実質的な登山初日である2日目は、飯豊連峰の主峰である飯豊本山(飯豊山)への登頂が内容のメイン。前泊した弥平四郎登山口をスタートした後は、上ノ越経由の新ルートを経由して主稜線上へ。その後は酷暑とブヨの洗礼を受けながら尾根伝いに巻岩山、疣岩山、三国岳と通過。切合小屋から草履塚、御前坂を登りきって本山小屋にこの日の内に到達。テント設営後は時間に余裕があったので、近くの飯豊本山の山頂にも足を伸ばしました。
『飯豊連峰その1』の続きの記事となります。
他の日程を見たい方は以下の記事よりリンクを辿って下さい。コース全体の軌跡もこちらに掲載しています。
今回歩いたルートのGPSログです。
弥平四郎登山口→上ノ越→巻岩山


[3:56]弥平四郎登山口出発
この日は酷暑が予想されたので暗い内からの出発……であるものの出発時点で既に蒸し暑く先が思いやられる感じ。熊の気配が時々するので、熊鈴に加えてホイッスルを吹きつつ先に進みます。
夏至近くで日が長いので少し歩き始めたら日が昇ってきました。
基本的に歩きやすいとされる新コースですが、シーズン前で未整備なのか所々で倒木があったり道が崩れていたり。とは言え通行に支障はない程度でした。


急登が続く……以前来た時は下りで使った道ですが、登山口と上ノ越との標高差は600m。登りだと暑さも相まって結構きつい。そうした中、道の脇に生えるギンリョウソウは癒やし。
登り詰めていくと時々視界が開ける場所も。日は既にそこそこの高さ。
序盤の急登を終えて一段落した所からの展望。見えているのは後程通る巻岩山と疣岩山でしょうか。主稜線はまだ遠くに見える。
涸沢を渡る箇所。ザレと落ち葉で見るからに滑りやすそうですが、見た目ほどでは無く特に難儀はしませんでした。
[5:58-6:07]上ノ越
主稜線に乗った所が上ノ越です。かつて麓の弥平四郎で狩猟が盛んだった頃のルートで、上ノ越の地名もその時代のものとか。(他に中ノ越という所もあるようです)
ここから以降は飯豊連峰をひたすら尾根伝いに歩いていきますが……いきなり目の前に身長の2倍以上ある大きな雪の壁が立ち塞がる。早くもアイゼンピッケルの出番かと思いきや、残雪の縁から灌木を掴みながら回り込むように登りなんとかクリア。
雪の壁の上からの展望。遠くには磐梯山が見える。今回の登山では気温が高かったのか空気が霞みがちで、あまり遠くの山は見えませんでした。
近くにはアカモノの群生。まだ花が始まったばかりという頃で、赤い実を付けるのは1~2ヶ月は後でしょうか。
尾根伝いに巻岩山を目指しますが、上ノ越を越えた頃から案の定というか凄まじいブヨの大群……これ以降、最終日に杁差岳から下るまでずっとこんな感じで常に30匹くらいに付き纏われました。
そんな感じなので写真を撮っていると当然何匹も映り込みますが、見るだけで痒くなるので以降の写真は修正して消していますw
巻岩山までの登り。上ノ越から標高差300m以上あるのでまだまだ高い所に見える。
遠くに見える磐梯山を望遠で。すぐ左隣に見えるピークは櫛ヶ峰。会津のシンボルとなる所以が分かる均衡の取れた山容。
前日歩き始めた弥平四郎の集落が麓に見えました。森の中に収まるかのように小さく開けている。
巻岩山→疣岩山→三国岳
[7:38]巻岩山
巻岩山に到着。特に看板などはありませんが展望は開けていてそこそこ良い。すぐ先には次なるピークの疣岩山が見えます。
鞍部から疣岩山を見上げる。以降、残雪を越えていく所も幾つか。
残雪の縁を歩いていく。この辺りはごく一部を除いて夏道は出ていました。
[8:07-8:12]疣岩分岐
新長坂コースとの合流点に到着……以前来た時に往路として使用したコースですが、まだシーズン前という事で道自体が藪に埋もれていました。
ここから先の疣岩山方面は大きく北側から回り込むようにコースが続いています。
疣岩山すぐ北の所にはしし沼(疣岩展望台)との分岐があります。そう遠くはないので荷物を置いて足を伸ばす。
しし沼の手前。この辺りでようやく北側に開ける箇所が……右から三国岳、種蒔山、草履塚、本山小屋、飯豊本山と本日越えていくピークが概ね見えています。それ以降の御西岳方面は流石に雪が多いですね。
後程通る三国岳と三国小屋を望遠で。


こちらがしし沼。モウセンゴケはまだ生えてませんでしたが、近くには僅かにカタクリが咲いていました。6月の下旬に差し掛かる時期と考えるとレアかも。
[8:39-9:05]疣岩山
疣岩山の山頂に到着。こちらの山頂には三角点があります。
疣岩山からの展望。右は翌日登る飯豊連峰最高峰の大日岳方面ですが、山頂は雲の中でした。


疣岩山から三国岳に向かった歩き始めた所、直下の下り坂で再び雪の壁が……ここも残雪の縁から灌木を手掛かりに下ってクリア。
酷暑で水の消費ペースが早いので、残雪下の雪解け水を汲んでみたらこの濁り方……濾過して使おうと思ってたら、後程切合小屋の水場が出ている事を聞いたので使わず廃棄しました。
季節柄、まだ水場が雪で埋もれている所が多く水の確保が難しいとの話でしたが、以降も切合小屋、梅花皮小屋、頼母木小屋と意外と色々な所で出ていて、融雪水に頼る場面は少なかったです。
疣岩山から三国岳の間の稜線は、先程の残雪の所を除いて比較的なだらかで歩きやすい。山頂に小屋が見える三国岳も次第に近付いてきた。
三国岳手前からの展望。中央左から伸びる尾根が地蔵山や麓の川入へと続く地蔵尾根のコース。弥平四郎と違って車で登山口まで入れるのでこの時期でも人がそこそこ入っており、コースが合流して以降は時々人とすれ違うように。(それまでは1人も会いませんでした……)
三国岳→種蒔山→切合小屋
[9:58-10:31]三国岳
三国岳に到着。小屋番の方が小屋開けの準備をされていました……ここで切合小屋の水場の情報を得て安堵。無ければ先程の泥水を濾過するか、草履塚の残雪を溶かして使うかするつもりでした。
アクセスする林道が崩れているという情報が既に伝わっているのか、弥平四郎から登ってきたというと少し驚かれた。
三国岳から切合小屋を目指して進みますが、三国岳の山頂直下が薄くなった残雪のトラバースと若干の危険地帯。厚みがありそうな所をキックステップで足場を作りながら進みました。
夏道に辿り着いて一息ついた所。すぐ横手の谷は深く落ちており中々の緊張感でした。
先程の残雪を振り返った所。終盤は踏み抜きが怖かったので、縁の藪の所に移ってから下りました。
少し進んだ先のハシゴ場。三国岳~切合小屋間は意外にアップダウンが多い。酷暑とブヨの攻勢も相変わらずで厳しい道程。
この辺りから時々コース沿いに雪が出てくる。掴んで首の辺りに乗せたりして少しでも涼を得つつ進みます。
アップダウンの続くきつい道。雲が抜けたのか、中央には大日岳も見える。左は先程通過した疣岩山。
前方に見えるのが種蒔山への登り。その右背後に見えるのが後程登る草履塚のピークです。
少し進んだ所から同方面。
区間は短いものの、種蒔山の登りの途中で岩場もあり。以前来た時に通過した際は割と楽なイメージの区間だったので、こんなに登り下りきつい道だったっけ……という印象。
岩場を登りきった所から振り返る。正面に見える2つのピークの右奥には先程通過した三国岳が。
道の脇に咲くミヤマキンポウゲ。標高も上がってきて植生も徐々に変わってきました。


ミヤマキンバイ?とイワカガミ。酷暑とブヨで厳しい時期ですが、見られる花の豊富さとしては一番のシーズン。
種蒔山付近はピークを北側に巻くようにコースが取り付けられています……この頃になると草履塚、そして飯豊本山がだいぶ近付いてきました。切合小屋は草履塚の手前となるので距離的には近いのですが、鞍部にあるので見えない。
[12:27]種蒔山
種蒔山の道標に到着。ここから先は暫くの間、残雪でコースがロストしています。フラットで歩きやすそうな所を適当に歩いていく。
雪道を歩いていると少し先の所で行き詰まっている人の姿が。(左の雪が小高くなった所の裏の辺り)
見ていると、残雪の上とその先に出ている夏道とで落差があるので下り方に難儀している様子でした……どうやって降りるのかなと観察していると、一旦山側から迂回してから奥の笹沿いに下っていたようです。


先行者の方と同じように小高くなった所から更に上を目指すと、目印のテープと補助用?のロープが。ここの斜度は若干急峻だったので12本爪アイゼンがとても良く役に立ちました……他の方の記録見ると、同じ日にここで滑って笹薮に突っ込んでしまった人も居られるとか。
下った後は笹伝いに谷側に進むと夏道に復帰しました。ここまで来れば切合小屋は目と鼻の先。
切合小屋→草履塚
[13:10-14:06]切合小屋
切合小屋に到着。以前来た時、ここでテント2泊した思い出深い小屋です。ただ、この時は小屋番の方の姿はなくひっそりと静まり返っていました。(後程向かう本山小屋に移動されたみたいです)
切合小屋と次に登る草履塚のピーク。シーズン時には左の桶が水場となりますが、この時期まだ引かれておらず空っぽでした。
三国小屋で話に聞いた水場(昔ながらの水場との事)というのは裏手のテント場から少し下った所にあるとの話。小屋番の方が居たら詳しい場所を尋ねるつもりだったものの不在だったので自力で探す事に。
切合小屋のテント場。後程向かう本山小屋のテント場に比べると手狭ですが、大日岳を正面に臨める好ロケーション。
テント場の奥の木々の切れ目から道が続いていたので、そこから暫く下ります。ここでも正面には大日岳。


こちらが切合小屋のクラシックな水場。地面から染み出すように水が湧き出していて、それが流れとなって谷筋に注いでいます。粘土質な地面なので一見すると濁ってそうですが、湧出量は潤沢なので澄んでいる上に冷え切っている。宿泊予定の本山小屋の水場がまだ雪に埋もれているとの話だったので、ここで汲めるだけ汲みました。
切合小屋を後にして、水満載で激重となったザックを担いで草履塚方面へと進みます。右のピークが草履塚で、すぐ先の藪を抜けた所から雪道の上を歩く形になる。
草履塚の登りはアイゼン無しでも登れそうな傾斜でしたが、重いザックによって後ろにずるずる滑って歩き辛かったので途中で装備。
草履塚の登り。写真だと涼しげですが、実際は陽光の照り返しで両面焼きのグリルのようでした。
ある程度登った所から振り返る。スキー場のゲレンデのような風景というか実際滑れそうな丁度良い傾斜……写真中央には先程の切合小屋やテント場が見える。


道端に咲くシラネアオイ。こちらの花もシーズンなのか比較的多く見かけました。
草履塚→姥権現→御秘所→本山小屋
[14:55-15:27]草履塚
残雪の登りを終えた所で草履塚のピークに到着。正面には飯豊本山が間近に迫る。
草履塚からの展望。飯豊連峰の飯豊本山~大日岳の稜線を綺麗に見渡せる展望台的なピークで、以前来た時はここでコーヒーを淹れて寛いだりしていました……懐かしい。
少し下った所から同方面。飯豊本山の登りの手前、御秘所の岩場が見えてきた所。


オヤマノエンドウ越しの大日岳。色鮮やかな高山植物は目の保養。
[15:45]姥権現
草履塚から下った所にあるのが姥権現。江戸時代、女人禁制の禁を破って登った女性がこの地で石に変えられてしまったという伝説があります。
ここが草履塚~本山小屋間の最鞍部で以降は登り一辺倒に。


道端のハクサンイチゲ。前日、磐越西線の運転手さんに聞いた通り開花のシーズン真っ盛りという事で、特に稜線上では特に多く見かけました。
[15:58]御秘所
姥権現から少し進んだ先に御秘所の岩場があります。
こちらが御秘所の岩場。難度は低く区間も短いので、水満載の大荷物を背負っても問題なく進めます……江戸時代、麓の集落において信仰登山が盛んであった頃、この岩場を越える事で一人前として認められたとか。
岩場の間に慎ましやかに咲くツガザクラ。可憐。
ちょっとしたナイフブリッジ的な所を進んでいく。
御秘所の岩場上からの展望。左に見えるのが先程越えてきた草履塚。雪の多い大日岳も相変わらずよく見えています。
翌日の登る大日岳を望遠で。山頂直下に見える急峻な雪の斜面が今回の登山で一番の難所。ピッケル使いました。
御秘所を越えた所から御前坂の登りが始まります。標高差は150m程度なので大した事は無いですが、行程終盤で既に疲れも溜まっているのでしんどい登り。
御前坂の途中から振り返った所。正面に草履塚。右側には翌日歩く駒形山から御西岳、大日岳方面の稜線が見える。
ごく簡単にですが、同方面の山名入り。
更に登った所から草履塚方面を見下ろす。巻岩山、疣岩山から続く本日歩いてきた稜線がよく見えている。


御前坂の途中で見かけたアオノツガザクラ。まだ咲き始めといった所。
本山小屋で宿泊(飯豊本山往復)
[17:18-18:09]本山小屋
御前坂を登りきった所にある広場が一ノ王子で、本山小屋のテント場となります。すぐ先にのピーク上には本山小屋の建物も見える。
とりあえず、大日岳を眺められる景色の良い所にテント設営……飯豊本山から大日岳までの稜線を間近に見渡せる中々のロケーション。切合小屋のテント場も良かったですが、こちらもダイナミックで良い感じ。
本日の行程はここまでですが、日没まで多少時間があったので飯豊本山の山頂まで足を伸ばしてみる事に。
ピークに登った所にある本山小屋。テントの受け付けを済ませる為に内部を覗くと宴会中。本日は小屋番の方&小屋開け準備手伝いの方の3人のみで、一般客の姿はありませんでした。
宴会に誘われましたが、難所の多い翌日の歩行に支障を来すとまずいので遠慮……山で知らない人と酌み交わすお酒ほど美味しいものはないですが、ここは我慢という事で。
飯豊本山に向かう途中、一ノ王子に張った自分のテントが見えました。
[18:24-18:38]飯豊本山
飯豊本山(飯豊山)に到着。一般的にはここが飯豊連峰の山頂という扱い。
飯豊本山から北側、大日岳~北股岳~本山小屋方面の展望。標高は翌日登る大日岳の方が高かったりしますが、山全体として見れば核心部的な所はこちらの方という事で、この山を中心に尾根が伸びているように見える。
こちらは南側、本山小屋~大日岳の展望。ここでお酒を飲みながら夕日見物するつもりでしたが、冷えてきたので日没を待たずに戻りました。
本山小屋から臨む日没。位置的には北股岳~門内岳の間でしょうか。
[18:49]本山小屋到着
一ノ王子のテント場に戻りました。日没が近付き、辺りも次第に薄暗くなりつつある。


日没と飯豊本山の山頂。酔い覚ましに来たのか、先程小屋で飲んでいた人の姿が見える。
こちらはここから日本酒を堪能。大日岳を眺めながらのお酒は最高……なんですが、あの雪の斜面登れるのかなーと見れば見るほど不安に。
日も沈み、空が紺色に染まり始めた頃。大日岳はまだ見えていた。
夕食風景。いつものアルファ米定食に加えて、最近お気に入りの赤貝の煮物の缶詰。日本酒によく合うので半ばレギュラー化してる。


今回は更に、道中で取れたネマガリダケを塩茹でにして頂きました。若干硬い所はありましたが、大振りで食べ応えあってこれもまたお酒が進む。
『飯豊連峰その3』に続く