大峯奥駈道その4(迷平→明星ヶ岳→八経ヶ岳→弥山)
前回記事『大峯奥駈道その3』からの続きです。
この日は荒天により半停滞。雨風の中、明星ヶ岳、八経ヶ岳と越えて弥山小屋までのプチ移動に留まりました。
他の日程を見たい方は以下の記事よりリンクを辿って下さい。コース全体の軌跡もこちらに掲載しています。
【2019年11月】熊野古道中辺路&大峯奥駈道縦走についての記録 - 山とか酒とか
目次
迷平→明星ヶ岳→八経ヶ岳
はい。前日予想した通りガッツリ雨でした。というか雨より風の方が酷い。二重稜線の間に張っているからテントには殆ど来ませんけど、ゴーゴー凄い音がして周囲の木々が前後左右に激しく踊り狂ってます。
停滞日和ですね。私、雨の日は絶対に山登りたくないマンなのでこんな時は即停滞判断です。幸い翌日は高気圧に包まれるみたいですし……という訳で本日は二度寝。
の前にちょっと天気を見てみました。一体いつ頃まで雨雲が掛かっているのか。この辺り、稜線上だからか電波は容易に入ります。
GPVを見てみると昼頃には雲は完全に抜けてしまうようです。しかし風は依然として強い。麓が晴れでも、風が強ければ大抵山の上に暫くガスが残る。雨上がりの湿った空気が吹き付けて、それが冷えて雲になるという訳です。
しかし私は天気予報士じゃないし絶対にそうなるとは断言できない。もしかすると晴れるかもしれない。そして晴れを前にして停滞を決め込んでいるなんて方が悔しくてしょうがない……ならばひとまず、目当てのピークである八経ヶ岳近くの弥山小屋まで移動して、午後いつでも動けるようにするのが得策か。
それに丸一日停滞というのも気が滅入るもの。これまで何度と停滞しているから分かる。雨が浸水してきてテントの底が一面プール。そこに蛇腹マットで筏のようにプカプカ浮かぶ自分。湿る、というか思いっきり濡れて重みを増す荷物。そして一日中相手にしなくてはならない退屈という名の最大の敵。考えれば考える程、一刻も早くこのテントから飛び出てしまいたくなる。
よし行こう。では12時くらいに最初のピークである明星ヶ岳に到着するように、10時出発、に備えて9時起きにアラームをセット。そして二度寝……おやすみなさい。
数時間ぶりのおはよう。8時時点では依然として荒れていますが、雨については多少弱まった模様。降ったり止んだりという感じでした。
この調子ならもう少ししたら雨も完全に止むかなと期待して、予定通り10時頃の出発を目指して準備を始めます。
[10:58]迷平出発
まあズルズルとアレコレなって1時間遅れです。なんかまた雨が降り始めて気が乗らないし、故にテント仕舞うのに手間取るしで仕方ないね……テントがあった場所だけ乾いているのが見えます。
さて、いざ雨の中出発。ここ数年雨を避けた山行ばかりしていたので、久しく雨具を着込んでという事もしていません……久しぶりなら雨中登山も意外と楽しめるのでは?
いや雨の中の登山なんて楽しい訳ないじゃないですか。しかも冬も目前にした晩秋の雨、風も凄くてめちゃくちゃ寒いです……いやー、これぞ修行ですね。
五鈷峰付近は意外と険しいです……雨で濡れてグリップろくに効かないしで難儀する。右は第49靡菊の窟。
[12:50-13:06]明星ヶ岳
奥駈道のコースは明星ヶ岳のピークを外れていますが、せっかくなので寄り道してみました。第50靡明星ヶ岳。白い。風が強い。寒い。
明星ヶ岳の分岐以降は天川川合からの登山道であるレンゲ道と合流するので案内が多めに。道の状態も良く人が歩いてそうな雰囲気です。
お次の八経ヶ岳は百名山……誰か居ないかな。誰かと「酷い天気ですねー」とか話して、この不幸を共有したい。
八経ヶ岳→弥山小屋
[13:22-13:48]八経ヶ岳
荒涼たる最高峰、第51靡八経ヶ岳に到着。当然人の姿なんか無く、漂うのは寂寥感のみ。一人でおやつをモグモグ頬張り、ゴーゴーと音を立てて流れる分厚い雲を眺める。
晴れるならそろそろ晴れる時分ですが……さむいし行こう。
八経ヶ岳と弥山の鞍部、オオヤマレンゲの群生地付近。確実に雲は薄くなっていますが、イマイチ晴れてくれない。
おおっ、と思わず声が出てしまう青空。これは期待できそう。ひとまず弥山小屋でテントを張って体制を立て直しましょう。
※ネタバレ:以降天気は回復しませんでした。
[14:14]弥山小屋到着
弥山小屋は予想より大きな建物です。この規模なら小屋じまいしていても誰かしら人は来ているのでは? なんて期待していましたが、こちらも人っ子一人おらず。
だだっ広いスペースの隅っこにテント張りました。避難小屋もありましたが、無人素泊まりの割に結構な料金取られるとの事なので……それに明日は晴れ。だったらテントで良いよね、乾かしたいし。
さて、設営を終えたら待機です。晴れたらもう一度八経ヶ岳に行こうと、そんな事を頭に思い浮かべながらゴロンと寝転がり……なんか妙な違和感を覚える。
背中が冷たい。なんだろうと触れてみるとヌルッとする。そしてチクチクした何かが手にこびり付く。枯葉の破片のようなものがあった。
なんかの拍子にゴミでも入ったのかと、まじまじとそれを眺めてみる。
壊死した皮膚でした。
即座に心当たりが思い浮かぶ。そういえば、二度寝の時にうっかりハクキンカイロを腰に巻いたまま寝てしまったのでした……。
跡が残るとかは背中なんでぶっちゃけどうでもいいんですが、こんな不衛生極まりない環境で大丈夫だろうか。低温火傷って結構深いので、破傷風とかの感染症に罹らないか少し心配。
とりあえず化膿止めに持ってきたリンデロンVG塗っとこう……この判断が功を奏したのか特に大事はありませんでした。帰宅した後に皮膚科に行ったらリンデロンのジェネリックのベトノバールGが出たので、処置としては割と的確だったという事でしょう。
こういう抗生物質入りのステロイド軟膏、火傷でなくてもちょっと深い傷を負った時とかに良いですよ。私は山歩きの際は常に携帯しています。
ひとまず火傷の事は忘れて寝転がる。しかし、さっきの晴れ間は一体なんだったのか、バラバラと再び雨が降り始めていました。既に麓は晴れているはずなのに……だからテントから出ようにも出られない。本日二杯目のコーヒーを淹れたり、ポケモンを乱獲したりして暇を潰す。
そうこうしていると日没も近くなりました。結局、テントに入ってから何処にも行っていない。
ちょっと雨が止んだ隙を見て弥山山頂である天河神社奥宮、弥山神社まで様子見に行きました。靡としては第54靡弥山。
明日晴れますように……あと、背中のコレなんとかしてくれませんかねと祈願。この神頼みが功を奏したのか(以下略
戻ってきました……やることないし寝よう。天気は明日回復するはずです、たぶん。さっきそう願ったからね。
次回記事『大峯奥駈道その5』に続く。