槍穂高連峰縦走その6(大天荘→大天井岳→燕山荘→燕岳→中房温泉)
前回記事『槍穂高連峰縦走その5』からの続きです。
一週間にも及んだ北アルプスの縦走もこの日が最終日……ですが予定では更に一日、燕岳から更に北上を試みて餓鬼岳方面に足を伸ばすつもりでした。まず大天荘から大天井岳へ御来光見物に往復。朝方はテントに霜が降りる程の冷え込みでしたが、一応は晴れと言えるような天気。その後はよく整備された表銀座の縦走路を燕山荘方面へ進む。さて、予定ではここから餓鬼岳方面に向かう訳ですが翌日は雨予報。餓鬼岳の下山コースは沢沿いで雨で増水した場合は通行が困難になるらしい……という訳で無念の短縮。燕山荘からは燕岳、北燕岳と僅かに足を伸ばした後、合戦尾根を辿って中房温泉に下山しました。
他の日程を見たい方は以下の記事よりリンクを辿って下さい。コース全体の軌跡もこちらに掲載しています。
【2021年9月】槍穂高連峰縦走についての情報と記録 - 山とか酒とか
目次
大天井岳からの展望
[5:24]大天荘出発
大天井岳での日の出の時刻に合わせて出発します。今回の行程で一番の寒さだったようで、フライシートには霜が張ってバリバリの状態でした……山頂で御来光見物した後は一旦戻ってくるので張ったまま向かってもいいのですが、タイムロスになるのでバリバリのまま撤収。
夜明け近い大天荘。御来光見物を楽しんでいる人の姿は多いものの、小屋の付近でも十分展望が良いので、寒い中山頂に向かう人はそこまで多くはない様子。
小屋付近の雰囲気。テントの撤収に難儀している間に空がだいぶ明るくなってしまいました。急ぎ山頂へと向かう。
大天井岳の山頂方面へ。ガレ場を越えたりハイマツを抜けたりしながら徒歩10分くらいですね。
途中の展望。好天には違いないですが……この日は意外に雲が厚く、遠くに見えるはずの山々は粗方埋もれている。
[5:33-6:03]大天井岳
なんとか日の出前に山頂に到着。中々の寒さですが既に結構な人が待機中。とは言え、山小屋の規模や張られたテントの数を考えるとそこまで多くはないですが。
日の出前で既に槍ヶ岳を始めとした北アルプスの山々が細かく確認できます。
日の出です。地平線のすぐ上の所に雲が滞留しており、殆ど完璧な姿だった前日と比較するといまいち映えませんが、これはこれで。
日の出と周辺に見える山々……と思ったら雲の影のようでした。
次第に日が昇っていく様子。空の色も徐々に青みがかり始める。
日が出てくる方面を望遠で。八ヶ岳や南アルプス等の稜線が見える方角のはずですが、この時点では雲なのか稜線なのか判別できない。
徐々に上がっていく太陽……しかし綺麗なまん丸には見えない。
本日の御来光はこんな感じでした。全く見えない日に比べれば十分見えた方でしょう。
少し明るくなった所で山頂看板。背後にはこれまで歩いてきた槍ヶ岳から穂高連峰へと続く稜線が伸びています。
穂高連峰を望遠で。前穂高岳、奥穂高岳、北穂高岳の並びは勿論、ロバの耳、ジャンダルムと細かく続くピークも確認できる。
次第に日の光を浴び始めた稜線。北側方面は雲が少なく、広い範囲の山々が見渡せました。
後立山連峰と立山連峰をそれぞれ1枚づつ。後立山は鹿島槍ヶ岳と白馬岳方面の並びが見えますが、他のピークは重なるかしていていまいち見えず。
立山は左側に龍王岳から鞍部の一ノ越を挟んで雄山、大汝山、富士ノ折立。その右側には鋸刃のような剱岳へと続く様子が見える。
北アルプスの全景。槍穂から裏銀座、表銀座方面の展望。常念山脈を除いた方面の山々が概ね見えています。
一つ前の写真を望遠したもの。これだけ沢山の山が見えてくれれば満足というもの。
山名入りです。薬師岳は水晶岳の右背後、黒部五郎岳は三俣蓮華岳左の丸山のすぐ後ろにピーク付近だけ見えるという程度。
裏銀座、立山、後立山連峰方面を更に望遠したもの。日も高くなり、山肌の陰影が鮮明になってきた。
燕岳、そして餓鬼岳方面へと続く稜線。本日これから歩く表銀座の尾根筋です。
燕岳、餓鬼岳越しに臨む後立山連峰の鹿島槍ヶ岳、白馬岳。同じ北アルプスの山といえど、針ノ木岳以降はかなりの距離感がある。
日に照らされ明るくなった槍ヶ岳、穂高連峰方面の稜線です。槍ヶ岳も暫く登らないだろうなと、気が済むまで目に収めておく。
北東方向に見える山々。山々というか、雲の影と判別が曖昧な山も多いですが、妙高山を始めとした頸城山塊の稜線は辛うじて確認できます。
南東方面に見える山を望遠したもの。富士山から南アルプス、中央アルプス辺りの山が見える方面なんですけど、雲が高いので連続した稜線のようには見えず、それぞれ独立峰のように雲の上に浮かんでいるように見えるのみです。
見える山は富士山(頭だけ)や白根三山、塩見岳、荒川三山、赤石岳、中央アルプスで、他は概ね埋もれている。
御来光組は皆降りてしまい、一転して寂しくなった大天井岳の山頂。しかし人が減った事で、本来の静かな山頂の雰囲気を堪能できました。
帰り際に撮ってもらいました。背後は勿論、今回の登山のメインである槍ヶ岳……あれ、メインは穂高の方だっけ。まあどっちも主役級である事には違いないでしょう。
山頂から少し降った所から槍ヶ岳方面。午後は雲が増えるとの事ですが、この時点ではそんな事を感じさせないような好天でした。
大天荘→燕山荘
[6:13-6:30]大天荘
大天荘で留守番している荷物を回収して先に進みます。山頂直下の稜線上、中々良いロケーションの山小屋でした。もし次に来る機会があるとすれば、常念岳方面からの縦走の際かな。
これから進む表銀座方面の道。中央左に次のチェックポイントである燕山荘が既に見えていますが、そこそこ距離を感じる。
稜線上を境に東西で明暗のある表銀座の尾根筋。まさに筋、って感じの尾根筋です。
ハイマツ茂る山肌をトラバースしながら下っていきます。
大天井ヒュッテ方面のトラバースからの合流点です。そこから臨む燕岳方面の山々……標高的に結構下ったのか目線も低くなった。
燕岳方面に続く尾根道。大下りの登り返しを始め多少の起伏はありますが、全体的に平坦で歩きやすい稜線です。
この表銀座に設けられた登山道は喜作新道と呼ばれ、コースの開拓者である小林喜作という方のレリーフが途中にあります。喜作新道が整備されたのは大正時代、それまで中房温泉から槍ヶ岳まで4~5日は必要であったものが、開通によって現在のように2~3日で縦走できるようになりカジュアルに槍ヶ岳登山が楽しめるようになった。
高山帯らしき趣がありながらも、概ね歩きやすい表銀座の稜線。
立山と後立山連峰の山々を望遠で。こうした名峰を見据えながらの稜線歩きは楽しく、人気の登山道である理由も窺えます。
槍ヶ岳も見上げる形となりましたが、距離的にそこまで遠くはないのでしょう。割と近い所に見えます。
少し下った所から谷間の方を覗き見る。左に見える大天井岳や左肩に見える大天荘からだいぶ下ってきたかなという所。
歩いている内に随分と日が高くなりました。徐々に上がりつつある雲の動きが気がかり。
稜線上から大天井岳、裏銀座、燕岳方面へ続く尾根道を一望。裏銀座は谷一本隔てた所で距離としては近い。
まだ暫く続きそうな表銀座の尾根道。しかし平坦で歩きやすいので距離は稼げる。
色付いた草木の中に垣間見える、終わり間近の高山植物。次の夏にまた会いましょう。
燕岳方面の稜線を望遠で。中央に見えるのが燕岳の主峰で、その右に見えるのは中房温泉方面の下山道が分岐する燕山荘の建物。
大下りの手前の下り坂。大下りというのは燕岳、及び中房温泉を起点とした場合なので、こちらの方面から進むと大登りとなります。まあ大登りって程の登り返しでもないんですが。
紅葉を楽しみながらの登り返しです。
[7:55-8:05]大下りノ頭
大下りの登り返しを登り切った所が大下りノ頭で道標が設置されています。
大下りノ頭からの展望。ちょっとしたピーク上にあるので展望も良い感じです。
これまで歩いてきた大天井岳から、槍ヶ岳、裏銀座、これから向かう燕岳方面と、少し広い範囲で撮ったもの。
山名入りです。多くのピークが見えますが望遠ではないので主峰のみ記載。
先へと進む。この付近は特になだらかで長閑な雰囲気。
ハイマツの緑広がる稜線上にぽつぽつと岩が隆起しているのがこの区間の特徴。これまで辿ってきたコースとはまた違った雰囲気
遥か遠く……とは及ばないまでも、それなりに距離を感じられるようになった槍ヶ岳。
登山道は岩の隙間を縫うように通されています。
岩の切れ目を越えていくポイント。
これから向かう燕山荘、燕岳も随分と近付いて来ました。燕山荘は右側に伸びる合戦尾根とのジャンクションピーク上に建っています。
燕山荘も間近という所から燕岳方面。山頂一帯は白い砂礫が露出しているのが特徴的。
コースの様子。多くの場合、尾根筋をトラバースするように平坦な道が取り付けられているので楽ちんです。
着実に近付きつつある燕山荘。そして着実に増えつつある雲。
燕山荘の手前から小屋を見上げた所。大天荘から5km弱とそれなりに距離がある道程でしたが、道が歩きやすいので大して時間が掛からずの到着となりました。
燕山荘から燕岳、北燕岳往復
[9:02-9:31]燕山荘
中房温泉方面の下山道である合戦尾根方面の分岐上に建つ燕山荘に到着しました……さて、予定ではここから更に主稜線を北上し餓鬼岳方面へ進むつもりでしたが。
小屋前の広場の様子。麓の中房温泉から容易に日帰り登山を楽しめる立地という事もあって結構賑わっています……雰囲気も、これまでの1泊しないと辿り着けないようなエリアとは少し違うような。
餓鬼岳へ向かうべきか否か。その判断の為に小屋に天気を聞きに行くと天気予報が掲示されていましたが……翌日はやはり雨天濃厚の模様。
餓鬼岳からの白沢登山口までの下山道は増水していると通行が困難になるとの話なので、雨の場合は予定を短縮してここ燕山荘から下るつもりでしたが、それでは不完全燃焼というもの。
悩みに悩んだ挙句、最後の悪あがきで小屋の人に餓鬼岳方面の縦走の是非を訊ねてみるも、やめておいた方がいいですよとの御返事……という訳で今回の餓鬼岳行きは見送りになりました。また今度、機会があれば。
明日雨でも今日が晴れているならと強行したい気持ちはあったものの、この雲の増え具合では午後はガスの中だろうなと。
もう暫くは展望を楽しめそうなので、燕山荘に荷物を置いて燕岳の往復に向かいます。山頂が近付くと次第に砂地が目立つようになり、異質的な雰囲気に。
燕岳を見上げる。ハイキングで登られる山なので今回の登山においてはそこまで重要視してませんでしたが、こうして見ると中々に厳しく格好良い山です。
白味がかった花崗岩を巻いたり登ったりしながら山頂へ。岩場には違いないですが、槍穂の岩場とはまた違った雰囲気。
[9:49-10:01]燕岳
一際大きな花崗岩の上に座する燕岳の山頂に到着。山頂札らしきものはどこだろうと見渡したら足元に発見。
燕岳の山頂から北燕岳方面の展望。いつの間にか雲が流れ込んできていて裏銀座、後立山、餓鬼岳方面の稜線は埋もれつつあります。
少し広い範囲から裏銀座方面の展望。雲に飲み込まれつつありますが、槍ヶ岳は穂先こそ隠れてしまってますが辛うじて見えるかなといった所。
ここも著名なピークの一つなので撮って貰いました……初日の焼岳の時と比べると少し日焼けしたかな。
燕山荘からの下山となると少し時間に余裕があるので、先に見えている北燕岳方面に足を伸ばしてみる事に。
北燕岳方面に続く尾根道。砂浜のような砂礫にはシーズン時であればコマクサが咲くらしいです。
その北燕岳の直下まで移動した所。小ピークながらも、こちらはこちらで存在感がある。
山頂に続く少し急峻な斜面。正規のルートか微妙な所ですが、両手を使って強引に登りました。
[10:12-10:27]北燕岳
燕岳から10分少々で北燕岳に到着。左の写真の左側に見えるのが先程居た燕岳の山頂です。標高は大して変わらないものの、主峰である向こうの方が若干高く見えます。
右の写真が反対側、餓鬼岳方面に続く稜線です。起伏に富んでいて楽しそうな尾根道ですけど、今回はこれにてUターン。無念。
北燕岳から西側の展望。内容は燕岳からのものと大して変わらないです……しかしこちらの方が山頂が広く休憩ポイントとして知られているのか、足を伸ばして来る人も多い様子。
少し燕岳寄りに移動した所からの展望。表銀座の尾根筋に雲が引っかかっているように見える。
燕岳方面を単体で。
足元をイワヒバリがよちよち歩き回っていました。暗色系の体色は岩場に対しての保護色でしょうが、白い砂の上ではその姿は目立つ。
燕山荘に引き返します。燕岳付近では山頂を迂回するトラバース路も並行しており、帰りはそちらを経由しました。
トラバース路の様子。ハイマツの切れ目を進んでいく。
燕岳直下の広場。こちらも休憩スポット的な場所で、寛いでいる人の姿も多い。
帰り道の様子。砂地の中の露岩が際立ち、なんだか浮世離れしたような感じです。左側正面には今にも雲に飲まれてしまいそうな燕山荘の建物が。
時刻は10時台、こと登山においては一番賑わう時間帯でもあります。特にこの辺りは日帰り登山も十分可能なエリアなので、槍穂の辺りではまず見掛けなかった子供連れの姿が多い。
この区間には奇岩と呼ばれるものも多く存在し、その内の一つであるイルカ岩。シルエットだと確かにそれっぽい。
青空の範囲も狭まってきた頃、荷物が待つ燕山荘が近付いてきました。
燕山荘→合戦小屋→中房温泉
[10:58-11:36]燕山荘
再び燕山荘に到着。そしてここからは下るのみです……予定の餓鬼岳行きとならずテンションが下がっていた所、何やら唆る感じの立て看板が。
小屋の裏側にある休憩スペース。長い下り坂を前に、ここで少し寛ぎましょう。
消沈した気分を鼓舞する為にドーピングアイテムを使用しました。今回の登山においては初の生ビール……そしてアテとなる山賊焼き。喉も心も潤う。
少しやる気になった所で合戦尾根への長い下り坂へと踏み入れます……しかしこの日はシルバーウィークの休前日という事もあって人の姿が多い。小屋泊と思しき人が続々と登ってくる。
燕山荘から登山口の中房温泉まで標準コースタイムで2時間50分の所、ドーピングアイテムのおかげで実際に掛かった時間は1時間40分……トレランの人に追いつくレベルの軽快な足取り。しかし下界はやはり雲の中のようで、下り始めてすぐに辺りは真っ白に。
道も良く道標はそこかしこに設けられています。ハイキングコースといった風情の道。
中腹は紅葉も見頃です。晴れていればもっと映えるんですけど。
[12:05]合戦小屋
途中の合戦小屋です。ここは宿泊はできない山小屋というよりは売店のような小屋で、夏場は冷えたスイカを売っている事でも有名。しかしテント泊は僅かながら可能のようで、燕山荘のテント場が一杯の場合はこちらに案内される事もあるんだとか。
まだまだ下ります。燕山荘から中房温泉までの標高差は1300くらいあり、それを一気に駆け下りる。
道中にはベンチがちらほら設けられています。地図上には第一ベンチ、第二ベンチといった感じに掲載されており、ちょっとした目印的なものとなっている。
荷揚げ用のケーブル?を掠めつつ更に下っていく。ここまで下ると紅葉はもう少し先かなと思えるように。
ゴール目前、お疲れ様でしたの看板が視界に入る。この日は一日歩く気まんまんだったので、疲れはそこまででもないですが。
[13:17]中房温泉到着
登山口である中房温泉に到着。結果的には尻切れトンボで終わってしまいましたが、一週間にも及ぶ登山は無事終了という事で。
穂高駅方面行きのバス乗り場は入浴施設の建物から少し下がった所に設けられています。
時刻を確認してみると少し時間がある様子。しかし温泉に浸かってる余裕は無い微妙な空き時間……着替えも下着くらいしか持ってきてないのでいいかと今回は入浴は見送り。
殆ど駆け足で下ってきた上、麓なのでそこそこ暑さです。温泉で売っていたソフトクリームを食べて火照った身体を冷ます。
バスが乗り場に入ってきました……乗車率はかなり高く、補助席の出番が回ってくる程度には混雑していました。
帰路
バスに揺られて穂高駅に到着。ここから大糸線での帰宅となりますが、微妙に接続が悪く1時間くらいの待ちが生じる。
下山してまず襲ってきたのは強烈な空腹感。いつもの登山後の腹ペコモードに突入してしまったようなので、良さげな感じの蕎麦屋を見つけると無意識に滑り込んでしまう……ネットのレビュー各種を見てみると結構な人気店のようです。
登山者御用達の店という訳では無いでしょうが、同じバスに乗っていた何組かが訪れていた。
当方、江戸時代からタイプスリップしてきた人間なので、蕎麦屋と言えば酒を呑む所という認識。という訳で当然のように日本酒を注文。
銘柄は大雪渓。蔵元は同じ安曇野に位置する大雪渓酒造で、高瀬川のやや上流の池田の町に近い所にある。味わいとしてはガツンと濃い、米の甘さとアルコールの辛さのメリハリが強い、本醸造の生酒でよくあるタイプのものでした。
一際目を引いたのがこの箸袋。山を登っている人間であれば気にならないはずがないでしょう。
安曇野と言えば山葵の産地……という訳で山葵の茎漬を散らしたというアルプスわさびそばを注文。流石に人気の店というだけあって蕎麦も汁も洗練された味わい。薬味がわさび漬けというのも少し変わっていて面白いです。
食後、少し時間が余ったのでうろうろ街を彷徨う。そう言えば奥穂高岳の山頂に鎮座していた穂高神社嶺宮の本宮(里宮)はこの町にあるんだったなと思い出し、そちらの方に向かってみる。
駅前通りに面した所にある穂高神社。鳥居の大きさから、それなりの規模の神社である事が窺える。
鳥居を潜り境内へ。神社一帯は緑に覆われていて厳かな空気が漂っていましたが……入り口に置かれたメタリックな道祖神が気になる。
穂高神社の拝殿……立派ですがなんだか新しい。穂高神社では20年に一度の式年遷宮の行事において伊勢神宮等と同様に本殿の建て替えが行われるのですが、2009年の前回の大遷宮に際して拝殿の建て替えも行われたとの話。
境内の神楽殿。そして目が行くのはやはり奉納酒コーナー。先程蕎麦屋で飲んだ大雪渓の他、北安大国や白馬錦等といった大町の方の酒蔵からも奉納されている。
気になったのは境内を勝手気ままに歩き回る鶏の姿。穂高神社と鶏……どういう関連性があるのか、調べても全く出てこないので謎です。昔はもっと数が多かったようですが、近年になってイタチが出没して数を大きく減らしてしまったらしいとかなんとか。
穂高駅に戻ってきました……そう言えば駅舎も神社調です。戦前の建築なので現在の穂高神社の本殿や拝殿よりも古い。
松本行きの電車が滑り込んできました。大糸線の前身は信濃鉄道という名の私鉄で、幅の狭いホームやコンパクトに纏まった構内など、国鉄というより地方私鉄に近い趣があります。
豊科駅、北松本駅と続いて列車の交換待ち。次第に市街地に近付いてきました。
雲間から漏れ出る陽の光が美しい。
松本駅に到着……後は適当に乗り継いで帰るのみです。大糸線ホームの反対側には運休中の松本電鉄の電車が静かに眠りに就いていました。
帰る前に何かお土産的な物を……と選んだのが野沢菜の醤油漬け。困ったらとりあえず手に取ってしまう程度には自分の中でド定番。パッケージの青いラインの所、以前は実際に紐で縛られていたのですけど、いつしか省略されてしまい風情が減った。
拠点駅なので駅弁も多くの種類が売っています……しかし先程の穂高で蕎麦を食べたばかりなので今回は見送り。これまで何度か頂いていますが、アラカルト的に色々な料理が盛られた左下のおつまみ弁当が個人的にはおすすめです。
ホームで電車を待っていると観光列車みたいな車両が入ってきました。自分が今乗ってきた方面、大糸線の白馬辺りから運行されているリゾートトレインとの事。
乗り慣れている鈍行列車もホームに滑り込んできました。長野始発大月行きの普通。帰宅時間帯なのでいつもそれなりに混んでいる電車なんですけど、コロナのアレもあってかホームで待っている人の姿はいつもより多くはない。
松本から帰る際には定番のビール、安曇野浪漫。諏訪五蔵の一つである麗人酒造で作られている地ビールで、以前八ヶ岳を縦走する際に瓶を担いだ事もありました。
この電車、いつも上諏訪とか茅野辺りまで混んでいるので県境くらいまで待っているつもりだったんですけど、思いの外ガラガラだったので塩尻過ぎた辺りで開封。
岡谷、下諏訪と列車の交換待ちでちょくちょく止まる。空の色も次第に暗くなっていった。
既に夜の帳が下ろされた頃。なんか唐突に甘い物が食べたくなったので駅近くにコンビニがありそうな駅は……と調べると、小淵沢の一つ先の長坂駅近くにセブンイレブンがあるという事で予定外の下車。
長坂駅の周辺の様子。北杜市の中心駅という位置付けの駅で駅前にはそれなりの規模の市街地が広がっているのですが、その割には無人駅です。特急も少し前まで停まっていたんですけど、いつしかその設定も無くなり同時期に無人化。地方の拠点駅から一転してローカル駅に転落してしまった哀れな駅。
ホームに戻ってきました。元々スイッチバックが可能な配線だったのを廃止し、本線上に簡素なホームを設けただけという構造。見通しの利かない掘割みたいな所に設けられているという事もあり、ぼーっとしていると見過ごしてしまいそうな駅です。
暗闇を破るかのように電車が入ってきました。隣の小淵沢始発なので車内は恐ろしく空いていました。
長坂で調達した甘味を楽しみながらの帰路。無意識に手に取ったら似たような名前のものが二つ……フルーツに飢えていたらしいです。