前回記事『立山連峰縦走 登山口までの道程』からの続きです。
この日は笠ヶ岳の登山がメイン。前泊したわさび平小屋を出発し笠新道の長い登りをひたすら進む。6時間かけて稜線上に辿り着いたら荷物をデポして笠ヶ岳往復へ。無事に山頂まで辿り着いたものの、初っ端からの急登と暑さですっかりバテてしまい抜戸岳以降は露骨にペースダウン。予定していた双六小屋までは辿り着けず、秩父平の均されたテントスペースにてやむなく一泊しました。
他の日程を見たい方は以下の記事よりリンクを辿って下さい。コース全体の軌跡もこちらに掲載しています。
【2020年8月】立山連峰縦走についての情報と記録 - 山とか酒とか
目次
わさび平小屋→笠新道→杓子平


[4:13]わさび平小屋出発
闇夜に紛れて出発。当初の目的ではこの日は笠ヶ岳経由双六小屋行きというそこそこハードな行程だったので、少しだけ早出しました。
時刻は4時過ぎ。8月も中旬に入ると日が昇るのも遅くなりまだまだ辺りは暗闇。昨日好日山荘で購入したヘッドライトを頼りに登山開始。早速笠新道の急登に取り掛かります。
黙々と急登を登っていると次第に辺りが明るくなり始めました……登山口の標高は1,366mで稜線上の分岐の標高が2,744mとの事なので、この地点ではまだ全然進んでないですね。こんな感じの看板が100m刻みくらいに設置されていて、見かける度に気持ちをへし折ってくれます。
物凄い勢いで雲が流れていきます。東雲ってやつでしょうか。


振り返れば焼岳、そしてその後ろには乗鞍岳。焼岳って百名山ながら標高が低い事もあって他の山から見えず今まで存在を意識した事もなかったんですけど……こうしてみるといい感じの山。
焼岳と乗鞍岳。


穂高岳辺りを望遠で。登った事ないからどれが奥穂なのかよく分からないという。
急登、急登、急登。
息抜きに背後を振り返る。
穂高とうろこ雲。うろこ雲は低気圧が接近してる時に出やすい雲らしい?
もう少し登った所から。雲は流れて青空が広がってきました。
再び穂高を望遠で。やっぱりよく分からない。
焼岳と乗鞍岳も次第に明るくなってきた。


樹林帯を抜けて笹道の九十九折に……この付近でカメラのAEロックボタンにゴミが入り込んでしまい、ほじくり出すのに苦戦。挙句、あれこれ試してるとプリセットの設定が切り替わってしまう。ここから笠ヶ岳の山頂くらいまでの間の写真の色合いが少しおかしいのはその所為なのでご容赦下さい。
カメラと格闘した後も急登は続く。
少し開けた所に出ました……ほぼ快晴。まだ標高が低い為か蒸し暑く風も凪いでいる。
後ろを見ると槍ヶ岳が見えました。今回はルート的に完全スルー。また今度な。
背後の展望。焼岳と西穂高岳?の間に見えるのは霞沢岳。




危険箇所はないもののきつい道が続きます……右のほわほわはシモツケソウ。
なんかの岩。
高度を稼いで少しは視界も開けてきたかなという所。霞沢岳と焼岳の間に見えるのは中央アルプスです……大きな山脈ですけど、ほぼ真北からなので殆ど重なって小さく見える。


中央アルプス、焼岳、乗鞍岳方面。これまで御嶽山は乗鞍岳に隠れて見えませんでしたが、右後ろに見えるように。


杓子平→笠新道分岐
[7:58-8:21]杓子平
カール状の地形の縁に登り、傾斜が少しなだらかになった所に杓子平の標識があります。登山口からここまで登り4時間半のコースタイムを3時間半で登ったのでそこそこ速いペースなんですけど、それ以上に速い日帰り登山の人がどんどん追い抜いていくので、なんか物凄いゆっくり歩いてるような錯覚に陥る。
ここでようやく1つ目のピーク、笠ヶ岳が見えました。ガスに覆われたり流れたりで一喜一憂……すぐ右側には今シーズン休業の笠ヶ岳山荘が見えます。これくらい近いと山頂直下って感じがしますね。
笠ヶ岳と杓子平カール。
少し進むと再び稜線上まで急登が始まります。歩きやすいながらもきつい登り。
笠ヶ岳山荘が休業してて泊まれる場所がないので、この日は軽装で日帰りの人が圧倒的に多かったです……大荷物の自分も追い抜かれまいと負けじと登るんですけど、大抵途中でバテて道を譲る。無駄な抵抗だった。
杓子平カール……帰り道だったらこの辺りで昼寝したいんですけどね。今回は長い長い行程の初っ端も初っ端なので休んでる余裕は無い。


霞沢岳~中央アルプス~焼岳~乗鞍岳~御嶽山の望遠を繋げてみたもの……ここまで来ると流石に標高2,455mの焼岳は周囲に埋もれがち。そして、やや低いなら我も存在感ある右の稜線が気になる。
中央アルプスを望遠で撮ってみました。中央に木曽駒ケ岳で、右側の独立しているのは南駒ヶ岳? 空木岳はどれかな。
ネバーエンディング急登。
既に森林限界を越えていて視界を遮るものは無いです。
杓子平カールを少し登った所から。まさに圏谷って感じの地形。まさにっていう程には圏谷を知らないけど。
道の雰囲気が少し変わった所。ここを登りきった所が稜線上でした。
左側に見える笠ヶ岳。既に目線の高さは殆ど変わらない気がする。
登ってきた道を振り返る。残念、槍穂の方に雲が増えてきました。
稜線に上がる直前、最後に見た笠ヶ岳。こうして見ると大きな山体だなーと感心。
笠新道分岐→笠ヶ岳
[9:54-10:03]笠新道分岐
ようやく稜線上の分岐に到着……早々に追い抜いていったトレランの人が笠ヶ岳の往復を済ませて帰ろうとしていた所でした。槍ヶ岳はここで見えたのが最後で、以降は雲に溺れる。
この分岐に荷物の大部分を置いて笠ヶ岳の往復に行きました。既に相当バテていたので一転して軽快に……とは行かず、よちよち進む。
稜線上に乗ったので今まで見えなかった方面の山が見えます。こちらは後日縦走予定の黒部五郎岳と薬師岳。どちらも立派な山体。
黒部五郎岳と薬師岳方面を望遠。2日後に歩いた黒部五郎カールからの九十九折の急登とか、北ノ俣岳付近のなだらか稜線とかも見えたりする。中央右奥、やや雲が掛かった越中沢岳の左奥に見える台形の稜線は立山から西に伸びる奥大日岳。という事はなだらかな三俣蓮華岳のピークの左奥に見えるギザギザの山は立山? 双六岳の真後ろの黒い山は水晶岳で確定。
後ろばかり見てても先に進めないので進行方向である笠ヶ岳方面を。これまで登り一辺倒だった笠新道とは一転して起伏の少ない尾根道です。
なだらか稜線を先に進む。歩きやすいけどほぼ無風で暑い。水もだいぶ減ってきてる。まあ山頂直下のキャンプ場で水を補給すればいいかと、この時は楽観的でしたが……。


稜線歩きの様子。
だいぶ近付いてきた所。ガスが上がってくる前に登れそうか?
分岐の時点ではちょっと遠いなーとか思ってましたが、殆ど起伏がないのですぐに近付きました。
穂高岳方面。霞沢岳の真後ろから左に伸びる稜線は南アルプスの甲斐駒ケ岳とか北岳とか。ちょうど真裏が塩見岳らしいですが、この直後雲が上がってきてしまい望遠の写真が無い……。


黙々歩く。


もくもく歩く。
たまには振り返って、違う方面の山を眺めて癒やされる。槍は相変わらず見えない。
小屋の直下という所まで来ました。ゴールは近い。
小屋の少し手前にキャンプ指定地があります。ここから少し下った所に水場があるらしいですが……。
緑ノ笠方面に下る……ものの、下っても下っても水場らしきものは無いです。水が流れる音もしないし既に枯れてしまったようです。
水不足という不安要素を抱えながらも、気を取り直し笠ヶ岳方面へ。
山荘付近からの展望……やっぱり槍ヶ岳だけ見えない。


小屋から数分程登り笠ヶ岳の山頂へ。
笠ヶ岳からの展望
[11:16-11:38]笠ヶ岳
ようやく最初のピークである笠ヶ岳に到着……しんどかった。しかしコロナ禍ともあってお盆休み真っ只中の百名山とは思えない程に空いてました。
北側方面の展望。残念ながら稜線に上がった時点よりも雲が増え、立山方面が見えなくなってしまった。
北側の山々を少し望遠で。黒部五郎岳、薬師岳、雲ノ平、赤牛岳、水晶岳、鷲羽岳、野口五郎岳、鞍部に見える双六小屋、という感じ。その右には唐沢岳、餓鬼岳と雲に埋もれつつある表銀座の稜線が。双六小屋の右後ろに見える山は謎。方角的には後立山連峰ではなく火打山っぽいですが(すぐ東の妙高山は雲に埋もれて見えない)。調べて貰った所、高妻山との事でした。
見える山はそこまで多くないですが、上の写真の山名入り。烏帽子岳と思っていたピークは後立山連峰の針ノ木岳。
更に望遠したもの。ここまで望遠すれば雲ノ平山荘とか双六小屋の建物もよく見えます。
南東方面の展望。あれが南アルプスであれが中央アルプスで……とかやりたかったのに雲で埋もれて見えなくなってしまった。
しかし谷を一本挟んで見える穂高岳は中々の迫力。
そこそこに展望を堪能して後にします。360度の展望とは行きませんでしたが、完全にガスの中でなかっただけ良しとしておく。
笠ヶ岳山荘を眼下に。次なる目的地は先程遠目に見えた双六小屋……のつもりでしたが?
笠ヶ岳→笠新道分岐→抜戸岳
小屋に再び下ってきました。営業はしていないながらも、小屋の周辺では数人の作業員が修繕作業っぽい事してました。


後ろ髪引かれながら来た道を戻ります。
岩の切れ目から薬師岳。
少し進んだ所で、東側から猛烈な勢いでガスが上がってきました。
こちらは反対側、抜戸岳方面。
稜線から北側の展望。徐々に雲が増えつつある。


[12:59-13:21]笠新道分岐
荷物君を待たせてる分岐に到着。水不足に陥る事を懸念して節約しながら歩いてたら軽く熱中症っぽくなったので、荷物を回収がてら少し休憩……するも風が無く暑くてあまり回復できず。
雲に埋もれつつある笠ヶ岳をぼんやり眺める。
意を決して先に進む。登山道は分岐から北側をトラバースしていきますが、せっかくなので稜線上を進み抜戸岳経由で……道は一転して悪く不安定なガレ場。あんまり行く人いないんでしょうか。
[13:41-13:49]抜戸岳
一応寄ってみた抜戸岳山頂……全く意識してませんでしたが100高山とかいうカテゴリに入るらしいです。雲が増えてきて展望はいまいちですがとりあえず。
抜戸岳→秩父平
抜戸岳から縦走路に復帰する道はかなり不明瞭です。岩場を適当に下っていたらハイマツに行く手を塞がれる等、色々と難儀しつつ下る。


分岐に到着。縦走路を先に進む。
なだらかで歩きやすい稜線……ながらも、再び背負った大荷物の所為かペースがやたら落ちる。この時点で既に14時手前なので双六小屋に辿り着けるかは微妙な所。
秩父岩の付近。
一瞬だけ雲が抜けて屏風のような表銀座の稜線が見えました。歩いた事無いんですよね。
2667ピーク手前、秩父平に向けて下降が始まる地点。
鞍部が秩父平です。この頃になると日陰が増え涼しくなってきました。
秩父平を上から。この付近のみ広尾根となっていて池塘も幾つかあったりします。


異質な雰囲気の秩父岩。


周囲は花畑になっています。右はミヤマリンドウ?
[14:45]秩父平到着
抜戸岳を出た辺りから明らかに調子が悪くペースも落ちてるので、大事を取ってここでテントを張り一日を終える事にしました。指定地以外のテント泊なのでテントの写真は無し。
今日はもう動かない。そう決断した途端、辺りを散策する元気は湧いてくる不思議。


稜線上に登って西側の斜面を見ると結構な大きさの熊さん。もしゃもしゃ何かやってました……目が合った途端猛ダッシュで逃げられる。不戦勝。
どうしてこんな変な所でテントを張ろうと思ったかというと、水場があったからなんですよね。地図上には水場の表示はありませんが、微かに水が流れる音が聞こえたのでもしやと思い下ってみると発見。
シリコン製の漏斗を使わないと水筒に注げない程に細い水場でしたが、ともあれこれで水についての不安は解消。味はまあまあ。
夕食風景。思いっきりバテたので回復するべく食事は少し多めに摂る事に。


本日のメニュー、炙りベーコン&カレーライス定食。
次回記事『立山連峰縦走その2』に続く。