天守山地から御坂山地その4(精進峠→三方分山→王岳→鬼ヶ岳→節刀ヶ岳)
前回記事『天守山地から御坂山地その3』からの続きです。
四日目は御坂山地をひたすら東進する一日でした。前日足を止めた精進峠を出発してからは精進山、三方分山へ登り返す。そこから一旦女坂峠に下り、今回の行程中では地蔵峠に次ぐ二度目の水汲み。降りて水を汲んで登ってと、やはりなんだかんだで一時間掛かった後、今回で最も大きく長い王岳への登り返しとなり、その後は稜線上を鍵掛、鬼ヶ岳と経由し、節刀ヶ岳で夕焼けを見物している間に暗くなり行動終了となりました。
他の日程を見たい方は以下の記事よりリンクを辿って下さい。コース全体の軌跡もこちらに掲載しています。
【2021年11月】天守山地から御坂山地、情報と記録 - 山とか酒とか
目次
精進峠→三方分山→女坂峠(水汲み)
[4:22]精進峠出発
出発に向けた身支度をしている最中、妙に明るいなと見上げてみると均衡の取れた円形が浮かんでいました……長い日数を掛けて縦走する登山スタイルとなって以来、満月を見る機会が増えた気がします。
さて、この日は女坂峠での水の補給というミッションを控えているので、行程中で一番の早立ちとなりました。
まだまだ夜の延長とも言うべき時間帯。暗闇の中をヘッドライトの灯りを頼りに進んでいく。
[4:59]精進山
そこそこ纏まった登り坂を進み、三方分山の手前、地図上に精進山と記載されたピーク上に到着しました。殆ど登山道と途中といった雰囲気で看板とかは無さそうだなと辺りを窺うと、木に巻かれた赤テープに山名の記載がありました。これは日中だと却って気付かないかも。
[5:10-5:16]三方分山
精進山以降は緩い登り下りとなり、10分程進んだ所が三方分山の山頂となります。この付近の山域においては要衝となるピークのようで、立派な山頂看板が設置されている。
展望の見えない時間帯なのでそのまま先に進むのみですが、山頂付近から木々の切れ目を覗くとシルエットとなった富士山が見えました。
この時期の日の出は6時過ぎ……暗中模索のような山歩きはもう暫く続く。三方分山から女坂峠への下りは道自体は分かりやすいものの全体的に傾斜が急で、暗闇の中に歩くコースとしては少しばかり恐怖でした。
徐々に東の空が白み始めました。樹間越しながら全体的に雲が少ない様子が窺えるので晴天を期待してしまう。
[5:51-6:00]女坂峠
三方分山からの急坂を下りきり、少し緩いアップダウンを進んだ先が王岳との間の最鞍部である女坂峠です。
ここは古くから駿河国と甲斐国(江戸期には東海道と甲州街道)を結んでいた街道である中道往還の峠越えとなる場所で、ここ女坂峠と北側の右左口峠にて御坂山地を越えていました……中道往還と言えば、初日に日本酒の調達に立ち寄った富士高砂酒造の目の前を通っていた街道だったりします。白糸の滝を出発して以降、西に大きく振れた後に東に進むコース取りだったのでいずれ交差するのは当然の事だったのですが、完全に頭から抜け落ちていました。
女坂峠という地名に関しての事ですが、解説の看板を見るに阿難坂とも表記されるようです。見た限りどちらも当て字のようですが、地名としては阿難坂の方が古く、中道往還においての難所として知られた事から名付けられたという。
一方で女坂峠という名前は昔、身重の女性が道中での出産後にこの地で母子共に力尽き、その供養の為に作られた石地蔵が女石と呼ばれた……という伝説に因んだもののようです。背後には古びた石碑や地蔵が幾つか立ち並んでいるので、その中に女石もあるのでしょうか。
この女坂峠の付近には水場が存在するという事は予め下調べしているのですが、その水場はかつての中道往還の峠道を精進湖方面にかなり下った、殆ど麓との中間とも言えるような場所にあるとの話でした。少々面倒ですが、ここでの補給を逃すと以降は確実な水場は無い(黒岳直下のすずらん峠の水場は枯れやすいとの情報を得ていた)ので、汲みに下る事にしました。
[6:13-6:24]水場
こちらが女坂峠の水場で、見た通り沢ですが、周囲から一段落ち込んだ場所を流れているので、脆い斜面をへつるようにして川岸まで下降しました。
水場の様子。完全に沢水ですが、水源からそう遠くはない上に水量も豊富なので水質的には問題なさそうです。味の方も至って普通でした。(沢水なので別段美味くはないです)
水汲み後は稜線上までの憂鬱な登り返しです。そうこうしている間に日の出を迎えていたようで、空は完全に明るくなっていました。
未明の何がなんだか分からない内に越えてしまった三方分山を振り返る。随分と下ってしまったな、というのが第一印象。
女坂峠→五湖山
[6:47-7:04]女坂峠
新鮮な水を7リットル担いで女坂峠に戻ってきました……結局、水汲み時間を含めて往復1時間掛かってしまいました。
先程も書いた通り、ここでの水汲みが最後となる可能性があったので殆ど満タンの状態で、それを詰め込んだザックは想像通りの重量。待ち構えているのは本日一番の長い登り返し。朝っぱらから気が滅入るシチュエーション。
女坂峠から王岳方面に向かいます。足元こそ薄暗いですが、空は完全に明るくなっている。早出した分の時間的余裕は水汲みの往復で完全に消失してしまったようです。
暫くは樹林帯の中の道。ここもまた地味な尾根道が続くのかなと特に期待せず進んでいたのですが……。
少し進んだ所で徐々に視界が開けてきました。これまで乗り越えてきた毛無山、パノラマ台といった山々が確認できます……そして右奥には何やら気になる稜線が。
気になる稜線を望遠してみたもの。左側の丸っこい山は日蓮宗の総本山である久遠寺の寺領として知られ、山頂近くに敬慎院の寺院が建つ七面山。そのまま尾根伝いに左側に八紘嶺、その右奥には山伏といった安倍奥のピークが見えます。
更に登ると一際開けた展望地となりました。左側に富士山、中央に毛無山、右側に三方分山といった並びで見えています。中央の毛無山の手前、パノラマ台の下の所には精進湖が位置しているのですが、朝霧に蓋をされていて湖面の様子は窺えませんでした。
少し露出を上げて撮ってみたもの。毛無山周辺の竜ヶ岳、雨ヶ岳等のピークが細かく確認できる。特に毛無山山頂の右側、ピラミッド状の大ガレの頭は殆ど無名の割には存在感がある。
山名入りです。位置関係の把握用に幾つか記載した程度。
竜ヶ岳の左奥に見えた怪しい稜線を望遠で。天守山地にしては遠すぎるから違うだろうと調べてみると、富士川の河口域、由比や蒲原といった東海道の宿場町近くの山で、大井川左岸山系と呼ばれる山域らしいです。最も高い山は浜石岳という薩埵峠から少し山の方に入ったピークとの事ですが……そう言えば一昨年、薩埵峠辺りを散策した時に浜石岳という案内を見掛けたような。
左の写真は三方分山の右側。奥の方に見える稜線は南アルプス北部の鳳凰三山です。右の写真はこれから向かう王岳方面、その左奥に大菩薩連嶺の稜線が見えています。見える山が増えてきて段々と楽しくなってきた。
王岳の左に見えた大菩薩連嶺を望遠で。黒岳から牛奥ノ雁ヶ腹摺山、小金沢山、大菩薩嶺となだらかな稜線が続いている。
この付近の道は露岩に沿っているので展望は抜群です……しかし雲海の雰囲気とかは良いんですけど、精進湖の湖面が見えないのは少し残念。これまで一度も見えてませんし。
標高を少し稼いだ事で更に視界が広がりました。三方分山の左側には南アルプス南部の聖岳や笊ヶ岳といったピークがお目見え。
先程も見えた鳳凰三山。その左の見切れるかどうかという所には雪を被った北岳が見えます。
望遠してみたもの。北岳の右側、小太郎尾根の奥には殆ど頭だけですが仙丈ヶ岳も一応見えています。
展望は良いんですけど道はそこそこワイルドです。実線コース(一般コース)という扱いなんですけど、暫く整備されていないのか草木が茂っていて灌木を漕ぐような箇所も幾つか。
他に色々な山が見えてきて浮気がちになってきたので、ここで原点回帰として富士山を一枚。
再び三方分山と、その左奥に見える稜線。少し角度が変わった事で赤石岳も見えてきました。双耳峰となった笊ヶ岳の山容もはっきりと見える。
少し登っては振り返って展望を楽しむ。気付けば白根三山が完全に顔を出していました。
こちらは南アルプス南部の稜線。右側に赤石岳と聖岳と見え、一本手前の白峰南嶺の稜線上には笊ヶ岳や布引山といった山並みが見える。写真の中央辺りはマイナーピークが多いですが、左側には先程も見えた七面山、山伏、八紘嶺といった安倍奥の山々が確認できる。
山名入りです。七面山が見えるのは当時なんとなく分かっていましたが、殆ど静岡に近い山伏が見えるとは……いざ調べてみるまで分からなかった。
南アルプス北部の山々です。白根三山、北岳から間ノ岳、農鳥岳といった並びが比較的近い所に見えます。右側の鳳凰三山も薬師岳、観音岳、地蔵岳と三山全てのピークが細かく見え、その内地蔵岳の山頂には突起のような形状のオベリスクが辛うじてですが確認できる。
こちらも山名入りを作成しました。白根三山はやはり良いなと。
登山道の様子ですが、五湖山の手前辺りは自然に還りかけていました。道筋そのものは明瞭ですが、道を塞ぐようにススキや低木が蔓延っている上、イバラみたいなトゲトゲの植物も多いので通過に気を遣う。
五湖山→横沢ノ頭→王岳
[8:02-8:20]五湖山
五湖山のピークに到着。コースタイム40分の所が1時間……水満載のザックが激重でバテまくりの上、意外に難路で手こずり亀ペースとなりました。景色が良くて度々足を止めていたのも原因の一つ。
これまで展望の良い場所が続きましたが、五湖山の山頂は木々が茂っていて何も見えません。
少し進んだ先から、これから登り返す王岳を臨みます。見た感じ樹林帯が続いており、厄介な藪棘ゾーンは暫く無さそうなので安堵。起伏に関しても、山頂の直下を除けば急登っぽい場所は無さそう。
富士山とその左側に見えた山々。杓子山や御正体山の方面で、その手前には西湖の南に位置する足和田山が見える。
先程よりは幾分か緩やかですが、登り基調の道である事には違いない。道も歩きにくいという程ではないものの全体的に荒れ気味です。
見通しが利かない樹林帯を進んでいくと登り返しが見えてきました。横沢ノ頭方面のピークかなと思われます。
木々が密生していて展望のない、静かな尾根歩き。
地味尾根ですが、道筋自体はしっかりしているので全く迷わずに進めます。
と思ったら途中で道が消失しました。季節柄、落ち葉で埋もれてしまっているようです……とは言え目指すべきピークが見えているので適当に歩いていく。
落ち葉エリアを越えた先の登り返しの上には杭が打たれていました。ここが横沢ノ頭かなと思ったら違うらしい。
小高いピークの上は開けていて富士山を眺める事ができました……夏場だともっと鬱蒼としているんでしょうか。
樹間から北側の展望……というよりは隙間から様子を覗き込むような形に。甲府盆地が肉眼で確認できたのは今回の登山ではこれが初めてかな。
正面に見える王岳を目指します。直下の登り返しが迫ってきた。
富士山と太陽。雲は多いものの高曇り気味で、山を覆い隠すタイプのものではありませんでした。
GPS上ではこの近辺が横沢ノ頭かなと思われる場所でしたが、特に展望は無い上に看板とかも見当たらなかったので、そのまま通過してしまう。
再び藪ゾーンが始まる。こんなのが山頂まで続くのでは……と戦々恐々としましたが、藪はすぐに途切れてくれました。
王岳も目前と言えるくらいに近付いてきました。
木の枝で囲われた窓枠のような所から毛無山を覗く。実際に登った直後だから贔屓目に見てしまうのか、中々良いフォルムをしているように見える。
遠目から見てキツそうだなと思った通り、中々キツい傾斜の登り坂です。
この王岳の登りの途中は展望が良く、ちょくちょく立ち休みして眺める。この付近の標高は1,600に迫る所で、前日に雨ヶ岳を下ってきて以来の高さ……左側に見える三方分山も随分と低く見えます。
南アルプス、間ノ岳から聖岳辺りまでの展望です。こうして広い範囲が見渡せるのは毛無山の少し先、タカデッキの登りから見えて以来。
直下は傾斜のキツさに拍車がかかりますが区間そのものは短い。地道に進んでいるとすぐにキツい登りは終わりを迎えました。
登りきった所で西湖湖畔に位置する根場集落からのコースと合流します。以降は山頂までフラットな道が続く。
笹道を突き進むと王岳の山頂と思しき開けた場所が見えてきました。
王岳→鍵掛→鍵掛峠
[10:50-11:14]王岳
お昼前という時間に王岳に到着。荷物が激重で標準コースタイムより大幅に遅れてしまいました……しかし、この山頂からの展望を前にしたら疲れも吹き飛ぶというもの。
王岳からの展望。360度という程ではないですが、南側180度くらいは楽しめます。樹海を挟んだ先に見える富士山が大きい。
やや露出を上げて撮ってみたもの。西湖の奥に見える足和田山は低いながらも存在感がある。
富士山と西湖と青木ヶ原樹海。
山頂広場の脇に存在した岩の上に登り、東方面を中心とした展望。中央のピークが連続している山がこれから向かう鬼ヶ岳で、その右奥には河口湖や富士吉田の市街地も見えます。
鬼ヶ岳から足和田山、西湖、富士山方面を少し望遠気味に撮ってみたもの。中央奥の辺りには山中湖の湖面も見えています。
山名入りです。西湖や河口湖周辺の大凡の位置関係が分かるようにと。
河口湖の奥、御正体山や丹沢、山中湖方面も見通せそうなので、更に望遠してみました。
こちらも山名入りを作成……周辺の山々が細かく見える上、富士急ハイランドの観覧車なんかも見えました。箱根方面は……金時山らしきピークがなんとなく見えているのは分かっていましたが、最高峰である神山が見えるとは当時気付かなかった。
河口湖、富士吉田の市街地を望遠で。右の写真、その左の方には河口湖の湖面が見えており、中央やや右の所には非常に見辛いながらも河口湖駅構内の電車が並んでいる様子も確認できました。
山頂広場の雰囲気。いい感じのロケーションですが、自分以外には誰も登ってくる事はなく終始貸し切りでした。
山頂看板と三角点と富士山。
富士山の反対側は甲府盆地が広がっている方面ですが、こちらは木が茂っていて見えません。
縦走路を更に先を目指します。王岳以降は鍵掛、鍵掛峠、鬼ヶ岳と御坂山地の稜線上を東進していく。
中央右奥の木の枝が掛かっている辺りが鍵掛のピークで、その奥に鬼ヶ岳、左奥に節刀ヶ岳と見えます。地形図の等高線を見た限りでは殆ど起伏は無さそうな稜線ですが、実際は結構アップダウンがある道でした。
この辺りは全体的に尾根が痩せており、岩場のトラバースを進むような所も多い。若干スリルがある道ですが展望は抜群です。
しかし登り下りが多くて意外に堪える区間でした。道筋も王岳手前程ではないですがそこそこワイルド。
松の木の合間にフィットするような富士山。
この付近は憎きノイバラが特に蔓延っています。一度うっかり手のひらに刺さった事がありますが、刺さった棘が折れて皮膚の中に入り込んでえらい目に遭いました……最終的には皮膚科で取り除いて貰った。
何度めかの富士山ビュー。崖の上のような所を通っていくので王岳の山頂よりも展望が良い気がします。
逆側、甲府盆地方面も木々に阻まれながらも少しは。その奥には奥秩父山塊の稜線が見える。
崖っぷちを通されたような登山道から臨む富士山。危険箇所って程ではないですが、余所見してると落ちるので慎重に。
西湖の湖畔に位置する根場集落がすぐそこという所に見えます。王岳、鍵掛峠、鬼ヶ岳の周回コースの起点ともされる。
パノラマ写真が続いたので、箸休めとして単体の富士山。
枯木に生クリームみたいなキノコがへばりついていた。結構でかい。
富士山を眺めながらの登り下り。かなり薄いですが、右側には今回の登山のスタート地点である天子ヶ岳が見えます……あんな所からはるばる歩いてきたのだ。
葉は既に落ちてしまったのか、寒々しい雰囲気の稜線が続く。
依然として枝の多い北側の展望……しかし、枝の隙間から八ヶ岳っぽい稜線が見えたのでつい足を止めて見入ってしまった。
八ヶ岳の左側には、かなり薄いものの北アルプスの稜線が見えました。つい2ヶ月前に登った穂高連峰や大キレットを挟んだ先の槍ヶ岳なんかも確認できますが、既にこの時期は白く雪化粧している。
南北の展望は気になるものがありますが、進む先の方面は木々が濃くてあんまり見通せなかったりします。どこをどう歩いているのかもよく分からない。
富士山とか西湖とか色々と……進むにつれて少しずつ見えるものが変わってきたような気がします。
[12:20-12:34]鍵掛
鍵掛のピークに到着。思いっきり道の途中のような場所で、山頂看板も至極ミニサイズのものが近くの木に取り付けられているのみです。
鍵掛から次に向かう鍵掛峠まで一旦下りとなります。
鞍部を挟んだ先の鬼ヶ岳の登り返しがいつの間にか近付いていた。
少し開けた所から鬼ヶ岳を見上げる。右側には富士吉田の市街地、その更に右奥には山中湖も。
ここにきてようやく北方面の展望が覗ける場所がありました。盆地の底の方には甲府市街地のビル群が見え、それを見下ろすかのような八ヶ岳の荒々しい稜線が奥に聳えている。
鍵掛峠→鬼ヶ岳
[12:52-13:00]鍵掛峠
坂を下り切り、暫く進んだ所が鍵掛峠で、先程見えた根場集落や北側の旧芦川村方面への下山道の分岐となります。
鍵掛峠の案内。この地点から鬼ヶ岳まで約1時間半の登り返しとなります。標高差が200mくらいしかない割には結構掛かりますが……アップダウン多いのかな?
出発して暫くの稜線上。如何にも尾根の上を歩いてるって感じの細尾根です。
先程越えてきた鍵掛のピークを振り返る。左奥の毛無山も霞むような遠さになっていました。
途端に道上に岩が目立ち始める。難所って程でもないですが、大荷物担いで越えるには中々しんどい道。
岩を越えたり巻いたり。
岩場からロープが垂れ下がっています。一見するとキツそうな登りですが、直下まで移動してそこから見上げるとそこまでの傾斜ではありませんでした。
王岳と同じくらいの標高まで上がってきました……振り返ると、遂に南アルプスを端から端まで見渡せるように。スタートの天子ヶ岳、その後登った毛無山にパノラマ台と、これまで越えてきた山々も大凡が見渡せる。
若干露出を上げて撮ったもの。南アルプスは安倍奥の山伏や深南部の大無間山から北部の甲斐駒ヶ岳まで見通せます。
富士山方面の展望も良好でした。その右側、樹海の中に突き出た大室山の起伏が存在感ある。
ここから暫し個別写真シリーズ。最初はやはり白根三山……北岳、間ノ岳、農鳥岳の並びはいつ見ても芸術的。ちなみに北岳から右に少し下がった所には仙丈ヶ岳のピークも見えています。
左の写真は塩見岳です。標高は3,000を越えるピークですが、付近の3,000m級は北側に農鳥岳(間ノ岳)、南側に荒川三山と少し距離があり、どこか孤立したような印象を受ける山でもあります。
右の写真は鳳凰三山と甲斐駒ヶ岳。中央に薬師岳、観音岳、地蔵岳のオベリスクという三山の並びが見え、その右側には均衡の取れた形の甲斐駒ヶ岳が見える。左側には一つ前の白根三山の写真でも見えた仙丈ヶ岳が見えています。
徐々に南下していき、左側は赤石岳、右側は荒川三山です。赤石岳はこれまでも時々見えている通り、小赤石岳に連なる山容が印象的。
右側の荒川三山は正面に最も高く見えるのが最高峰の悪沢岳で、その左側に荒川中岳、荒川前岳と続いている。これら三つ含めて荒川三山ですが、悪沢岳のみ少し距離がある。
左の写真は笊ヶ岳の南側に位置する布引山から稲又山、青薙山といった白峰南嶺上の山々。右の写真、王岳と鍵掛のピークの間に挟まるようにして見えているのは聖岳です。
絵になるような岩場の突き出し。居心地が良いので、荷物を置いて暫く休憩しました。
荒川三山から白根三山辺りまで南アルプスの稜線を繋げてみたもの。その右側には北アルプスが見え、手前には富士川沿いに広がる麓の街並みも見える。
毛無山を中心としたパノラマ写真。日が傾いてきて西の空が金色に輝き始めて美しい……今回の登山においてのベストビュー毛無山といった所。
富士山も再確認。太陽が西の方に回り込みつつある為か、徐々に順光となりつつある。
縦走路の雰囲気。奥に見えるのは鬼ヶ岳の南に位置する雪頭ヶ岳のピーク。
八ヶ岳や奥秩父山塊、甲府盆地方面も偶に開けてくれます。甲府の人口は20万人に届かないという所ですが、こうして観察してみるとビルが多く都会的。
富士山が見えたらつい撮ってしまう……掲載している写真はごく一部で、お蔵入りになった写真の方が圧倒的に多い。
鬼ヶ岳までひと登りという所までやってきました。ゴールが近いには違いないですが、最後の登り返しは思ったより大きい。
その鬼ヶ岳の左側には奥秩父山塊の山々が見えました。飛竜山から甲武信ヶ岳辺りまでの山続きが確認できます。
奥秩父山塊を望遠したもの。右端の黒いピークが大菩薩嶺で、その左背後に飛竜山が見えます。飛竜山から左の方に見える甲武信ヶ岳(木賊山)までの区間は歩いた事がないので機会があれば行きたいですが……もう暫く温めておきたいという感情もある。
鬼ヶ岳の登り返し。ほぼ見た目通りの登りのキツさ。
富士山と毛無山方面。空高くに厚い雲が蟠っており、時折日差しが遮られて辺りが暗くなる。
鬼ヶ岳への登り返し。大して暑くないので水が減らず、結局この日は丸一日荷物が重い状態で歩いてました。水汲みもタイミングが大事だなと再認識。
水ノ沢山方面の分岐を過ぎて以降は道がフラットになります。ここまで来れば鬼ヶ岳の山頂は目と鼻の先という所。
鬼ヶ岳→金山→節刀ヶ岳
[14:37-15:24]鬼ヶ岳
御坂山地の主峰では御坂黒岳、三ツ峠山に次ぐ三番目の標高である鬼ヶ岳に到着。御坂山地は三ツ峠山の方面を含めると結構な頻度で登っているのですが、こちらのピークは初めての登頂となりました。
鬼ヶ岳からの展望。今回の登山において、360度展望を楽しめる初めての山でもありました。
露出を上げて撮ってみたもの。ほぼ360度のパノラマで、富士山、天守山地、南アルプス、北アルプス、八ヶ岳、奥秩父山塊、そして御坂黒岳方面に伸びる御坂山地が一堂に会する。
山名入りです。望遠ではないので主峰のみ記載。有名所のピークは概ね見えています。
遠くに見える山を望遠で繋げてみました。スタート地点である天守山地からこれから向かう御坂黒岳までの間、およそ180度の範囲。
製作に骨が折れた山名入り。そのままだと潰れて読めないと思われるので、クリック(タップ)して拡大した上でご覧下さい。
北アルプスも穂高連峰、槍ヶ岳の辺りから表銀座の方のピークは細かく見えています。立山や剱岳も一応見えてるかなという程度。
少し範囲を広げてみたもの。この諏訪湖や松本盆地の方まで続く平地は所謂、糸魚川静岡構造線による断層のずれによって生じたもの。
甲府の市街地と八ヶ岳。圧縮効果で非常に近くに見えますが、実際には40kmくらい離れている。
麓の方を望遠で繋いでみました。甲府の市街地西部を貫いている富士川の流れが左の方、下流の青柳や鰍沢の辺りまで続いているのが見える。
八ヶ岳と奥秩父山塊、御坂山地の山続きをメインとしたパノラマ。背後に続く山もそうですが、麓に広がる甲府盆地の家並みも細かい所まで観察できます。
奥秩父山塊から大菩薩連嶺、御坂黒岳、三ツ峠山、丹沢、山中湖方面の山々を望遠で。丹沢の手前に見える御正体山、杓子山が富士吉田の市街地の程近くという所まで迫っている。
山名入りです。丹沢や道志山塊近辺の山々も細く見えます。
奥秩父山塊のみに限ったパノラマ写真。荒々しい瑞牆山の山容や金峰山頂の五丈岩、3つのピークが入り乱れる甲武信ヶ岳に、笹原広がる大菩薩嶺等、見所は多い。
これから向かう方角の御坂山地の稜線。途中で南北に蛇行しつつも、奥に見える三ツ峠山まで一本の尾根で続いています。
南側、富士山と西湖、河口湖、富士吉田市街方面の展望です。奥に見える山中湖も遥か遠くという距離ではなくなりました。
同方面を少し望遠したもの。正面の市街地の前後に湖面が見えますが、どちらも同じ河口湖で、左手前に見える十二ヶ岳に隠れている部分で繋がっています。
更に望遠したもの。ここまで望遠すると富士急ハイランドのアトラクションが細かく見える上、ド・ドドンパのコースターの北側のカーブの奥の辺りには富士山駅(旧富士吉田駅)の駅ビルも見える。山中湖方面も金時山や箱根山最高峰である神山も王岳から見た時と同様、薄いながらも確認できます。
山中湖を単体で撮ったもの。湖畔に降りたのは去年の5月、杓子山から石割山方面に縦走した際に下山した時が最後かな。
山頂から少し先の方の岩場に移動し、南側の展望。気付けば日も傾いてきました。
富士山と太陽。西の空がほんのり赤い。
日が沈む方角にどっしり構える毛無山。その下に白く反射しているのは本栖湖の湖面です。
去り際、少し薄暗くなってきた頃の御坂山地、富士山方面の展望。
日没も間近ですが、もう少し先に進んでおきたいので出発します。鬼ヶ岳の直下こそ少し急な箇所はありますが、以降はだらだらと起伏の少ない尾根道。植生もこれまでとはなんだか雰囲気が違う。
[15:52-15:56]金山
暫く歩いた先が十二ヶ岳方面のコースとの分岐である金山のピークです。鬼ヶ岳から見えていた通りだだっ広くて鬱蒼としたピーク。金山というより丸山って雰囲気の山頂でした。
木々が茂っていて何も見えないだろうと特に期待していなかったのですが、富士山方面の斜面が伐採されており見通す事ができました。
次なるピークは節刀ヶ岳。こちらは主稜線上から少し外れた所にあり、金山から少し歩いた所でその分岐に到着。暗くなり始めているので少し悩みましたが……こちらも展望が良いとの話なので寄ってみる事に。
節刀ヶ岳の山頂へ至る道。分岐から5分なので大した距離ではないですが。
露岩に出ました。ここはまだ山頂ではないようですが、辺りは開けていてちょっとした展望地でした。
山頂手前の露岩からの展望。鈍重な雲も相まって薄暗くなってきました。
気付けば日没が迫っていました。西の空、南アルプス深南部辺りに煌めく夕日が見える。
南アルプスの稜線越しの夕日。まだ山の上の方に見えているので、完全に沈み込むまで多少の猶予はありそう……という訳で今のうちに山頂に移動します。
節刀ヶ岳からの夕日と部分月食
[16:18]節刀ヶ岳到着
日が沈むか沈まないかという頃に節刀ヶ岳に到着しました。ここも王岳や鬼ヶ岳と同様に富士山方面の展望が大きく開けています。
富士山の中腹から上の部分を望遠してみたもの。北斜面となるこちら側は流石に雪が多い……中央左下の辺り、よく見ると吉田口五合目に建つ施設の灯りが見える。
節刀ヶ岳からの展望。夕日に照らされ赤く染まる山々……物凄い勢いで伸びてくる影に次々飲まれていく。
三ツ峠山の展望。この辺りになると流石に近く、山頂に建つ電波塔や反射板といったものも肉眼ではっきりと見えました。
地平線に接触し、大きく瞬く夕日。
夕日と富士山。間に見えるのは先程長々景色を眺めていた鬼ヶ岳と、その右奥には毛無山。
日が沈み込む瞬間。周囲の雲を巻き込んで激しく燃え盛る。
夕日に照らされて赤みを帯びる富士山。
これは赤富士と思いきや、初冬のものは紅富士と呼ばれるらしいです。確かに赤よりは紅って感じではありますが。
夕焼けが収束していく西の空。
太陽が地平線に吸い込まれる僅かな時間、夕日に照らされて全体の雲がピンク色に染まりました……なんだかこの世の終わりみたいな雰囲気ですが、明日もあります。多分。
紅富士というか桃富士。
そして、この日は全国的に部分月食が見られた日という事もあり、東の空に浮かぶ月が普段では見られないような欠け方をしていました。
いよいよ暗くなり始めた西の空。奥の方には青空が見えていますが、見える範囲は吸い込まれるように小さく窄んでいく。
まだ辛うじて明るい部分を望遠で。南アルプス、笊ヶ岳の南の辺りの稜線越し。
これ以上の変化は無いだろうと思っていたら、西の空がなんとも言えないビビットカラーっぽい色味に変化しました……ちなみに、これまでの写真も含めてカラーバランスの補正は行っていません。
日に照らされる場所がどんどん西に移動している……そんな印象の空の変化でした。
麓の街並みが街明かりとなる程には暗くなりました……夕日を見物していたら結構時間を食ってしまいましたので、本日はこの辺で行動終了という事で。
夕食の時間です。本日の肉物はコンビーフハッシュ也。
コンビーフハッシュを炒める。肉オンリーではなく細かくカットされたじゃがいもが入っているので、惣菜としては丁度良いです。
その後、アルファ米のナシゴレンを残った肉の油で炒めてみました。お湯を入れただけでは食味がいまいちなアルファ米ですが、完成後に炒めたり蒸したりして一手間加えるとより普通のご飯に近付くので、時間と手持ちの水に余裕がある時にはおすすめです。
夕食も一区切りという所で月食を見に行くと、これまた不思議な形でした。見えているのが下半分のみという状況は中々無いですね。
次回記事『天守山地から御坂山地その5』に続く