を坑道からトロッコで運搬していたと思われる場所を見下ろす。残念ながら線路はごく一部を除いて撤去されており当時の名残はありません。
登山道を更に進むと廃屋が見えてきます。昭和の中期頃まで炭焼等を生業としていた白岩集落です。民家は幾つか残りますが現在は定住者は無く荒れるに任せています。
白岩の民家。集落内に残る民家の中では比較的後年まで人が住んでいたもののようで状態は良い……と言っても内部は荒らされ放題でしたが。
暫く登山道に並行してモノレールが延びています。みかん畑とかで見かけるタイプのものですが農業用ではなく、集落の上部にある露天掘り採掘場の作業員運搬用に使用されていたものとの事。
やけに年季の入った消火栓。近くに人が住んでいた証拠でもあり、同様にして付近には電柱も残っている。モノレールを潜って先へ。
生活用品が辺りに散乱している一角へ。缶ジュースのラベルもどことなく時代を感じさせるもの。
台所に備え付けられた湯沸かし器等、やけに生活感を感じさせる家屋。離村したのはそこまでの大昔という訳ではなさそうですが、斜面から砂利が流入していて散々な荒れ具合。
集落内の少し開けた場所。上に見える露頭の方で石灰の露天掘りをしていたようです。
少し先に進むと廃屋が幾つか並んでいる。中には完全に倒壊して屋根しか残っていないものもありました。付近にはかつて家屋が建っていた土台と思しき石垣も多く見られ、戸数的にかなり大きな集落であった事が窺えます。
村の鎮守だったと思われる神社。集落の規模から考えると無住化の後に手入れを必要としない小さなものに建て替えられたものと思われます。廃村ではよく見られる流れ。
最も山に近い所にある、集落内でも一際大きな民家。
柱や梁が腐って撓んでいるのでもう数年と持たないような印象を受けます。内部も荒れ放題ですが、その中で仏壇だけ綺麗な状態で残っているのが不思議。
廃村見物を終えたら先に進みます。曇ってたり日が陰ってたりして薄暗いと不気味だと思いますが、この空模様なので明るい雰囲気しかなかった。
トラバース路を延々と進む。人通りも比較的多いコースなのか案内も多く道もよく整備されている。
水場と思われる小さな沢。この季節なので水は細い。
鳥首峠まで樹林帯の中を延々進みます。一見すると晴れてて暖かそうですが、この日は日中でも2℃くらいしかなく稜線上の強風も相まって恐ろしく寒かった。
鳥首峠→ウノタワ→大持山
[10:17-10:40]鳥首峠
つづら折りの急登を登り終えた所にあるのが稜線上の鳥首峠……到着時点で常に西側から強風が吹き付けていて本日一番の寒さ。耳たぶが凍傷になりそうなので思わずフードを被る。
小さな社に奉納されていたのは飯能の銘酒である五十嵐酒造の天覧山。天覧山という名前自体は飯能の市街地のすぐ側にある山から取られています……手軽にハイキングを楽しめる山として有名。
同じメーカーの銘柄としては、首都圏においては特約店向けブランドの五十嵐の方が知られている気がする。いろいろ種類はありますが、飲むなら最初はスタンダードな直汲み純米吟醸がおすすめ。
大持山方面に向けて稜線歩き開始。武甲山まで尾根を外さず歩いていきます。結構アップダウンが大きく斜度のきつい急登も多い。手を使って登り下りした方が楽な場所もしばしば。
先程白岩集落から見上げた露頭を見下ろす形になりました……木々に阻まれていまいちよく分からないですが。
名もなき小ピークを乗り越すと不自然に開けた場所に出ました。かつてはこの辺りに送電用の鉄塔が立っていたらしく、なるほどと頷ける……大持山は手前の山で隠れて見えませんが西側の展望は良いです。
左には酉谷山、七跳山といったピークを始めとした長沢背稜の山々。かなり大きな山塊に見える。
奥秩父方面かなーと思って撮ったもの。実際は核心よりちょっと北側に位地する御座山の辺りでした。
こちらは反対側、東側の稜線。見える視界は狭いですが関東平野方面まで見通せます。
望遠で撮ったもの。平野部手前の稜線は西武秩父線を挟んだ先にある高麗川と越辺川の分水嶺。奥には筑波山の北に位地する加波山も見える。
所々で展望は広がりますが基本は鬱蒼とした稜線。けど日が差し込んでいるので明るい雰囲気。
稜線伝いに北上していきます。左側に見えるのが恐らく大持山。
明るい尾根道。更に先に進んだ所に岩場注意の標柱が。
予告の岩場。傾斜や高度感はそれ程でもないです。
徐々に広尾根っぽい雰囲気になってきました。
[11:28-11:34]ウノタワ
この一帯がウノタワと呼ばれた場所で、広尾根の真ん中にその名の由来を説明する立て札があります。タワとかダオというのは窪地や鞍部を差す旧来の一般名詞なんですが、こことは関係が無いのかな。
樹林帯の中にぽっかりと空いた広場のような場所。寒くない時期であれば昼寝でもしたい雰囲気……寒いので足早に立ち去る。
よく見ると切り込みの浅い二重稜線っぽい所に見えなくもないです。立て札の由来のところにはかつて沼があったとの事ですが。
ウノタワから大持山方面へ登り返します。急な傾斜の登り坂で、堆積した落ち葉で道がよく分からないですが適当に登っていく。
途中東側、関東平野方面に広がる展望地が……5月頃に来た時は展望はそこまででもなかった気がしたこの稜線ですが、この時期だと木の葉も落ちてるからか視界も開けている。
空気も冷たく澄んでいるからか遠くまでよく見えますね。筑波山やスカイツリーも明瞭そのもの。
肉眼でもはっきりと見えるスカイツリー。
稜線上の雰囲気。
最初の急登を登り切ると後は比較的なだらかな稜線歩きとなります。木々も疎らになって再び明るい雰囲気に。
なだらか尾根の様子。一部の急斜面や岩場を除けば基本歩きやすいコースです。
大持山の肩への登り。傾斜こそ急ですが、こちらは落ち葉が積もっていないので歩きやすい。
一際開けた所に出ました。大持山の肩と呼ばれる展望スポットで、山頂よりも視界が開けています。というか山頂は木々に覆われてろくに展望はありません。
開けているのは主に東側の関東平野方面。筑波山から三浦半島辺りまでの広い範囲を見通せる。
そのまま望遠したもの。左手前から中央に掛けて延びているのが、先程も見えた高麗川と越辺川の分水嶺。顔振峠近くの山上集落とか関八州見晴台下の高山不動尊の大きな赤屋根まで見えますね……尾根は平野部近くの日和田山の方まで延々と続いており、今年の春に歩いた尾根道を端から端まで見通せる。
都心方面に絞って更に望遠したもの。東京湾越しに房総半島の低い山や千葉の内房辺りのコンビナート群も見えます。
横浜のみなとみらいとかの辺りを単体で。遠目から見ても目立つランドマークタワーはやはり横浜のランドマーク的存在。
こちらは都心、新宿辺りのビル群とスカイツリー。東京タワーも周囲のビル群に埋もれがちですが中央右辺りに辛うじて見えます。
景色が良いのでつい長居してしまいました。もうなんか登頂した気でいますが、まだ山頂に辿り着いていないという事実……さっさと先に進みましょう。
やけに年季の入った倒木を横目に大持山へ。
大持山→小持山→シラジクボ→武甲山
[12:43-12:46]大持山
少し歩いた所が今回の第一チェックポイントである大持山の山頂です。先程の展望台と違って木々に阻まれ展望は無いに等しい。
山頂の雰囲気。木が多いですが空は広く明るい雰囲気です。
大持山から小持山方面へ。標準コースタイムは40分程度ですが、ここから先は若干険阻な地形となり露岩の痩せ尾根もしばしば通る……この日は平日という事もあって殆ど人と会わない寂しい登山だったのですが、唯一この区間だけ武甲山方面から歩いてきた人と何人かすれ違いました。
途中の展望。手前のピークが妻坂峠を挟んだ先の武川岳で、その右奥には正丸峠や子ノ権現からのハイキングで有名な伊豆ヶ岳。
木々の合間からの展望。程良く展望があり程良く歩きごたえがあって、歩いていて楽しい稜線です。
今度は西側に開けた場所に出ました。奥秩父や両神山、浅間山等の名だたる山々見えます。流石にこちら側は山深い。
望遠で撮ったもの。最も手前の左から中央にかけて見える稜線が長沢背稜で、特に酉谷山の山体は大きい……ちなみに雲取山はその酉谷山のちょうど真裏にあり隠れてしまって見えません。
中央奥に見えるなだらかで大きな山体は和名倉山で、奥秩父最高峰である北奥千丈岳や金峰山はその背後で見えない。和名倉山の右奥には甲武信ヶ岳が付近の木賊山、三宝山のピークと共によく見え、そこから右側には延々と御座山方面に尾根が続いています。その稜線の途中、十文字峠の奥の辺りには八ヶ岳の赤岳と横岳が雲に紛れながらも見えていたり……その右には天狗岳も見えますね。
以降右側は存在感のある両神山と、やや右手前側に剥き出しの岩稜が目立つ二子山、更に右側には御荷鉾山系の山々が見え、奥に雪を被り白くなった浅間山が見える。
魔王でも住んでそうな風情の両神山。同じ秩父市近辺の山という事で近くに見える。
両神山を望遠で撮影したもの。見かける度に久々に登りたいなーと思うんですが、登山口までのアクセス悪い上にコース上岩場が多いので足が遠のきがち。
小持山越しに見える白くなった浅間山……流石に雪が多いですね。麓に見えるのは秩父盆地ではなく旧小鹿野町の市街地。
久々の好天と好展望ではしゃぐ自身の姿。バランス崩して落ちたら間違いなく死ぬ断崖絶壁、生と死の間のような所に立っている。
展望を満喫したら小持山方面へ。途中、武甲山との鞍部越しに榛名山が見えました。
そして行く先にはこれから登る武甲山が。鞍部のシラジクボからの登り返しが結構きつそうに見えますが、標高差は200m少し程度なので大した事ないです。
小持山の山頂付近。道は険しいですが、よく整備されているので歩きやすい尾根道です。振り返れば先程登った大持山……あんまり進んでないな。
[13:41-14:11]小持山
小持山に到着。景色を眺めながら歩いていたら思ったより時間が掛かってしまった。
あと一つ鞍部を挟んだだけと、間近に迫った武甲山。石灰採掘している北側から見ると抉れてて山肌が剥き出しになっていますが、こちら側は依然として山としての体裁を保っており、かつての秩父の名山の面影が垣間見える。
武甲山越しに見える山々。左に榛名山で右に赤城山……は若干雲が多い。麓には高崎や前橋の街並みが広がっています。
小持山の直下のみやや急峻な下り坂がありますが、それを過ぎると武甲山との鞍部であるシラジクボまで緩い下り基調の道となります。
[14:45]シラジクボ
最鞍部であるシラジクボに到着。横瀬町の一の鳥居方面に下山するコースが分岐しているので時間的余裕が無ければここから帰るつもりでしたが、このペースであれば明るい内に武甲山に着けそうなので先に進む事に。
武甲山の急登の最中。斜度はきついですが、これまでの道と比べるとよく踏まれていて歩きやすいです。距離自体も短いので割とすぐに登れてしまう。
浦山口駅・長者屋敷ノ頭方面の分岐に到着しました。武甲山の山頂から直接浦山口方面に下る事はできないので、ここから山頂を往復という形になる。
南側が若干開けていました。最初のチェックポイントである大持山が中央右辺りに見えている。
少し進むと御嶽神社の境内に入ります。山頂の上に建つ神社としてはそこそこ規模が大きい……人気が感じられない事もあって厳かな空気が漂っている。
社殿……と、なんかやけに痩せている狛犬。野生の犬っぽい雰囲気と言われればそんな気がする。
武甲山→橋立→浦山口駅
[15:38-16:14]武甲山
日が落ちる前になんとか武甲山の山頂に到着。標高は1,304mで本日の最高地点。
山頂の雰囲気。石灰採掘の行われている北側のみ展望が開けています。
北側の展望。フェンスで遮られた眼下には秩父盆地が広がっている。横瀬の駅近くに見える三菱マテリアルの巨大な工場も一際目立つ。
望遠で撮ったもの。背後には浅間山や榛名山、赤城山等といった山々が並んでいます。条件が良ければ日光方面の山も見えたのでしょうが、この日は日本海側は大荒れとの事で中央分水嶺に近い山には重い雲が掛かっててろくに見えませんでした。
浅間山~榛名山~赤城山の並びを望遠で。浅間山の右側(四阿山)、浅間隠山の右側(草津白根山)、榛名山の左側(白砂山)等、所々で雪を被った山肌が見えますがピークを特定するまでには至りません。 赤城山も手前の地蔵岳は見えますが最高峰の黒檜山は雲の中に埋もれていました。
榛名山と赤城山をそれぞれ単体で。どちらも群馬県を代表する似たタイプの火山ですが、こうして見比べてみるとだいぶ山の形が違いますね。
浅間山と小鹿野の市街地。浅間山の手前に左右に延びているのが御荷鉾山系。
武甲山の山頂からの両神山は木の枝が邪魔でそこまでよく見えませんでした。
山も良いですが、盆地や周辺の複雑な地形を手に取るように俯瞰できるというのが良いですね。
横瀬の工場から赤城山方面を臨む。左側、秩父盆地内を流れる荒川は狭隘な長瀞の渓谷を通り抜けて関東平野に注ぎ込んでいる。
秩父の市街地と横瀬の駅周辺を望遠で撮ったもの。西武秩父駅の駅舎(というより隣の温泉施設の建物)が目立つ。ちなみに中央右の森が秩父神社で、その更に右の一際大きな建物が秩父鉄道の秩父駅。横瀬駅は工場の左側、車体が幾つか留置されているのが見える車両基地の左側に島ホームが延びている辺り。
山頂を後にします。山頂の東側にも別に展望台がありますが、こちら側はフェンスが高くて見通しはあまり良くない。
神社を通り分岐路まで戻る……夕日に赤く照らされる鳥居が美しい。
御嶽神社周辺の様子。中央奥に神社の社殿があり、その裏が武甲山の山頂といった具合。神社の社殿は昭和中期頃までは武甲山の山頂に建っていましたが、その山頂が石灰採掘によって無くなってしまったので、改めてこの場所に遷座させられたとの事。
浦山口駅方面に下ります。帰り際に大持山の左側に見えた気になる山……山の形的には大岳山っぽいですが?
左に両神山……山頂から下り3時間なので日没は必至。けど日没時の茜がかった空が見られるというのもそれはそれで魅力的。
暮れなずむ空。この日は終始天気が良く満足度の高い登山でした。
見上げれば既に月。夜が始まる。
シルエットと化した長沢背稜の稜線……一度通しで歩いてみたいんですが中々機会に恵まれない。
道は暫く尾根伝いに下っていきますが、途中で南側に折れてつづら折りの斜面を下ります。既に暗闇の中なので間違えないようにと一応注意深く歩いていたんですが、反射板の付けられた指導標のおかげで間違いようがなかった。侵入防止用のロープも張ってあるし。
長いつづら折りの道を経て沢沿いへ。暗闇の中でも歩ける程度には整備された道ですが、橋を渡るのは流石にちょっと怖い。
途中路肩が盛大に崩落している箇所があります。この崩落の所為で橋立コースは暫く歩行も含め全面的に通行止めだったのですが、現在は特に問題なく通れるとの事で比較的歩き慣れているこのコースを下山に選択しました。実際、通行止め等の看板は道中で見かなかったので、ごく最近になって解除されたものと思われます。
帰路
[19:08]浦山口駅到着
舗装路を1時間歩いて秩父鉄道の浦山口駅に到着しました。これにて本日の歩行は終了……ですが電車の本数がやけに少なく寒風の中1時間近く待ちぼうけ。風を遮る待合室も無く。
この辺りの登山の際に何度か利用した事のある駅ですが、見る度にレトロな駅だなと思う。木組みの改札ラッチなんて今時残っている所も少ないです。
夜間無人駅なので暗闇の中、電車が無言のまま入ってきて無言のまま去っていく。利用者が少ない駅なので乗り降りも殆ど無い。なんかディストピア感あるね。
秩父方面に向かいますが影森駅で一旦乗り換え……2駅先で降りるのに1駅先で乗り換えを挟むという中々に効率の悪い移動。その影森で乗り換えた先はジオパークトレインという名のラッピングトレインで、車内外に動物のステッカーが散りばめられていました。
西武秩父駅との乗換駅である御花畑駅で下車……ここは流石に利用者が多い。久々に感じられる人の気配に安堵の一息。
数年ぶりの西武秩父駅……のはずが隣接して延びていた仲見世が消滅していて、なんか知らない場所になってました。かつての仲見世の場所には温泉やフードコート、土産物屋等が入る施設が建っていますが、コロナ時短営業で温泉以外は既にクローズ。駅周辺の人通りも恐ろしく少なく、開いている店は駅前のセブンイレブンのみという物寂しさ。
見た限り2人くらいしか見えなかった乗客を乗せて特急が出発して行きました……恐ろしいまでの空気輸送振りに、新造したばかりの華々しい特急車両もどこか不憫。
秩父市民の心の拠り所でもあった秩父夜祭も今年は中止。インバウンドを当てにしていた観光依存型経済の地方都市は軒並み苦境に立たされている。
終点の池袋まで行くならまだしも、途中の所沢で乗り換えなくてはならないので特急はパス、ガラガラの普通電車で帰るのが黄金パターンです。ボックス座席ですし、このくらい空いていると車内での食事も抵抗がないので良いです。
駅前で唯一営業していたセブンイレブンで調達した夕食でささやかに宴会。武甲正宗のしぼりたて生原酒もそこで売っていた……地酒の季節限定の生原酒をコンビニが販売しているというのはちょっと驚き。本醸造の生原酒なので若干後味にピリッとしたアルコール感がありますが、1,000円強という値段にしてはだいぶ美味しいなと思えた。
飯能、所沢、東村山と乗り継いで中央線沿線へと帰ります。西武線沿線はどうしても乗り換えが多くなるので足が遠のきがち……けど良い山が多いのでまた折を見て行ってみたいなと思います。
尚、今回の記事をもって今年2020年の更新は恐らく最後となります。コロナ騒動も依然として収束の気配が見られませんが、来年も可能な限りコンスタントにお出かけしてその都度記事を作り上げていきたいと思いますので、暇な時にでも見に来て頂けると幸いです。