上信越国境登山その5(鉢山→横手山→草津白根山→草津温泉)
前回記事『上信越国境登山その4』からの続きです。
最終日であり下山日。前日夜に確認した天気予報では絶好という程でもなかったので、志賀高原第二の高峰である横手山に登頂し、渋峠に降りた後は芳ヶ平湿原経由で草津温泉に下山するつもりでした。しかし道中では多少雨に降られる事はあったものの、横手山に到着した頃には天気も好転、当初の予定通り草津白根山方面に向かう事に。渋峠以降は延々6kmの舗装路歩きとなりますが、終始展望が良いので苦にならず歩き通せました。草津白根山の登頂後は殺生河原から下山。土曜日の草津湯畑一帯のコロナ禍という状況を忘れさせる程の賑わい振りには多少慄いたものの、最後の最後に温泉に浸かって身体を癒やす事ができて満足でした。※草津白根山を含む区間は入山規制が解除されるまでの間、公開を見合わせます。
他の日程を見たい方は以下の記事よりリンクを辿って下さい。コース全体の軌跡もこちらに掲載しています。
【2021年6月】上信越国境登山についての情報と記録 - 山とか酒とか
目次
鉢山→横手山
この日は午前中は曇り、もしくは小雨という予報でした。本降りにはならないだろうとの事なので歩行には支障は来さないと思いつつも、天気が悪いと分かるといまいちテンションが乗らない朝。
しかしテントの外に出てみると東の空には朝焼けが広がっていました。前日のようにガスで視界は無いだろうとと考えていたのでちょっと予想外でした。
[4:55]鉢山出発
起床した時点の予定としては、早朝テントでだらだら過ごした後に6時ぐらいに出発、横手山登頂後は渋峠から芳ヶ平湿原方面にのんびりと下山……みたいな感じの流れで企てていました。しかし、もしかすると予報程に天気は崩れないのでは?と思い始め、一応余裕を持って早めに出ておこうと慌ててテントを撤収。なんとか5時前の出発と相成りました。
前日の到着時点ではガスに阻まれて見えなかった横手山の姿です。頭上は雲が覆っているものの高曇り気味なので、山頂に行けば案外展望は良いのではと期待を抱きつつ足を速める。
鉢山から10分程度で草津峠の分岐に到着。かつての旧街道を利用したコースが分岐しており、下ると志賀高原の熊の湯温泉に行き着きます。
ここは明治以降に開通した旧草津街道(草津道)の中央分水嶺越えの峠に当たる場所で、戦前頃までは荷車が通行可能な県道が通されていたとの事です……この付近の峠と言えば、日本の国道最高地点で有名な渋峠が近くにありますが両者は一体どういった関係なのか、気になったので少し調べてみました。
大正時代の地形図です。右下の芳ヶ平(現在の芳ヶ平湿原)から左上の熊ノ湯までの区間は2つの経路が並行していますが、その内渋峠経由の細い道は江戸期以前、善光寺詣での際に利用されていた旧街道との事です。その後明治に入って人々の往来以上に物資の運搬が盛んになった事で、荷車も通行可能な勾配が緩い別経路が新設されました。それが地図上の太い方の街道で、ここ草津峠を経由するものでした。しかし戦時中頃から次第に整備が行われなくなり廃道化。その後、渋峠を経由する道としては昭和40年に志賀草津道路が開通した事で周辺の観光開発が盛んに行われ、渋峠そのものも再び日の目を浴びるようになりましたが、こちらの草津峠はそれとは対照的に主要な道は以降通されず、歴史の一つとして埋もれる事となった訳です。
かつての草津峠は先程の分岐から僅かに横手山方面に進んだ所にあります。戦時中に放棄されたとの事なので廃道となってから70年以上。過去には県道にも指定されていた道が通過していた痕跡があるどころか、そこが峠である事すら判別が難しい程に笹が繁茂していました。
先程の場所は峠であった、つまりは最鞍部。そこから横手山まで400m近い大きめの登り返しとなります。標準コースタイムで1時間半とそこそこですが、朝一番の体力がある内なので余力は十分。まだまだ頑張れる。
正面にはこれから登る横手山。道はちょっと藪がうるさい箇所はありますが、必要程度には刈り払われている。問題なく歩けます。
木々の合間から見えた黄金色の朝焼けと謎の稜線。日光白根山の北側、温泉ヶ岳や根名草山辺りかと思われますが、いまいち決め手に欠ける。
重苦しい雲が広がる北側方面。正面奥には前日往復登山を果たした岩菅山が見えます。周囲の山々の中で一際高く志賀高原のシンボル的存在。
岩菅山を望遠で。起伏が二つ見え、山頂右側のピークが裏岩菅山です。
鬱蒼とした道を進んでいくとスキー場のゲレンデに合流しました。登山道らしい道はこの場所で一旦途切れ、続きはゲレンデの直登になると判断。
ゲレンデ上を横手山方面に進んでいく。並行する登山道があるのかも知れませんが、ゲレンデは山頂から伸びているとの事なので、そのまま辿っていく事に。
この頃からさわさわと雨が降り始める。天気は悪くなる一方かなと思いザックカバーを装着。
天気もいまいちで景色には全く期待できない一日……のつもりでしたが、振り返ったら頸城山塊、高妻山方面の山々が聳えてました。この展望は完全に予想外。早めに出発して良かったね。
ゲレンデ上から見える山々。左から飯綱山、高妻山、黒姫山、金山、妙高山という並びです。前日の岩菅山から距離的に10km近く移動しているので、それぞれの山の印象もだいぶ異なる。
妙高山の左側に見える金山、天狗原山のピークです。前日は見えませんでしたが、左の方の突起が雨飾山。猫の耳と呼ばれる双耳峰のピークが二つとも見えている。
ゲレンデのコースを辿っていく。案外展望が楽しめるという事が分かり、早く山頂にという気持ちが強まりつつある。
少し登った所からの展望、コースの合流点のような所です。角度が変わった事で見える山の顔触れにも変化が。
望遠してみます。高妻山の左側には北アルプス、後立山連峰の稜線。白馬三山から鹿島槍ヶ岳辺りまで鮮明に見えており、所々で陽光を浴びて白く輝いていました。
鹿島槍ヶ岳、五竜岳、唐松岳の後立トリオ。若干暗いですが鹿島槍ヶ岳の右後ろには剱岳も見えますね……美しさを越えて神々しさすら覚える。
山頂に近付くにつれて視界が開けていくので、少し登っては振り返るを繰り返してしまう。つまり中々先に進めないという事。
途中で出くわしたカモシカのお尻です。目が合いカメラを構えた瞬間、素気なく走り去ってしまった。
東に見える山々。鼠色の雲の下には日光連山と思われる稜線と、その間には晴れ間が広がっています。雨脚は着実に弱まりつつありますが、天気は良くなるのか悪くなるのかこの時点では判断がつかない。
スキー場の様子。冬に来ると銀世界という感じで見える景色も随分と違うんでしょうね。一度シーズンに来てみたいですが、志賀草津道路は冬季閉鎖となるので関東方面からだと長野回りになる……ちょっと大掛かりかな。
横手山→渋峠
[6:55-7:06]横手山頂ヒュッテ
緩い傾斜を登っていくと幾つかの建物が立ち並んでいます。この付近が遠くの山々からも見えていた、だだっ広い横手山の山頂のようです。なんか急に高原リゾートみたいな所に来てしまったようで、2,000mを越える山頂とは到底思えない風景が広がる。
山頂は非常に広い。山頂を示す標識はどこに立っているのか、どこが最高地点なのかと彷徨ってしまうレベルの広さ。
横手山の山頂札らしきものを見つけましたが、山頂というムードでは無さそうな一角。GPSを確認してみると、ここから南東方面により標高が上の場所があるので、そちらを目指して移動します。
付近には渋峠方面から伸びているリフトが。その脇には横手山神社の鳥居が立っており、潜った先に進んだ所に建つ神社の場所が最高地点のようです。
ようやく道らしき所に出ました。足元の杭には山頂まで234歩の表記……近いのか遠いのかという感じですが。まあ先程の広場から数分程度の距離です。
山頂方面に続く道、背の低い木々が立ち並んでいる。気付けば頭上には青空が広がり雨も止んでいた。
[7:14-7:40]横手山
神社というよりは祠といった趣ですが横手山神社に到着。ここが横手山の山頂のようです。頭上にはずっしりと雲が滞留していますが、天気は回復傾向のようで時々日差しが差し込むように。
横手山からの展望です。神社が鎮座する最高地点は広々とした山頂の南東端に位置しており、そちらの方面に視界が開けてます。背後が森で360度の展望という訳ではないので開放感はそこまでありませんが、標高が高く遠くの山まで見通せる。
すこし手前に引いて撮ったもの。正面には草津白根山が見え、手前の赤茶けた山が白根山で奥の鬱蒼としたピークが本白根山。草津白根山はそうした一帯の幾つかのピークを包括した総称との事。
遠くに見える山々の望遠です。雲が多いからどうかなと思いきや、この日も富士山の姿が確認できました。前日前々日と比較すると日差しがそこまで強くないので、時間的に逆光気味となっている日光連山や尾瀬方面の山も鮮明に見えている気がします。
山名入りです。これだけ見えてくれれば十分、いや十二分に満足。
一面に広がる雲海の中、列島の島々のように各ピークが顔を出している榛名山。幽玄な雰囲気が漂う。
浅間山から乗鞍岳辺りまでの範囲を望遠で。右側に見える四阿山&根子岳のコンビは岩菅山から見た時は遠目という感じでしたが、知らぬ間に随分と近所になりました。浅間山から篭ノ登山、湯ノ丸山と続く稜線も近くに見える。
山名入りです。前日程くっきりしていませんが八ヶ岳も見えており、蓼科山まで続く稜線が確認できます。その間には微かにですが北岳と甲斐駒ケ岳、仙丈ヶ岳も。
八ヶ岳、南アルプス、蓼科山辺りを望遠してみたもの。仙丈ヶ岳は蓼科山の左側、北横岳の奥辺りに見えます。
こちらは四阿山の単体。まだ本格的に登山を始める前、右も左も分からなかった頃に登った事がある山です。今登ったらまた印象が違うんでしょうね。
次は浅間山から左方向に見える山々の望遠です。奥には奥秩父山塊の稜線が伸びており、少しガスが掛かり気味なものの富士山も確認できる。
山名入りです。麓の雲が低い為か奥秩父山塊は前日よりも広い範囲が見えており、東京の雲取山どころか武甲山?の辺りまで見えています。流石にその付近になると細かいピークが多くて自信が無いですが。
少し位置を変えて草津白根山越しの浅間山、奥秩父山塊。白根山のピークの右下辺りには志賀草津道路(国道292号)が通過しており、日本一標高の高い場所を通る国道として知られている……ちなみに写真で見えている範囲は後程徒歩で通過します。
少し引いて撮ってみた草津白根山。手前の白根山付近は荒涼としていますが、奥に続の本白根山は対照的に木々が茂る緑豊かなピーク。
再び草津白根山方面のパノラマ。写真を撮ったりしている間に雲が幾らか流れてくれたようで、到着時点よりも全体的に明るい雰囲気になりつつある。
尾瀬、日光連山、赤城山方面の望遠です。こちらの稜線も殆どシルエットのように鮮明に見えていて、燧ヶ岳辺りから日光白根山、皇海山、袈裟丸山と関東平野方面に向かって尾根が窄んでいく様子が見える。
山名入りです。左手前には二日目に登った白砂山も見えています。男体山と同じくらいの高さの女峰山は手前に錫ヶ岳がある所為で見えませんが、もしかするとピークの頭の部分くらいは見えているかもしれません。上州武尊山も背後の稜線に重なって若干曖昧ですが、判別できる程度には見えています。
横手山山頂から北アルプス方面。こちら側は木々の切れ目から辛うじてという程度の展望。
北アルプスの山々を望遠で繋げたもの。ゲレンデを登っている途中はよく見えていた後立山連峰ですが、若干雲が掛かってしまっています。しかしそれでも鹿島槍ヶ岳から五竜岳、唐松岳、白馬三山と十分判別可能。他、槍穂の辺りが雲に埋もれているお蔭か一本手前の稜線上である常念岳の存在が際立って見える。
若干引いて盆地である善光寺平を入れてみたパノラマ写真。県都長野の市街地は中央の山麓辺りに見え、その下には左右に横断するように伸びている千曲川が。右手前に見える300名山の笠ヶ岳の険阻な姿も目を引く。
次第に活力が漲りつつある朝日を見上げる。空一面を覆っていた雲も気付けば解れかけていて、後の好天を予感させます。
横手山の山頂を後にします。来たばかりの時はスキー場同然の光景を目の当たりにして拍子抜けしましたが、流石は志賀高原第二の高峰という事で展望自体は素晴らしいものでした。
渋峠方面に向かいます。朝の時点ではそこから芳ヶ平方面に降りてしまおうと考えていたのですが、ここまで天気が回復したとなれば……やはり当初の予定通り草津白根山に行かなくては。
登山道らしき道はありましたが、藪払いがされていない様子だったのでゲレンデをそのまま下っていく事にしました。迷う事は無いですし確実なコースとも言える。
スキー場からの風景。関東平野の上には未だ結構な量の雲が立ち込めていて雲海の状態が続いている。
横手山の山頂からは見えなかった方面の山々が視界に入ったので望遠してみました。リフトの設備が横切っているのがちょっと気になりますが、苗場山から佐武流山、白砂山といった山々が見えます。白砂山の左側、上ノ倉山の右奥辺りには谷川連峰の茂倉岳と一ノ倉岳が頭だけ見え、その奥には会津駒ヶ岳ではないかと思われる稜線が薄いながらも見えます。他、平ヶ岳や越後駒ヶ岳、八海山等、思ったよりも多くの山が見えている。
少し下った所から見えた岩菅山です。右の写真、左の方に見えるのが岩菅山と裏岩菅山、そこから右側、尾根伝いに進んだ先に見えるのが烏帽子岳。
景色を堪能しながら軽快に下っていると、気付けば渋峠が近付いていました。完全にスキー場のゲレンデといった風景。周辺には宿泊施設等が数棟立ち並んでいます。
リフト乗り場の横には雪が残っていました。スキー場のゲレンデとしては日本で最高所にあるという事で営業期間は長く、5月くらいまで滑る事が可能との事。GWも営業しているらしいです。
渋峠→白根火山駐車場
[8:00-8:27]渋峠
渋峠に到着。まだまだ標高2,000mを越える山の上ですが、立派な舗装道路が通過しているというのがなんというか風景的にミスマッチで、ちょっと不思議な印象を覚える。
渋峠付近の様子。道の脇から芳ヶ平方面に下る道も分岐しており、朝の時点ではそちらから下山するつもりでした。
横手山の斜面に整備されているゲレンデの様子。夏山シーズン時は山頂までの間を結んでいる登山リフトが運行しているらしいですが、この6月中旬の時点ではまだ動いていませんでした。冬と夏のちょうど谷間の時期のようです。
バス停も設置されています……が、これから向かう草津白根山方面の路線は諸般の事情で運転見合わせとなっており、利用できるのは志賀高原、湯田中駅方面のみとなります。まあ元々歩いていくつもりだったので確認だけ。
草津白根山の登山口である白根火山駐車場までの間を徒歩で向かいます。国道292号(志賀草津道路)上を6kmくらいの道程ですが、多少起伏があるので1時間半くらいの所要時間と見込んでいました……ちなみにこの道路、付近にある火山の活動次第ですぐ通行止めとなるので実際に通れるかどうかは運次第みたいな所があります。
渋峠から少し先に進んだ所にある国道最高地点。それに因んだモニュメントも建っており、記念撮影で車から降りる人もちらほら。
草津白根山はまだまだ遠いです。赤茶けた白根山のピークの背後辺りに白根火山駐車場があり、そこまで舗装路歩きが続く。
東側の谷間に見えるのが芳ヶ平湿原です。かつてはそこから渋峠、草津峠方面に上信国境を越える主要道である草津道が通されていました。現在は渋峠方面の道は登山道として残るのみで、草津峠方面は道そのものが消失しています。
芳ヶ平湿原を望遠で。湿原というだけあって幾つかの池塘が見えます。キャンプ場もあるとの事で唆られたのですが、 日程的に合わなそうなので今回はスルー。草津白根山の入山規制が解除され、大手を振って登れるようになった頃にでもまた。
遠くに見えていた草津白根山ですが、平坦に近い舗装路上を歩いているだけあって近付くスピードも早いです。
ヘアピンカーブが続く下り坂。この付近は特に景色が良く、路肩に車を止めて景色を眺めている人の姿も。
現在地の標高は2,119mとの事。この日の出発地の鉢山山頂よりも標高はずっと上。
見上げればすっかり晴れ空という感じ。日差しも強まりつつあり既にそこそこの暑さです。
雲海の奥の方に見えた赤城山。雲が上がってきたのか、最高峰の黒檜山以外のピークは飲まれつつある。
荒涼たる白根山のピークが近付いてきました。国道は山頂を経由せず、その山の周囲を回り込むかのように敷設されている……舗装路歩きというと普通だったら気が滅入りますが、ここまで風光明媚だと文句の一つも出てこない。
少し進んでいくと中央分水嶺と刻まれた石碑が。上越国境の三国峠から始まり五日間続けてきた中央分水嶺歩きですが、ここから先は草津白根山方面ではなく万座山、御飯岳方面に伸びている。つまりこの辺でお別れとなる。
尾根の切れ目のような所から東方面の展望。正面に笠ヶ岳のピーク。奥には頸城山塊、高妻山、北アルプスと若干霞みつつも見えています。
少し望遠してみたもの。双耳峰の鹿島槍ヶ岳に不帰キレットと、依然として細かく見えますね。
傾斜自体は大した事は無いのですが、ちょっと長そうな上り坂。この日は土曜日ですが、まだ時間的に早いという事もあってか交通量は少なめです。
少し先に進んだ所から先程と同様の方面。道路さえ視界に入れなければ完全に登山中の風景。
青空とアスファルトのコントラスト。ドライブしたら気持ちいいんだろうなと思いながら、重い荷物を背負って一人歩く。
[9:05]山田峠
中央分水嶺と草津白根山方面に伸びる尾根の分岐となる山田峠に到着。付近には避難小屋が設けられていますが冬季専用で普段は閉鎖されているとの事です。
更に先に進んだ所から歩いてきた道を振り返ってみる。最も左に見えるピークが横手山で、山頂に立ち並ぶヒュッテの建物が確認できます。
絶景の中に通された志賀草津道路とバックに横手山。自動車のCMのロケーションとして使用される事もあるらしいです。(2018年スバルフォレスター等)
着実に遠ざかっていく横手山。正面の谷間の奥には白砂山も見えますが、こちらは最早霞む程の距離。
白根山の直下となる場所には駐車スペースがあります。現行の1/25000地形図にはここから白根山方面に向かって途中まで道が伸びていますが、その方面には立入禁止の札が立っていました。しかし駐車している車が幾つかあるように、それでも登っている人は一定数居るようです。
駐車スペースのちょっと先で西方向に転換します。その為、見える方面も少し変わり御飯岳、四阿山が正面に現れる。
四阿山の左側には中央アルプスの稜線が見えました。岩菅山で見た時とは違って南北に重なっていない為か、中央に熊沢岳、南部に空木岳と並んで見えます。木曽駒ケ岳の左側、尖った形の宝剣岳も微かに確認できる。
少し進んだ所からの展望。この付近は尾根を外れているからか風が通らず特に暑かった。
尾根上を綱渡りするかのように通されている道。奥に見えるのは湯ノ丸山と四阿山。
東側の谷間の様子。眼下の蛇行している道は、少し先の交差点から分岐している万座温泉方面に伸びる道……うねうね具合がまさに峠道といった様相。ちなみにその奥の鬱蒼としたピークが草津白根山の最高峰である本白根山です。
途中、道路工事で片交になってました。自転車の姿は偶に見掛けますが、歩行者は流石に珍しいのか工事のおじさんから声掛けられた。
万座の温泉街が見えてきました……距離は意外に近い様子。バスターミナルもあるので草津温泉に下るよりは早く帰れそうですが、ここまで来たら最後まで予定通りを貫く。
再び道の向きが変わり本白根山が正面に。鬱蒼とした木々に覆われていて、一見すると火山活動盛んな山とは思えないですが。
万座方面に向かう道との交差点です。写真には映っていませんが、そこそこ車通りがありました。
いよいよ近付いてきた本白根山。横手山から見た際は向こうの山のそのまた向こうの山……みたいな途方もない距離感でしたけど、ものの2時間で目の前に迫っていた。
白根火山駐車場近くにある弓池の散策路が見えてきました。入口には特に立入禁止の札は見掛けなかったものの、駐車場が封鎖されているので人の姿は殆ど見られませんでした。
駐車場にあるかまぼこ型のシェルターが見えてきた所。2018年の本白根山の噴火以降、噴石からの避難用に幾つか設置されたものの内の一つ。
白根火山駐車場
[9:48-10:08]白根火山駐車場
白根火山駐車場に到着。一帯は2018年1月を最後に入山規制が続いている為、入口はロープで封鎖されておりアスファルトの劣化が目立っています。この駐車場が再び車で埋まるのは一体いつになるのか……噴火警戒レベルは1に下がった現在でも尚も自治体による規制が行われている為、数ヶ月後なのか数年後なのか全く読めない。まあ早くて来年の春とかでしょう。
駐車場から本白根山手前に立つ逢ノ峰を臨む。駐車場から15分程度で登頂可能なお手軽なピークですが、こちらも規制されています。
弓池の散策路から今度は駐車場、白根山方面を眺めてみる。白根山方面に登る湯釜見学の散策路も左の方から伸びているのが見えますね。ちなみに一人登っていく人の姿がありました。
弓池付近の展望。駐車場には車は停められませんが、路肩に駐車できる程度のスペースがあるので路駐して様子を見に降りてくる人は結構居るようです。
少し先に進んだ所から白根山と駐車場。レストハウスや公衆トイレなんかもありますが、全て封鎖されている。
こちらがレストハウス……長期休業中ですが建物は比較的綺麗に見えます。定期的に修繕されているのでしょうか。
逢ノ峰方面の登山道は写真のように封鎖されていました。一帯は噴火警戒レベル1(火山である事に留意)、即ち立入規制に繋がらないレベルまで低下したものの、依然として自治体による入山規制が続いています……規制の要因となった2018年の噴火により死傷者が出る事態となってしまった為に色々と対策が必要なのかどうかは分かりませんが、当面の間はこのままという事はなんとなく分かります。
以降、殺生河原までの区間は入山規制が解除されるまでの間公開を見合わせます。
殺生河原→草津温泉
[14:27-14:35]殺生河原
激藪漕ぎを終えて殺生河原の分岐に到着。数年間未整備の為に道が非常に曖昧で、特に富貴原ノ池以降はルートファインディングに手間取り標準コースタイムの2倍近く掛かってしまった……ともあれ無事に下れたので良しとしましょう。
硫化水素ガスが噴出を続ける殺生河原の遊歩道を進んでいく。迷い込んだ動物がガスによって命を落とす事からその名が付いたとの事。
荒涼とした風景が広がっています。風向きによってはガスが流れてくるからか、立ち止まらないで下さい的な看板も立てられていました。
ガスが噴出しているポイントを望遠で観察。硫黄と思われる黄色い石が点在しており、何かしらの測定器のようなものも設置されていました。
途中から広々とした河原のような所を進んでいきます。振り返れば本白根山の山頂らしきピークも見えているような気がしますけど……角度的に見えないかな。
登山口の目の前を走る道路は志賀草津道路で白根火山駐車場以来の合流となります。ちなみに冬季はこの付近にある殺生ゲートから先が通行止めとなる。
草津温泉スキー場の青葉山ゲレンデ。その入口付近から再び道路を外れます。ここまで来たら後は大した距離ではないので舗装路を下っても良かったんですけど、土曜日でそこそこの交通量。見通しの悪いヘアピンカーブの連続。フラフラ歩いていると轢かれそうなので、安全の為にも並行している遊歩道を経由する事に。
遊歩道の入口からスキー場の施設を振り返る。本白根山山頂まで向かうロープウェイが廃止され山頂周辺のゲレンデも全て閉鎖されてしまったので、現在ではこのゲレンデがスキー場の最上部となっている。
遊歩道を通って草津温泉に下ります。遊歩道とは名ばかりで、単にスキー場のコースを開放しているだけというもの。とは言え最低限草刈りは行われているようで、歩きやすいかと言われれば歩きやすい方。
遊歩道をひたすら下っていきます。長い下りは何かと痛めやすいので、舗装路を避けられるというだけでも非常に有り難い。
タニウツギかなというもの。標高も大きく下がり、高山植物というよりは山野草に近い植生に変化しつつある。
スキー場の最下部が近付いてきたようでコースの幅も広くなってきた……ちなみに奥に見えるのは榛名山です。初日から最終日までの間、事ある毎に見えていた山。
センターハウスが見えてきました。如何にもスキー場って感じの風景ですが、リフトは動いていない。
ゲレンデの下の方の平坦なエリアはパターゴルフ?場となっていました。邪魔にならないように隅の方を下っていく。
[15:42-15:56]天狗山ゲレンデ
草津温泉スキー場のセンターハウスに到着。登山的にはここで下山という事になりますが、日帰り入浴施設のある湯畑やバスターミナルがある草津温泉の市街地はもう少し歩いた先です。
ここまで来たら休まず一気に歩いてしまおう……と決心するも、駐車場に良さそうな感じのクレープ屋を見つけて即座に崩れる。
登山後の甘味は至高であり至福。思ったよりも早く下山できたので、ここで最後のインターバル的な奴を。
天狗山ゲレンデを後にして市街地の方に向かいます。今でこそゴンドラのないリフトのみの中小スキー場ですが、元々は本白根山の山頂付近から麓まで繋がっている規模の大きいスキー場だっただけに全体的にキャパが大きい作りでした。
市街地に向かって歩いていく。次第にホテルや旅館が犇めき合うように立ち並んでいる様子が視界に入るように。
街中に入りました。ここから先に西の河原という大露天風呂で有名な日帰り入浴施設があるとの事ですが、洗い場がないという致命的な問題が。登山後それは流石にという事で今回は別の場所へ。
西の河原通りを進んでいく……めっちゃ観光地です。草津白根山が入山規制中という事もあって仲間(登山者)の姿は全く見掛けない。中々のアウェー感。
歓楽街的な温泉街には付き物の射的場も見掛けました。ちょっと前まではこういう店って特有の場末感が漂ってましたが、近年になって昭和のレトロ感が見直されるようになってきたからか、どの店もカジュアルな感じで人が入っている様子でした。
湯畑方面に進んでいきます。土産物屋や飲食店等が並んでおり、多くの観光客が行き交っている。
湯畑手前の大きな旅館。近代的なホテルであったり、歴史感じる旅館だったり、日帰り専用の入浴施設だったり、地元民向けの無料の公衆浴場だったりと、温泉一つ取っても実にバリエーション豊かな草津温泉。これまで縁がなく訪れた事が無かったんですが、知らない街を歩くのはやはり楽しい。
草津湯畑→草津温泉駅バスターミナル→帰路
[16:23-18:11]草津湯畑
草津温泉のセンター街でもありシンボルとしても有名な湯畑に到着しました。さっさと温泉に入って汚れた身体を洗い流したい所ですが、その前に周辺の見物を少しだけ。
こちらが有名な湯畑。草津温泉に幾つかある源泉の内の一つである湯畑源泉の温度は52℃と高温ですが、こうして空気に触れさせたり、人の手で湯もみを行ったりする事で適温にまで下げるという方法が伝統的に行われています。とは言え現在では流石に加水して調整している所が大半のようですが。
湯畑周辺の様子。草津温泉の中核とも言える特に人が多いエリアです。旅行は偶に行ってますが、こんな感じの観光地っぽい観光地に来たのは久しぶりのような。
湯畑周辺に限ったとしても何箇所とある入浴施設。どこに入るべきかと暫し悩みましたが、湯畑の一角に構える御座ノ湯に入る事に。無料で入れる公衆浴場も近くにある中、こちらは有料なのでそこまで混雑しておらず気兼ねなく入れました。泉質は草津の源泉らしく強酸性で汗と泥に塗れた身体を隅々まで消毒できた、そんな気がする。
湯上がりに付近にある光泉寺の参道から見下ろす湯畑一帯の風景。ちょっと前に見たブラタモリで同じようなアングルから眺めていたのをふと思い出して登ってみる。
湯畑一帯の様子。初めて来た場所なので、一見して結構混んでるなーという印象を持っていましたが、後に温泉まんじゅうを買ったお店でそんな感じの忌憚なき感想を述べた所、週末の草津でこんなに空いてるなんてとんでもないよ!とのお言葉を頂きました。
コロナ禍の影響で、旅行先の選択としては遠方の観光地を避けて近場に偏重しているようなイメージでしたが、やはり全体的な観光客数としては減少しているようで。
石段を上がりかけたので、折角ですし光泉寺にお参り。由緒としては奈良時代に行基によって建立された薬師堂が発祥とされ、これは草津温泉の起源となる開湯伝説の一つともされています。
寺自体は後に一旦は廃れるも鎌倉期に入って再建し、地頭としてこの一帯の土地の領有を許されたとの事。当時はそれなりの数の僧兵を抱え、南北朝時代には南朝側に付いて合戦に兵を出したりしていたという伝説が残っているようです。
光泉寺の境内です。別段古い建造物はありませんが、漠然と規模の大きなお寺というイメージ。
伽藍の中でも一際目を引くのが茅葺屋根の釈迦堂。江戸中期頃の建築とされる。
湯畑に戻ってきました。流石は一級の温泉地という事で、湯畑の奥の岩間からは相当な湯量の源泉が流れ出している。ボーリング等を除いた自然湧出の温泉では日本一の湧出量で、毎分3万リットルを越える温泉が湯畑を始めとした各源泉に湧出しているとの事。
バス待ちの間、土産物を物色したりして時間を潰す。温泉といえば温泉まんじゅうですが、揚げ饅頭をメインとする店を見つけて小腹を満たす為に購入。
胡麻油の風味香る揚げ饅頭。硫黄の香りと共に、湯畑を眺めながら頂く。
辺りをうろうろとしていたら次第に暗くなってきましたが、人の姿は依然として多い。土曜ですから泊まりという人が多いからでしょうが、自分はそのまま帰宅するつもりなので一足先に後にします……こうして自身の草津温泉初デビューは2時間程度の慌ただしい滞在となりました。
湯畑の先にある滝。源泉の温度を下げるために設けられたという湯畑ですが、湯の花採取も目的の一つであるとされています。
湯畑一帯、賑やかなエリアを離れてバスターミナル方面に向かいます。
[18:17]草津温泉駅バスターミナル到着
草津温泉駅バスターミナルに到着。ここからJRバスに乗車して吾妻線の駅に乗り継ぎます。ちなみにここはバス停にも関わらず駅という名称ですが、これは元来国鉄バスの自動車駅という扱いであった為、営業がJRバスに引き継がれた現在でもそうした名称が名残として残っているという事です。
バス停が何々駅というのは全国的に案外多い名称ですが、この場所と同様に元々国鉄バスのバスターミナルであったバス停だったり、元々鉄道駅があった所が廃止されて廃止代替バスに駅の名称が残っているというケースだったりと理由は様々。
バスは吾妻線の長野原草津口駅まで向かいますが、敢えて途中のバス停で降りて一つ手前の群馬大津駅から乗る事に……特に意味は無いですが。
堂西のバス停を降りて群馬大津駅まで向かいます。徒歩数分程度で十分乗り継ぎは可能。
群馬大津駅はホーム一本のみの無人駅でした……ですが、電化され架線が張られているというだけでなんとなく垢抜けたような雰囲気がある。
辺りが薄暗くなってきた頃に電車が入ってきました。非日常から日常への運搬を担う者。
吾妻線の電車の車内。乗客は殆ど居らず空気輸送状態で、途中の長野原草津口や中之条で多少乗ってきた程度でした。
途中の川原湯温泉駅で列車の交換待ち。川原湯温泉といえば近年開発された八ッ場ダムに水没した温泉地として知られており、この駅も元来あった場所とは全く別の所に移設されました。自分は一度沈む前に訪れた事があり、日帰り入浴施設であった玉湯(現在移転して営業されています)に入った事があります。
新前橋、高崎と乗り継いでいく。ちょっと前までは上越線や吾妻線の電車は全列車高崎駅に乗り入れてたんですけど、近年のダイヤ改正で幾つかの列車が新前橋止まりになって乗り継ぎが必要に。地味に面倒なんですよね。
いつもの八高線へ乗り込み群馬藤岡駅で大勢の降車客を見送った後、ガラガラの車内で電車酒です。しかし往路同様だるま弁当を入手できなかったので、乾き物をつまみにささやかに飲む程度。コロナ禍ですし慎ましやかに。
帰宅後、今回のお土産の品々です。草津に行ったら温泉饅頭買わなければという事で買ったものと、あと鉢山の手前で大量に採ってきたネマガリタケ。帰宅後はすぐに水煮にして皮を剥いたりして保存。その後は煮物にしたり味噌汁に入れたりで一週間くらい掛けて消費されました。